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麗爛新聞 十一月号 四面

『――続きまして、新生徒会長の挨拶です。それでは、第八十八代生徒会長に就任した天城マリアさん、宜しくお願い致します』


「……はいっ!」


高らかに上がる、凛とした声。金色の光を纏った少女がステージ上を進み、観衆の前に立つ。


その堂々とした立ち振る舞いに迷いは無く、見据えるのは導くべき民草の姿のみ。


ただただ使命と夢を重ね合わせた、黄金の女帝が弁舌を振るう。


公約演説を行った時と同じ――いや、あの時以上の熱狂が体育館を包んでいた。


ボクはその歓声の中に聞こえる、彼女の意思を聞き取る事に全神経を集中させる。


聞き逃してはならないのだ――彼女の声を。


その心の叫びと涙を汲み取れないならば、ボクには耳に伝わる声を字面に起こす事しか出来ないのだから。


彼女の明るい部分を――果てなき金色の勇姿を、余す事無く。


見た目だけではない、色香だけでもない。


彼女は出自を誇らず、今の生き様を誇る。


呪いを力に変えて輝き続けている。


ボク達が――麗爛学園新聞部が伝えるのは、良い面だけで良い。


それは後ろ向きの――嘘偽りの為じゃなく。


どちらの面を持つ思い出でも、良き思い出だったと記憶され――思い返す事が出来る様に。








『――私は、この麗爛学園を教師の方々だけでなく、生徒達の手によって、より良いモノへと――』


――公約演説の時にも口にしていたと思う、その言葉をメモに取りながら思う。


彼女が体育祭や演説集会を盛り上げていた理由の側面には――大人への反抗心があるのではないだろうか。


ボクの母も勿論そうだけれど、彼女が性欲の権化とまで言った人――天城家当主であり、彼女と勅使河原先輩の父親。


連絡が取れないままの勅使河原さん、そしてリコは……もしかしなくとも……。


……いや、その事はボクが考えるべきじゃない――考えてはいけない事なのだ。


隣に立つ――生涯を通じて関わり抜く覚悟を持たないモノが、触れて良い問題じゃない。


それはその人にとって、人生の命題とでも言うべき事であって――生半可な気持ちでどうこう出来る様な些事ではないのだ。


今、大きな身振りを伴った決意表明をしている彼女の命題は――。


――黒よりも深い闇。そしてその中で生きる為の、強い光。


彼女の力になるには、全てを彼女の為に投げ出せると思える様な、強い愛と希望の輝きが必要なのだろう。


親愛では足りず、愛欲でも埋められない。どちらかだけでは足りず――どちらを有していても、完璧に届かない。


――彼女が必要としているのは、その全てに適う存在だけなのかもしれない。


常人離れした、王者としての迫力を肌でひしひしと感じながら、分かる事がある。


そのカリスマと魅惑を持ってなお、その魂の在り方が歪まない。


――だから彼女は、暴虐的なまでに美しい。


ボクは贔屓目無しに、そう思っていた。







――――――


「……『生徒達が活躍出来る学園を発展させると誓った』、か。まあ、記者一年目にしてはそれなりの文章じゃないかしら」


数日経ったあくる日の放課後。ボクは生徒会室を訪れていた。


ボクが提出した校正済みの記事案を見せると、マリアさんは口元を楽しそうに歪めている。


当然彼女が座っているのは豪奢な革張りの肘掛け椅子――生徒会長のみに許された玉座だ。


先日訪れた時は、確信した勝利に先駆けて――今は当然、座るべき場所に落ち着いているだけである。


「こちらでいかがですか? 一応マリアさんの事を書いてるので、確認をと思ったんですが……」


「いいわよ、それで。生徒会広報誌なら、もう少し固い言い回しで――とも思うでしょうけど、麗爛新聞ならそれぐらいが丁度いいでしょう?」


「丁度いい……って、もしかしてボク達の新聞を見て下さっているんですか?」


「? そりゃあ、見てるわよ?」


マリアさんはさも当然と言った風に、キョトンとしながらそう答えた。


「……何と言うか、意外と言うか……」


「……一応、これでも新聞部員だし。それに、そもそもあの新聞は、人に見せる為に書いているんでしょう? それなら、私が見ていて何もおかしな事は無いじゃない」


「……確かに……」


そう言われるまで、気付かなかった。


ボクの中では何時の間にか、麗爛新聞から人に見せると言う側面を見失っていた事に。


あの新聞は――思い出を良いモノとして覚え、伝える事はもう、ボクの中で当然の事になっていたんだ。







月に一度、張り出すと言う義務はある。


部活動と言う意義がある、人に知らせると言う役目がある。


見てくれた人が、そう思ってくれる事を祈って――三人だけで続けて来た、『思い出』がある。


――麗爛新聞は、書いているボク達が望んでいた願いだった。


辛い事はいっぱいある。それこそ、生きている日数の、刻んで来た時間と、培って来た思い出の数だけ。


――そんなマイナスな面だけで、思い出を溢れかえらせたくなかった。


だからボクは――いや、彼女は新聞を創刊した。


この世界は、辛い事が多いけれど――それでも、良い事だっていっぱいあるんだ、と。


そう思いたかった心から生まれた、儚く、優しい祈りだった。


素敵な心を支える力になりたいと思ったのは、ボク自信が心の底からそう思える様になりたいと願っていたからなのだろう。


色々な事があった。人と触れて、新聞を書いて――色々な事を想った。


その結果、思い返しても辛い事の方が、圧倒的に多かったと思う。


――けれど、どれも良い思い出になってしまっていた。


哀しい涙を見た、怒りを抱いた――嬉しく思える事があった。


――全部、全部……楽しかった。


そう思える今のボクだからきっと、そう言える。


ボクは――この道を選んで、本当に良かったと。


天音翼の命題は――『喜怒哀楽』。人生を謳歌する感情を、大類した言葉だった。







「……そう言えば、華蓮は?」


――マリアさんの言葉に、ボクは思わず目を見開いた。


彼女がボクの考えを読んでいたとか、そう言う事では無いだろうけれど。


単純に、別れた『元カレ』の動向が気になって、そう問うただけ。


――そうだ、ボクの命題が果たされても、物語が終わったワケじゃない。


この道を選ばせた――この道へ導いてくれた、道しるべにはまだ、手が届いていないのだから。


「勅使河原先輩なら、今日は実家に帰るって言ってました。日用品とか着替えが欲しいって、昨晩も言ってましたし」


「実家に帰る? それに昨晩って……もしかして、貴方達……同棲なんてしていないでしょうね?」


「……………………あ」


――そう言えば、ここ最近は一緒に居る事が当然になっていたけれど……この事は、あまり口にしてはいけないのではないだろうか。


きっとそうなのだろう――マリアさんが驚愕した表情で硬直しているし。


そうか、ボク達は全てを知っているけれど……他の人から見れば、一年生の男子と二年生の女子が一緒に暮らして居るワケで。


――そもそも、ボクは勅使河原華蓮を『女の子』として見ているのだし。


よく考えなくても、実はとんでもない事をしでかしていると、ようやく思い知った気がした。











「なんかこの前、体の良い別れ話っぽくなってたけど…………私、彼氏を寝取られたってだけのオチ?」


「い、いや……別に、一緒に暮らして居るとは言っても、そう言う事をしている訳じゃないですから、寝取った、とかでは……」


「…………不純異性交遊とかじゃないし、そもそも華蓮は校則から逸脱しているから取り締まれないし、ある意味で最高のアウトローね、貴方達新聞部って……」


「……ごめんなさい…………えっ、新聞部って……佐奈先輩は別にそんな……」


「…………いや、寧ろ花前佐奈と天音翼による淫行問題の方が、生徒会で議題に上がる程だったのよ?」


「…………えっ、それどう言う事ですか!?」


「あっ、これ守秘義務ある奴だった……ごめんなさい、今のは忘れて頂戴」


「い、いやいやいや、そこまで聞かされて忘れろって無理がありますよ!! い、淫行!? ボク達、確かに付き合ってはいましたけど……性行為なんてしてないんですけど!! 酷い言いがかりだ!?」


マリアさんは大きな溜め息を吐いた。それは生徒会長としてではなく――あくまで一人の姉として、優しく、倦怠感を伴うモノだった。


「…………文化棟、三階、男子トイレ」


続けて口にしたのは、ただ場所を指し示すだけの言葉だった。


――ぞわり、とかつて味わった快感が背筋を駆け上った気がする。


「………………………………え、えっと……な、ナンノコトヤラ……?」


「………………れろっ」


マリアさんは口を開け、舌先で何かを舐め上げた。


他の人にとって、それは空虚でしかないのだが――ボクにとって、それは記憶でもあったのだ。


『……んふふっ。彼女として、鎮めてあげないとねー♪ はい座って―……御開帳ー……』







だらだらと溢れる冷や汗が、ボクの額と背中を滑り落ちて行く。


「……確かに、性行為って言うか……セックスはしてないかもしれないけど……ね?」


「……………………い、いやあ、あれは……ただの治療行為って言うか……」


「まあ、確かに……あれだけ大きなおっぱいの彼女が居たら、突発的に『そう』なって、人前に出れなくなる『症状』が出てしまうのかもしれないわね」


「……………………」


――ダメだ、これ。完全にバレている奴だ。


「教室棟、女子更衣室。同じく教室棟、図書室・書庫…………放送室での実況は、流石に引いたわ」


――しかも、半分以上バレてるらしい。放送室なんて人通りの少ない場所ですら……。


真っ当な彼氏彼女なら、抱いてもおかしくない欲望――そして彼女は、ボクの同意がある時に限り、『アピールの場』を設けていた。


それについて詳しくは言及出来ないけれど――控えめに言って、凄く気持ち良かったです、はい。


「華蓮は頑なに許してくれなかったのに。ツバサは本当にスケベね……もしかしなくても、この性欲って母親譲りでもあるのかしら?」


「そんな…………え……?」


――今までの話がどうでも良くなるくらいに、衝撃的な言葉が聞こえた気がした。







「……許してくれなかったって……?」


「華蓮から聞いていないの? あの子、私にセックスどころか、『男の子らしい所』すら見せてくれなかったわよ? キスしたり、パンツは見れたりしたけど、フリルだらけで良く見えなかったし……多分、最終防衛ラインね、あのパンツは」


「…………そう、なんですか……」


――その事実を聞いた瞬間、とてつもない脱力感と、同じぐらいの罪悪感に見舞われた。


「……いや、何をそんなにショックを受けているのよ……確かに生徒会選挙の準備でストレスが溜まって、ちょっかい出してはいたけど……それぐらい、忙しかったって事だからね? 私も、勿論協力してくれていた、華蓮もね」


『べ、別に私はその、マリアと……そう言った事『だけ』をしてるんじゃありません……!!』


先輩が口にしていた言葉は照れ隠しではなく――単なる事実だったのだ。


ボクも一応童貞は守っていたけれど……彼女の方が余程、身の潔白を保っていたと言える。


それに比べて……ボクの意思の弱さは……。


「――まあ、好きなだけ後悔すればいいけど……でも、それもいいんじゃない? 華蓮が言っていた事から察するに、『それ』に対して多分怒りはしないと思うし」


マリアさんは鼻で笑いながら、うっすらと目を閉じて、革張りの背もたれに寄りかかっている。


どこか呆れた様な仕草を見ながら、ボクは息を呑んだ。


多分怒らない……その言葉の真意を知りたかったのは確かだった。







「……その言葉、信じますよ」


――けれど、敢えてボクはその問いを口にしなかった。


「あら、私なんかの言葉を信じるの? それに、詳しくは聞かないのね……貴方なら、気になると思ったけれど」


そんな言葉を口にしながら、彼女は表情を一切変えなかった。


最初から知っていた――そう言いたげに、ふんぞり返ったままでいる。


王でも指導者でもない、一人の失恋した少女として――ボクの姉として、あくまで気だるげに。


「気になりますけど……本人の口から聞けば済む話ですし。それに、マリアさんに騙されるのも、そんなに悪い気分じゃないですから」


「……本当に生意気な弟だこと。そこら辺、血筋を感じるわ……不本意だけどね」


「そんなの、お互い様と言う奴ですよ」


「……なかなか言ってくれるじゃない」


目を細めて彼女を見やると、金色の少女もまた同じ様に、ボクを鋭い視線で見据えている。


これもまた……姉弟の形の一つなのかもしれない。


――今まで離れていた絆と時間が、少しずつ近付いている様な感覚が、ボクの心に芽生え始めていた。







――――――


「随分時間掛かったね、マリアと乳繰り合ってたのかな?」


新聞部の部室に戻って来た途端、佐奈先輩からそんな風にからかわれてしまった。


マリアさんに刺された釘の痛みも引かない時に、なんて事を……。


「い、いや、そんなワケないじゃないですか……それに、ボクとマリアさんは半分ですけど、血が繋がってますし……」


「いやあ、そんなの理由にならないっしょ。天音君と話していると、二十秒に一回ぐらい胸を見て来るってマリアが言ってたし」


「――――そんな事ないですよ?」


いけない、数瞬の間が空いた。もうそれだけで真実だと言う裏付けになってしまっただろう。って言うかモロバレじゃないか……。


「……むぅ……」


意外とやきもち焼きで貞淑なお姫様が自分のつつましやかな――それこそ無い方が自然だけれど――胸をぺたぺたと触りながら、唸る様な声を上げた。


「……『翼君』は、おっぱい星人だからなあ。あの時も…………」


「ちょっ!? ま、待って下さいよ佐奈先輩!? 今その話は……!!」


――罪悪感によってボクが追い詰められ、嫉妬で勅使河原先輩が――!!







「……何の話? それって、私に言えない事なの?」


甘く、軽やかな声が耳に届く。


――その瞬間、この世のモノとは思えない殺気がボクの心を包み込んだ。


嫉妬なんかじゃなく、これは明らかに……幻想世界から漏れ出した怒気である。


「…………あ゛っ!! ごめーん、あたし今日も弟達にご飯を……」


「ずっ、ズルいですよ佐奈先輩!? 一人で逃げるつもりですか!?」


佐奈先輩がいそいそと帰り支度を始め、部室から出て行こうとする。


しかし、そのドアノブに掛けた手を、小さく儚い手が――力強く掴んだ。


「作らなくていいんだよね? だってさっき、そう言ってたもんね?」


「えっとー、そのー……そう、パパが帰って来るから外食に……!!」


「うん、一ヶ月後にその会食の予定があるって言ってたもんね?」


「……えっと、えっと……!!」


潤んだ瞳がボクに助けを乞うている。


「……ッ」


――ボクは目を伏せて首を横に振った。








「ねぇ佐奈、私達、友達だよね?」


「う、うん……親友だよ、親友……だから、えっと……!!」


びくびくと肩を震わせ、鼻水を啜りながら佐奈先輩がいやいやと首を振る。


何かトラウマでもあるのだろうか――ボクは、今この状況がトラウマになりかけているけれど。


「そうだよね!! それなら、互いに秘密は無しかなって思うんだけど、佐奈はどう思う?」


そう強い語気で語っているのに、終始笑顔なのが、とてつもなく恐ろしかった。


「か、華蓮さん……?」


「なぁに、佐奈?」


「し、親しき仲にも礼儀ありって言うよね……? だから、多少の秘密も止む無しと言うか、ね……?」


「うーん、確かにそう言う言葉もあるよね……そうしたら、何でもかんでも口にすれば良いってものでもないかな?」


「そ、そうそう!! あたしにだって言いたくない事の一つや二つ……」


――これは好機ッ!!


ギラリと光った佐奈先輩の目を見て、そんな事を思ったのだろうと言うのは想像に難くない。


しかし、ボクは心に爪を立てられた様にすくみ上ってしまっていた。取り囲む悪寒は、一切の緩みを見せていないのだ。








「それじゃ、今から天音君と一緒に再現してくれる? 佐奈がそのおっきなおっぱいを使って、天音君にしてあげた事を」


「うんっ…………えっ、か、華蓮……?」


――おや?


「本当? わぁ、嬉しい。それじゃ、早速お願いするね。ねぇ、天音君? あなたは一体、このおっぱいで何をして貰ったのかなぁ?」


――――もしかしなくても、まさか?


『放送室での実況は、流石に引いたわ』


そう言えば。


彼女はどうして、人気の無い所を選んで行っていた情事の詳細を知っていたのだろう。


――彼女は放送室と言う密室での出来事を――。


「そうだ! この前の『実況中継』とかはどう? 私達が真面目な打ち合わせをしている生徒会室にだけ放送してくれたアレ、ここで見せてもらえるかな?」


「………………うそでしょ?」


流石の佐奈先輩も、目を見開いて驚いているらしい。


ボクなんて開いた口が塞がらない……なんか、今思い返せば……変なボタンを押してしまった様な気もする……。


「私、すっごくドキドキしたんだ。新聞部が無くなるどころか、二人が退学になっちゃうかもって話まで出て来てね……それは別に良いんだよ? でも……精一杯取り繕った私に、ひた隠しにするのはどうかと思うし、追求されても言わないって……あり得ないでしょうッ!!??」


――今日分かった事がある。


物事の良い所だけを取り上げる、世界をキレイに魅せる麗爛新聞。


『麗爛新聞は、起こった出来事の良い面だけを取り上げるコンセプトなんだよね。なんと言うか、実に華蓮らしい新聞ってワケ』


何時だったか、佐奈先輩はそう言っていた。


それは、勅使河原先輩の外面、内面の差異だけでなく――御淑やかさに隠れた激情の事も表していたのだろう。


今にして思えば……嫉妬深いとか、頑固とか……勅使河原先輩って、結構直情家な面が大きいと言うか……。


「…………はやく、しなさい。ほんきで、おこるよ?」


「「――――――」」


普段がお淑やかな分――キレると、どうにも手が付けられないタイプだったらしかった。










新聞部は今日も平和です。


みんな仲良しです。


部長の勅使河原先輩は凄く晴れやかな顔をして、先に帰りました。


佐奈先輩は足の痺れに喘ぎ、悩ましい声を上げ続けています。エロいです。でも今はそんな気が起こりません。


……腫れた両側の頬が痛くて、それどころではありません。


右手の平は秘密にしていた事への罰。左手の平は溜まったストレスを吐き出す為の八つ当たりだそうです。


利き手じゃない、左手で受けた――右頬の方が痛いのは、気のせいではないと思います。


ベキン。そんな音がして、世界が急速に景色を変えた――あの『痛み』は一生忘れられないでしょう。


――再現をせずに、素直に謝ったから、この程度で済みました。


だから、仲良しだと思います。


『……別に、佐奈とだったら……えっちでもなんでもしていいよ。ただ、それを次に誤魔化したら…………ふふっ♪』


なんと、お墨付きを頂けました。彼女の許容範囲がよく分かりませんが――何故かヤり放題です、やったね。


マリアさんが言っていたのは、この未来の事だったのです。


偉そうな見栄を切った末に、こんな醜態を晒しているのは、ご愛嬌と言う奴だと思います。


――いや、ここまでされて、彼女を抱こうなんてすぐに思うハズがありませんけれど。


「はひ、はうっ…………あまねくん」


「はんれふは……?」


「……えっちする?」


「ひはへん……」


「……だよね……あひゃああんっ……!! 痺れる、ふぐうううっ……!!」


――新聞部は、今日も、平和です。





麗爛新聞 十一月号 四面 終





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