ぞくぞくようじょがむかえにきたよ(救世主様、どうしてこうなるの?)
「ちょ、ちょっと、待って下さい!
お、落ち着いて話せば分かり合える筈です。
初めて会ったのが20年くらい前との事ですがあの頃って師匠が毎日の様に適当な相手を連れて来ては試合をさせられていたのであまり印象に残ってる方は少ないんですよ」
神官長ウィーグラフの鋭いメイスによる連撃をひょいひょいと躱しながらマルクスが言うと
「黙れ!よくも私をコケにしてくれたな!挽き肉にしてやる!」
あっちゃー火に油を注いだぞー。
「ですからちょっと待って下さいって!
今、頑張って思い出してみますから………
う~ん?…ヒントは…ロンバルディア…神殿騎士…
……クレスト流のアーツ?………
あっ!あぁ、思い出しました!
師匠が言った俺を倒して代わりに弟子にする条件で勝負した12番目の人だ!
確かあの当時の1/10エレンさんくらい強さのだったからちょっと、覚えてます。そう言えばこんな感じでしたねぇ」
わーいとも容易く相手の流派とか分かっちゃうのにどうして感情は読めないのかなぁ?
更に火にガソリンまで注いじゃったよ~。
「コロス!」
攻めが烈火の如く激しくなるが、その攻撃は時にまるで風に舞う木ノ葉のようにふわりとした動きで躱され、時に風に揺れる柳の如き柔軟さで受け流され、それは水面に映る月の攻撃している様であった。
その様子を礼拝堂の長椅子の背もたれから顔を出してスポーツ観戦気分で見ている女性と幼女と俺。なんでこんな状況になったんだっけ?
「ねぇねぇ、キミ」
「え、えっと?」
「あぁ~ゴメンゴメン、まだ自己紹介もしてなかったっけ?私はロマリア教会の騎士であのぽややんの妻のエレン」
「お、奥さんですか?」
「うん。こう見えても16歳になる娘がいるよ。一応は今、この都市に居るロマリア教会の中じゃ2番目に偉いね。
この街の担当は司教だからあのぽややんよりも下だから。そのぽややんの直属の上司であるのが私。どう?見直した?」
えぇ~ウソだよね?だってこの騒動を引き起こした張本人だよ。
「その顔は信じてないわね。でも、まぁいっか。ねぇキミ、何かつまめる物持ってない?
な~んか、キミから美味しそうな匂いがするからお腹減っちゃった。出来れば麦酒があれば完璧なんだけど」
「メリルも~」
おいおい、この状況でマジでスポーツ観戦のノリなの?エレンさん、アンタ仕事中なのに飲む気なの?
幼女も適当に相づちを打たないの。お酒は適正年齢になってから!
え?そんなものは無い?じゃあ、こっちの基準で二十歳以下のメリルちゃんにはお菓子と果実水をあげるからそれで良いよね?
後、何で顔が見えてない筈なのに表情が分かるの?
「ん?その表情は困ってるかな?……あっ、そう言う事ね。キミの感情、そのひよこちゃんに全部出てるよ」
帽子をツンツンしながら言う傍若無人。
なぬ?この帽子は確かにデフォルメされたひよこの頭になってたけど、俺の感情に合わせてひよこの表情が変わってるだと!
だったら今まで結構こっちの感情がダダ漏れじゃねぇか!
「はいはい、どうでもいいから酒とおつまみ出してよ」
俺としてはどうでも良くないよ!
でも、どうせ逆らったところで勝てやしないのは、あの重装神殿騎士をふっ飛ばしてるのではっきりしているので諦めて焼き鳥を出し、幼女にお菓子と果実水をあげる。
まぁ、メリルちゃんにって屋台で貰った物だけどさ。
「ねぇ、お酒は~?」
「蜂蜜酒か甘めの葡萄酒ならありますけど?」
おい、自分で言っておいてなんだけど、どうして酒がインベントリに入ってる!
屋台のオヤジ共め、幼女に何を渡そうとしてやがった。ったく、お陰で買いに行かされずに済んだぜ。ありがとよ名も知らぬ屋台のオヤジよ。
「えぇ~いい歳して軟弱な!まあ良いや。ならミード頂戴!
ねぇ、マルクス!これをキンキンに冷やしてちょうだい!」
受け取った蜂蜜酒の瓶をマルクスに投げ渡す女王様
「ちょ、ちょっとエレンさん!今、私、取り込み中ですって!
それに仕事中にお酒なんて飲ませたなんて知られたら私があの方に怒られちゃうじゃないですか!」
「いいから、や、れ」
そう相手は傍若無人の女王様であったのが運の尽きである。




