はしれようじょをかかえてどうぐやへ(走れ、幼女を抱えて道具屋へ[注:誘拐ではありません])
「ちょっとごめんよ」
そう言ってメリルちゃんを小脇に抱えて変態二人に向かって走り出す。そうすると変態仮面が前に出て低く構え、変態植物が弓矢を取り出して矢を番える。
変態仮面に突っ込むように加速してヤツとの距離が残り10歩と言ったところでステッキで突きの構えをとってくる。
それに対しては変態仮面の突きが開始される直前に目一杯減速することで対応して何とか喉元でアーツのモーションが終了する。
あっぶねぇ、何あのエフェクト!?ステッキが当たってたら確実に死んでたわ!
おっ、変態仮面のヤツ、今のは当たると思っていたのかバランスを崩してやがった。こりゃ~チャンスだな。
その場で横に一回転しながら前進する事でステッキを喉元から外してヤツの膝を踏んで更に肩を蹴って跳躍する。
「ば、バカな!突きを躱しただけではなく、我を踏み台にしただとぉ!」
もう一人の変態も驚いていたのか弓矢を降ろしてこちらを見ている。
バカめ、それでは踏んで下さいと言っているようなものだぞ。
「ぷぎゅぅ!」
空中で縦に一回転して踵落とし気味にモ〇ゾー野郎の顔面を踏んで更に跳躍。
その時に変態植物から変な声が出ていたが大丈夫だろう。跳躍の勢いで看板を掛けておく為のポールを掴んで片手大車輪の要領で更に勢いをつけて屋根に一回半捻りで着地。
此処で漸く小脇に抱えた幼女に目をやるとキャッキャッと喜んでいるのでまぁ良いかと衛兵詰所に向かって屋根を飛び移って行く。
「うおぉぉぉ!すっげぇ、パルクール!」
「あんな変態機動、夜一以外に出来るなんてマジかよ!あのひよこには〇体機□△置でもついてんのかよ!」
なんか下では騒ぎになっているがこんなもんはゲームだから誰でも出来る筈、うん、だから俺はちょっと変わった格好をした普通のプレイヤーだよ?
だから騒ぐな!スクショ撮んな!あぁ、確か設定にスクショのアップ設定があったな。あったこれだ!アップは不許可。よし、これでセーフだ!
余計な事に気を取られていたせいか、変態植物が復活していた事に気付くのが遅れて屋根から跳ぶタイミングで矢が飛んでくる。強引に身体を捻って何とか躱すが屋根から落ち、ヤツは既に第二射を放ってくる直前だ。
あの野郎、俺に踏まれたのがよっぽどムカついたのか頭に血がのぼって俺が幼女を抱えてる事を忘れてやがる。
このままでは幼女にも被害が出る=任務失敗=ド変態筋肉の試練の天罰発動=ヤバい!
即座に緊急回避を敢行する。具体的にはメリルちゃんを上にバレーボールのトスするように優しく空へと上げる。その反動を利用して自身は下に仰け反って矢を回避する。
うぉ、鏃はついて無かったみたいだけど当たった壁が砕けてる!なんつーもんを撃ってきやがる。どうやら変態共は俺が考えていた以上にヤバい連中らしい。おっと、メリルちゃんは?何かスゲー喜んでんなぁ。っと、いかんいかんキャッチせねば。
腕を伸ばして幼女をキャッチ、その直後に布張りの屋台の屋根に落ちる。
「一体、これは何事だい!」
屋台の果物屋のオバちゃんに怒鳴られる。
「迷子のこの子を衛兵詰所に連れて行く最中に変態に襲われたんだ。だからこの弁償はアイツらに請求してくれ!俺に請求されたってこの街に来たばっかりで金なんて持ってないんだ」
キャッチした時に反転していた幼女を突き出しながら言うと
「おやぁ、この娘は道具屋のところのメリルちゃんかい。それにアイツらは……
ふぅ、分かったよ。此処は私等に任せて行きな!
さぁて、皆、あの変質者を止めるんだ。商業ギルドにケンカを売ってきたことを後悔させてやるよ!」
オバちゃんがそう言うと周りの屋台から屈強な男達や棒を持った女の人が道を封鎖して変態共を塞き止める。その間に衛兵詰所に到着する。よし、ミッションコンプリートだ。
「一体、この騒ぎは何事だ?」
衛兵に言われ事情を話すと
「あぁ、またアイツらか!すまんがその娘はお前さんが道具屋へ送り届けてやってくれないか?私はあの騒動の原因を捕えなくてはならないのでな。何か言われたら詰所のエリックに頼まれたと言えば解ってくれる」
そう言うと衛兵のエリックとやらが呼子の警笛を吹く。返事の笛が次々とあちこちから響き包囲網を敷いているようだ。はぁ、ミッションはまだ続くようで俺は衛兵さんに言われた道具屋に走るのであった。




