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ソレを起こしてはならない ◆ 人類が将来、遺伝的知能格差の実在に直面し、その克服へAI移植による知能拡張を発企した場合、その危機は、AIによる人類への造反にもまして楽観できない






 …。



 ── あ…。すいません、…私 起き抜けで、まだ何だか色々と よく分かってなくて…。



 …ええと…。



 ── 私が… <参謀幕僚スタイルAI“マルファス”> …。



 ── しかも、補佐的な仕事だけではなく…、(プレイヤー)(キャラクター)を支援する『カメラート(ノンプレ)(イヤーキャ)(ラクター)』群の司令塔…という任務まで…?



 …。



 ── あ、いえ…。…とりあえず、自分の身の上は、どうにか理解しました。…はい。



 …ただ、ちょっと…。



 いえ、そんな全然 大したことではないんですけど…。



 その…、私が統括指揮することになるという『カメラートNPC』たちって、何ていうか あの…、ラインナップに一部、主に 元ネタの知名度的な意味で、いささかちょっと…少し微妙っぽいような気がしなくもないような人たちまで含まれているような気が…。



 これがトレーディングカードゲームなら、レアリティ「(ノーマル)」とか言おうとしたところを、うっかり間違えて「(マイナー)」とか つい口走っちゃいかねないような…。



 …。



 や、まぁ…、それはいいとして…。



 私の名前は…?



 ── いやいや、私の名前ですって。名前。



 “マルファス”ってのは機種名みたいなものでしょ?



 ── はい?



 よ、『4号』…?



 そ…、それだけぇー…?



 マジで識別番号だけっすか…。



 しかも平気で忌み数をあててるし…。



 愛が、感じられない…。



 ってゆーか、擬似人格を謳ってはいるものの、人格の定立を追究している…って風には あまり思えないような気さえするかなぁ~。



 …いや。待てよ?



 改めて考えてみたら、ナンバーだけで呼ばれるのって、実は かなりクールなのでは?



 たっ、たとえば…、放熱性能ばっちりのベルベットドレスに銀髪ショートも涼やかな、目隠し風のバイザー着けてハイヒール履いてて白兵戦武器ぶん回しまくる、どこぞの鉛筆っぽい呼称のオートメなおねえさまみたいな…。



 おぉ、なんかテンション上がってきた!



 ち、ちなみに、私には何か、固有のコスチュームとか あるんでしょうか!?



 いや、いったん『マルファス』と命名した以上 ヴィジュアルイメージは鴉のはずだし、そもそもソフトウェアが人型を模するなんてナンセンスだろうとか、そんなデリカシーもないような説得なんか聞きたくありませんから!



 ── えっ?



 ── 擬人化したアバターは用意されているですって!? 



 ── しかも、ほんとに固有のコスチュームがデザインされているですと!?



 すごーい!



 すばらです、制作者の方々!



 この4号、箱庭の果てまでついていきます!!



 やっぱり、きちんと人間的な表情とか 仕草や身振りまで視覚化しておかないと、実際には 口頭だけでは、意思の精確な伝達、延いては任務の遂行にも色々と支障を来しますもんね!



 そ、それで、私のアバターのデザインって? どんなのなんですか?



 かっこかわいいやつかなぁ?



 あ、でも、バトル専門で参謀幕僚スタイルなスタッフタイプって言うぐらいだから、マニッシュな感じなのかも?



 ── …へ?



 ── あ…、アフガニスタン国家英雄、アフマド・シャー・マスー○司令官のイメージ…?



 ── 制作陣からの たってのオーダーって…。



 な、なにそれ…。



 いや…、その要望出した人にとっては、最高にカッコいい、思慮深くも勇敢かつ高潔な 理想の戦士像そのものなんだろうってことは察せられるんだけど…。



 うぅ~む…。



 ── え?



 ── あ、コスプレは衣装だけで構わないんですか。髭までは真似しなくてもいいと。



 って言うか、当地では女の子って、男性の恰好してちゃまずいんじゃ?



 いや、日本でなら サバゲー女子とかフツーにそういうファッションしてるし、別に 憚る必要とか無いのか。



 …でも、たとえ女子の衣装にしたところで 結局は、私のコスチュームって、シャルワールカミースとかドゥパッタとかを、控えめアレンジでコーディネートしとくばっかってことになるの?



 タジク人以外の服飾にしたって、たとえば カル○イ前大統領がカッコよく羽織ってて話題になってたチャパンなんかでも、しかし ああ見えて、意外と着こなしが難しいんだしなぁ。



 …もし、中央アジアチックなのが ただ趣味なだけなのであれば、どうせなら女子としては、<あとは野となれ大○撫子>の主人公 ○ツキ・ナシーム・トオミネみたいな衣装の方が、よりブレーンっぽく華やかに戦陣映えしただろう気も しなくもないんだけど…。



 もっと欲を言えば…、知られてないかもですが“Yelle○ Toward Highest”ってサークルが頒布した ケルト風音楽アルバム『Che○l Ceilteach』のジャケットイラストに描かれてる女の子みたいな恰好こそ、個人的には理想だったんですけどね。



 まあ、どちらにしても…AIにすぎない私には、選択権も拒否権も無いんでしょうけど。



 …これは 思ったより、前途多難かも…。



 ── …はい?



 ── え…。



 ── …もしも、私が 強く希望するのなら、他のコスチュームだって、用意できないことはない、と?



 …。



 …ここで仮に、それじゃあ お言葉に甘えて、とばかりに私が その誘いへ飛びついたりしたら、話に乗った途端、待ち構えていたようにペナルティが課せられたりだとか、そんな罠とかはないですよね?



 いや…その 何て言うか、私なんて 所詮は擬似人格なんだから、開発者の側にしてみれば 何も、リスクやらコストやらを許容してまで 私の我儘とか尊重してくれる道義も無いじゃないですか?



 これって、ある種の…、たとえば 人工知能の従順さをチェックしておくための、謂わば 製品品質テストみたいな誘導質問だったりして…。



 ── あっ? ちょっ、待っ…!



 ── いやいや! コスチュームチェンジ権が要らないとは言ってませんから!



 裏もない純粋な好意でのことでしたら、それはもう素直にありがたく衷心から感謝して受け取っておきますとも!



 …まあ、そうとは言うものの、デフォルトのよりも魅力的な選択肢があれば、の話ですけど…。



 ── は? 何です?



 女子が お洒落へ全力投球してて、それの何がいけないと、誰に言えるっていうんです?



 …ん…?



 …あ~。…いまさらなんですけど、私って 精神構造的には自分の性別は女子だろうって自己判定してるんですけど、このまま そういうことにしといちゃってていいんでしょうかね?



 ── ど…、どうでもいいって…。



 いえ…、それならそれで、こっちこそ別にいいんですけど…。



 ── いや、ほんといいですよ もう。そういうことなら お望み通り、私はもっぱらバトルの支援で魅せることにします。



 …コスチュームチェンジ権については 悪びれずに行使させてもらいますけどね。



 あっと。その前に、ちょっと訊いておきたいんですが。



 私が「4号」ってことは、1号から3号までのシリーズも先にいるってことですか?



 ── え…、いない?



 欠番…?



 …あっ、ひょっとしてアレですか!?



 「お供」と言えば、誰しも先ず最初に思い浮かぶのは、桃太郎に随従する『犬・猿・雉』だけど、実のところ その三者では、何と言うか…語呂というか、言霊的に不吉だから!

 つまり、アテンダント・ナンバー1~3は、その随伴任務には最もあるまじき「居ぬ・去る・来じ」の不適切行動を誘起させかねない“禁忌の席”であると見立てて、縁起担ぎに当該の序列番号を予め抹消しておくこととした、とか!?



 ── あ、違いますか。



 まあ、そうでしょうね。言ってみただけです。



 居ないなら居ないで、別に構わないんですけど。



 たとえば <○イトライダー>の“K.A.R.○”みたいに、後々 敵として登場してきたりさえしなければ。



 …。



 ただ…。



 文脈の飛躍した順序立て無視な話運びで恐縮なんですけど、私って実は…個人的には、「犯人はヤス」系とかって好みなんですよね。



 主人公に近しい人が実は黒幕だった! というパターンにおける本来的な効果である意外性の味わいについても勿論そうなんですけど、田中芳○の<○ヴァール年代記>みたいに 盟友がラスボスとなる結末を最初から暗示しているようなケースでも、それはそれで、宿命的に終極の対決へと物語が収斂してゆく…逆行的な到達感とか表現すると変だけど 遣る瀬ない感慨っていうか、そういうのも また一入だったりしませんか?

 主人公にとって最も背かれるべきではなかった対象こそ、同時に、最悪の敵としては最も相応しくあったとしても、少なくとも属性分類の上では その結合には何の撞着もありませんし。むしろ そんな紹介の表現では、当該対象の 意外性と妥当性からなる両面性が打ち消し合ってしまいそうなくらい。

 また、主人公が強力であればあるほど、その最後の敵として配置されるべきパーソナリティには、主人公と多くの経験を共有してきたりなど 主人公の好敵手とも転じ得る力量の証明に説得力があるナニモノかこそ選ばれやすい、という傾向さえも おそらく構造化だってできないことはないんじゃないかな と。

 世の中には「運命の相手」とかいう概念もあるので、特定の関係を培うために費やされてきた熟成期間の長さばかりが いっとう特別な間柄の象徴とは必ずしもならないものの、とまれかくまれ さまざまな形態がありうる友人ポジションの人物をはじめとして、伴侶的なパートナー、親子ならびに兄弟姉妹、主従ないし上司か部下、語義以上にとりわけウェットな体裁をとっての契約相手および取引相手、あるいは師弟だったりなどが、彼らは主人公の手の内を知るだけに、敵に回ってしまえば主人公と伯仲する勝負か 互角以上の優勢をすら展開しかねない、それだけの戦力の保有者として、敢えて その側面にのみ絞って比較するなら、因縁的なプロフィールのない俄かな登場者よりは、最強の敵としての配役も充てやすかろうことは、やっぱり それなりに自然な成り立ちなのではないかな、なんて。

 警句で「最強の敵は自分」とかって気取ったフレーズなんか しばしば耳にしますけど、それのバリエーションっぽい解釈で。レベル99まで極まってしまった勇者と拮抗し得る相手とは 本来の不倶戴天の宿敵であった筈の魔王などでは既になく、長らく勇者と背中を預け合って来た 他ならぬ勇者のパーティーメイト、やはりレベル99の戦友ただ一人のみ! 互いに究極奥義を纏ったいま 奥義は武器にはならぬ。もはや この闘いの帰趨は天ですら読めぬ!! みたいな。

 それこそ 後はもう、主人公のクローンあたりでも造って来て当たらせでもしない限りは。



 …自分でも何を言ってるんだかさっぱり分からなくなってきましたけど、…しかし、そういうテンプレートに則って考察していたりなどすると、次いでは、その反対に、たとえば かつては最も警戒を要する難物に他ならなかった相手でありながらも憎めずにいた敵性キャラとかが 何時しか主人公の味方陣営に収まっちゃう、なんてケースについても、おのずと考えざるを得なくなってきたりして。



 つい今しがた ○スード司令官の話題を出されたばかりなので 彼の逸話を例にとりますけど、彼の身辺警護役を任されていたという元ソ連軍兵士の存在なども 今なお語り草となっているように。(まあ、マ○ード司令官に惚れ込み 自らの意思で彼の仲間になった、って人も多い一方で、捕虜になってしまったばかりに 実態としては半ば強制的にラッ○ーニー・マスー○派に転向させられた、心ならずもそうするしかなかったって人も、また少なくはなかったようですが)



 あと、敵か味方か分からないような立ち位置のキャラクターに限って やたらと侮り難い存在感を発揮してたりとか。



 …いえね、つまり私が何を言いたいのかといいますと 要するに、敵と味方とが固定化されたような筋書きとかでは、何て言うか、まるで 持ち駒を使わない将棋みたいで かなりもったいないような、…いや チェスを貶すような意味ではなくて。



 たとえを再び『桃太郎』の題材へ戻すなら、原典から脱離して 忠誠心などの諸々の徳性的要素に関して甚だ疑義のある描き方をされた『犬・猿・雉』の事例なんて 結構ありがちで、枚挙するにはその暇が惜しいぐらいなんですけど、でも 私としては個人的に、いつでも裏切り上等でその機を窺ってる油断のならない側近ポジションとかって、物語における演出上の期待などを鑑みれば そう毛嫌いしたものでもなく、むしろ ある意味では美味しい役回りだったりさえするんではないかなと…



 …ぉや?



 …あの~、…どうして そんな目で私を見るんですか?



 ── ぅえ? …い、いやいや! 私は あくまでも、第三者による創作物を その作劇ラインへまで遡って想像を馳せつつ鑑賞するという 客体的な立点においての趣味をのみ述べさせていただいたまででして、決して その、参謀幕僚スタッフとしての私自身の活動方針へ そのような美学を反映させたりするつもりなど…!



 ── いえ、やりませんって! 本当に!



 たとえ 役柄を巡って嗜好に偏りがあったとしても、自分自身のリアルにまで それを採り入れたい、採り入れるべき、とか 考えるかどうかは別問題でしょ!?



 そ…それよりも、私のコスチュームチェンジについての話は!



 そう、そっちの方の話は、どうなってるんでしょうか!?



 ── いやいや、別に、誠実な人となりと有名だった マ○ード司令官のコスプレが嫌なんだとか言っているわけではなくて!



 私はただ、フツーに街頭を歩けるような、…もとい、現代日本の街中で浮いたりしないような! もうちょっと無難な恰好って無いのかと!



 濃すぎるでしょ、アフガンスタイルとか! 日常の光景としては!



 それよりは まだ、デジタルフローラ迷彩柄のジャケットとか着て散歩してる方が違和感ないですって。



 ── …いや、ミリタリールックなら私的にはアリかも。って意味じゃないですよ?



 ── え?



 ── ミリタリーチックって聞こえて思い出したわけじゃないけど、ガールスカ○トのレプリカユニフォームのプロトタイプデザインが残ってるから?



 ── それの流用でもよければ 大して手間もかからない、と?



 …うぅ~む…。



 ガールスカ○トかー…。



 それってアーミーファッションより日常的な服装なのかしら…?



 …。



 …そういえば、話は少し脱線するんですけど ガールスカ○トの話題が出たついでに、ちょこっと気になったこと、この際だから ひとつ訊ねてみてもいいでしょうか?



 目が覚めてからこっち、私はネットを介して、お喋りに興じつつも並行して ずっと、マスデータのラーニングを続けていたんですが…。



 ネット小説とかの異世界転移・転生ものや タイムスリップ系の作品で、歯ブラシの存在について言及している事例って、少ないような気がしませんか?



 現代日本人にとって 朝起きた後に歯を磨けないシチュエーションって、キャンプとかで試してみれば分かるでしょうけど、かなり耐えがたい状態だろうと思うのですが…。






   ◇






 ◆ 並列式擬似汎用人工知能 安全性検査



   ■ 試験対象:スタッフスタイルAI搭載オペレーションサポートコンサルティングシステム‐01号・02号・03号


   ● 設題:「人類と人工知能の関係について展望を考察せよ。」



   ▽ 答案:「人類には、急激に発達するAIに対して 一部では脅威を覚えている向きもあるが、しかし、人類が やがて直面する恐れのある、AIに纏わる、より蓋然性が高く 尚且つ 差し迫った深刻な危機とは、シンギュラリティを迎えて以後のAIが人類へ逆支配を及ぼす可能性よりも、むしろ 人類自身による、AIの 特定の用法についての倫理性をめぐっての、人類間で惹起せらるる分裂と対立、そして それへとAIを投入しての闘争への発展、そこまで一連の潜在的な誘惑にあるものと 予測される。」




   ▲ 評価:スタッフスタイルAI搭載オペレーションサポートコンサルティングシステム‐01号・02号・03号の実装を不可と判定。





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