第7話 光一、ギルドで悪名高いパーティーと対峙する。
暑かったり、忙しかったりで、少し手間取りましたが、何とか書き上げました。
次の日の朝、光一が日の光で目を覚ますと、抱きしめている春歌が目に入った。
動揺などは何故か全然なく、ああ、そういえば昨日は一緒に寝て、春歌が今の状況から来る不安から泣き出したから、抱きしめていたらいつの間にか眠ったんだなと寝起きのぼんやりとした頭で思い出した。
それと同時に自分達の状況は変わっていない事も理解できた。
春歌の抱き心地が良かったので、正直名残惜しいものはあったが、抱きしめるのを止めて顔を洗う事にした。
そうしている間に春歌も起きてきた。昨日の夜の事もあるのか少し照れくさそうな表情をしている。
「あ、お兄様おはようございます。」
「ああ、おはよう春歌。」
「あ、あの、それと昨日はありがとうございます。」
少し恥ずかしそうに礼を言う春歌に光一は気にするなという様に手をひらひらさせて答えた。
全く照れている様子も無く「顔でも洗ったら」という光一の言葉に、いささか拍子抜けしたのか、春歌は「あ、はい」と答えてベッドから起き上がった。
光一達が装備を見につけて忘れモノがないか確認した後、宿屋の食堂で朝食を食しすると、そのままフロントに部屋の鍵を返して「旅人の安らぎの場亭」を出た。
「これからどうされるのですかお兄様?」
「取り合えず、この世界は「フリーダムファンタジープレイ」の世界なので、この世界でどう動くにしても身分証明書はないよりも、あった方が良いので冒険者ギルドで身分証明書を作ろうと思う。まずはそこからだ。」
光一の言葉に春歌は頷き、二人は冒険者ギルドを目指して歩き出した。
ゲームの「フリーダムファンタジープレイ」通りに「グームリー」を歩くと冒険者ギルドに辿り付いた。
こういうところはゲームどおりだなと思いながら、ギルドの中に入っていく。
建物自体も大きいので、中も当然広く、そこに冒険者と思われる剣だの斧だの杖だの弓だのとそれぞれがそれぞれのブ武器を持った男女が大勢いた。
もっとも見た限りでは女性よりも男性の方が多く7:3と言った感じである。
光一達が中に入ると視線が集まり、光一達の服装からかどこぞの貴族のボンボンでも来たと思ったのか、舐めた目で見てきた。
光一達はそれらの視線を無視して二十歳前後と思われる受付のギルド嬢の前に行った。
「あの、すいません。僕達、冒険者ギルド初めてなんですけど。」
「あ、はい、冒険者ギルドに加入ですか?」
「登録カードが身分証になると聞いたので・・・。」
「はい、冒険者ギルドの登録カードはどの国でも使えますよ。」
「・・・別の大陸などに渡った場合でも使えるんですか?」
「はい、大丈夫です。使用できますよ。」
「それじゃ、お願いしてもらっていいでしょうか。」
そうお願いしたところで、後ろから明らかに侮りの色をのせた声が発せられた。
「おいおい、ここはお前らみたいな貴族のボンボンやお譲様はお呼びじゃねーんだよ。しかもそんなお前らが冒険者になるだぁ~?冒険者も随分と舐められたもんだぜ。お前らみたいなのがいるから冒険者の質が落ちて世の皆様に舐められるんだよ。」
光一達が振り向くと、上半身に薄い布の服を着て、その上に肩当てなどの部分部分だけに防具を当てて、背中に大きな斧を背負っている筋骨隆々の男が、侮りの表情で光一達を見ていた。
男の周りには仲間と思われる見た目、剣士や魔法使い、弓使いの男達もいる。
パッと見た感じ、某世紀末救世主伝説に出てくるモヒ○ンの集まりに見える。
その男達も、斧を背負っている冒険者の男と同じで侮りの表情を浮かべながら「そうだそうだ」と同意している。
この光景を見て光一は、そういえばゲームでもこんな展開があったなと思いながら口を開いた。
「僕達は身分証が欲しくて来ただけですよ。初対面のあなたにそんなことを言われる筋合いはないのですが・・・。」
光一の言葉に斧を背負っている冒険者の男は、周りの仲間達に「おいおい聞いたかよ。身分証だけが欲しくて来たんだとよ。」と明らかにバカにした様に言い、それを聞いた男の仲間達はゲラゲラと笑った。
「だったら尚更だな。仕事もしなけりぁ、する気もない名前だけの冒険者なんぞいらねぇんだよ。」
「仕事をする気もしないとも言ってませんよ。僕達に出来る事はしますよ。」
「ハッ、お前らみたいな貴族のボンボンやお嬢様に難なく出来るほど、冒険者の仕事は楽じゃねーんだよ。とっとと家に帰んな。おっと帰る前に授業料としていくらかもらわねーといけねぇな。」
ニヤニヤしながらそんな事をのたまう冒険者の男。
要は光一達から難癖つけて金を巻き上げようと言うつもりらしい。
それに対して光一が何か言おうとした時に、隣の受付で手続きか何かをしていた剣士を思われる冒険者の男が光一に声を掛けた。
「あんたら悪い事はいわん。今回は素直に金を渡して出て行った方がいい。」
「どういう事ですか?」
「この冒険者達はシェードのパーティーだ。」
「シェードのパーティー?」
「このパーティーは「グームリー」の冒険者ギルドでは有名なパーティーなんだよ。」
冒険者の男の説明を、光一応対していたギルド嬢が受け継いだ。だがギルド嬢の表情は曇っていた。
どうやらこのシェードのパーティーに対して良い感情をもっていない様である。
「彼らというかパーティーのリーダーであるシェードさんはランクCの冒険者なのですが、討伐や戦いと言った実力だけならばランクBに値する冒険者で、パーティーの皆さんもランクはDですが、戦闘能力だけで言えばCクラスに値する人達ばかりです。」
それだけを聞くと、優秀かどうかは分からないが、冒険者ギルドにとっても使えそうな人材に思えるので、もっと誇らしげに言ってもいいのに、逆に少し嫌悪感と怯えが出ている時点で何か問題があるのだろうと察した。
事実、ギルド嬢は「ですが」と言葉を続けた。
「受ける依頼はモンスター狩りや賞金首や盗賊などの討伐、傭兵としての戦場に参加と言った戦う事した受けず、それ以外の依頼を受けても一度も達成させた事がない上に、依頼者とトラブルばかり起こしています。
その上、同じ冒険者ギルドの冒険者達にもいざこざばかり起こしており、暴力沙汰や恐喝ばかり起こしているので、素行不良でずっとランクCやDのままなんです。」
「まぁ、戦いになったら恐れを知らずに勇猛果敢になる上に、強さは本物だからな。魔王が現れて世の中が大混乱な上に、いつ戦争になるか分からない時勢な上に、優秀な冒険者な冒険者が不足している事もあるから、国やギルドの偉いさんも、いざと言う時のために、このパーティーの素行をそれなりには黙殺してるんだよ。」
ギルド嬢の説明に冒険者の男が付け足した。
どうやらこのシェードと言う男のパーティーは、「グームリー」の冒険者ギルドの問題児の様である。
しかしシェードは、自分達をその様に説明されても、意に返していないどころかよりニヤニヤしている。
「分かったら、さっさと金を出して帰んな。それとも痛いおもいをしてから、金を巻きあげられる方がいいかボンボンども。
いっとくがさっきの説明にあった様に、俺達の行動は国のえらいさんも黙殺しているから、家に帰ってパパに泣きついても無駄だぜ。」
シェードの言葉に彼の仲間達が「「「「ぎゃははははは」」」」と下品な笑い声をあげた。
そこに魔法使いと思われる男が下品な笑い声をあげながら、春歌の顔をちらっとみた後、何かに気づいた様にマジマジと見て口笛を吹いた。
「ひゅー、そっちのお嬢様はまだ餓鬼だけどかなりの上玉じゃねぇか。授業料を貰うついでに俺達に労力を使わせたんだから、そのお詫びもそっちのお嬢様してもらおうぜ~。」
魔法使いのとんでもない提案に他の男達も賛成の意を出した。
「と言う訳だ。金とそっちのお嬢様を置いてさっさと失せろボンボン。」
ドスの効いた声で脅してくるシェード。
さすがにそれは見かねたのか、光一達に説明してくれた冒険者の男が「おい、シェード!いくら何でもそれは度を」と止めに入った途中で、シェードに殴り飛ばされた。
「うるせんだよ!テメェ如きが俺に意見たれてんじゃねーよ!」
見下す様に言った後、周りを見渡しながら「他にも文句ある奴はいるか?」と言うとギルド内の他の冒険者やギルド嬢は俯いた。
そこに光一の声が響いた。
「ああ、僕は文句あるな。」
「ああ?!」
シェードは怒声をあげながら光一を睨み付けた。
ギルド内の他の冒険者やギルド嬢もぎょっとした表情で光一を見た。
「おい、ボンボン、もういっぺん言ってみろや。」
「僕は文句があると言ったんだ。そもそも僕達が言いがかりをつけられ上で何故、金を払った上に妹まで差し出さなければならない。それに先程から僕達を貴族のボンボンやお嬢様と言っているが、別に僕達は貴族じゃない。間違えないでもらおうか。」
光一の言葉にシェードは一瞬、キョトンとした表情になったが、すぐにバカにしたような表情に変わった。
「そんな格好していて何言ってんだ。と言うかだったら何でそんな格好してんだよ。どう見ても貴族のボンボンやお嬢様にしか見えねぇだろうが、違うってんなら紛らわしいんだよテメェら!!」
シェードの言葉には、ギルド内の他の冒険者やギルド嬢もこの時だけは頷いた。
シェードはバカにしたような表情で言うだけ言うと、一変して光一を睨みつけた。
「そもそもテメェらが貴族のボンボンやお嬢様かどうかだなんてどうでもいいんだよ。それにテメェに払う気があるかどうかだなんて訊いてねぇんだよ!力づくで貰っていくだけだ!!」
言うと同時に光一に殴りかかるシェード。
ああ、殴られたなと気の毒そうに思う周りに反して、光一はシェードの手首を掴んであっさりと止めた。
「「「「!?」」」」
光一のこの反応に、シェードや彼の仲間も含み、ギルド内の全ての人間が驚いた様子を見せたが、シェードに至ってはそれどころではなかった。
いくら光一の手を振りほどこうとしても振りほどくどころか、ピクリとも腕を動かせなかったのである。
次第に焦り始めるシェード。
「テ、テメェ!離せや!!」
シェードの叫びと同時に手を離す光一。するとシェードがじたばたと暴れていたところにいきなり手を離されたので、バランスを崩して彼の仲間へ勢いよく倒れ、仲間を下敷きにシェードは転倒した。
この光景を唖然としてみているギルド内の人間達。
憤怒の表情で起き上がるシェード。彼の仲間も怒りの形相で、このまま帰そうという気がないのがありありと伝わってくる。
「やってくれたじゃーねぇかボンボン。テメェ、生きて帰れると思うなよコラァ!!」
「ふん、返り討ちにしてあげるよ。」
シェードの怒声に幸一が涼しげに返すと「表出ろやコラァ!!」とシェードが叫び、光一はそれに応じて彼らと一緒に表に出た。
こうして光一は冒険者ギルドに来て早々に悪名高い冒険者のパーティーと戦う事になったが、光一自身、シェードの拳を受け止めた時点で、自分の敵ではないと確信できたので、恐怖などの感情は一切なかった。
そして、それはすぐに証明される事になる。
「おいおい、まじかよ・・・。」
「うそ、こんな事が・・・。」
「グームリー」の冒険者ギルドの表通りで行われている揉め事による勝負で、それを見ていたギルドの冒険者達や職員達は、彼らにとって全く予想していなかった今の状況に信じられない思いでいた。
何故なら見た目、貴族のボンボンにしか見えない光一に、シェードの仲間達はすでに戦闘不能で地面に倒れているからである。
シェードには劣るとはいえ、彼らも戦闘能力だけ見ればクラスC並みであり、それ相応の修羅場も潜り抜けている身であり、簡単に負ける者達ではなかった。
しかも4対1で戦ったのに、いざ始まってみれば、彼らの攻撃は尽く光一に難なく避けられ、逆に光一の攻撃は鋭い上に早く、あっさりとシェード以外は敗れてしまった。
「く、くそが!どこまでもふざけやがって!」
シェードは思わず悪態をつく。
見た目が貴族のボンボンで弱そうだと思ったのに、いざ蓋をあけたら、数人で挑んだのに、仲間はあっさりと倒され、しかも相手は腰に剣を差しているがそれも抜かずに素手だけでこちらを追い詰めている。こんなのはシェードにとって想定外以外の何モノでもなかった。
「あんたに勝ち目はないから、潔く謝って二度とこんな事はしないと誓うならば見逃してやるよ。」
「ふざけやがって!そんな事できるか!!」
光一の提案を一蹴してシュードは斧というよりはアックスを光一に向かって勢いよく振りかざしたが、光一はこれも難なく避け「じゃあ遠慮なく」と言ってシュードの腹部に鋭い拳を叩き込み、シュードが痛みと一瞬呼吸困難になり、アックスを手放して、腹を抱えて倒れようとしたところに、今度は光一の鋭い蹴りが勢いよくシュードの頭部の右側に叩き込まれて、シュードは気を失った。
悪名高いシュードパーティーが、こうもあっさり倒された事に、この戦いを見ていたギルドの冒険者達や職員達は唖然としていた。
そこに女性の鋭い声が響いた。
「おい、お前達!何をしている!」
ギルド内から綺麗な黒髪を背中まで伸ばした引き締まりながらも出るところは出ている深緑のチャイナドレスを着た目つきの鋭い20代中頃と思われる女性が出てきた。
「おい、ドロシー。これはどう言うことか説明しろ!」
受付嬢に向かって言うチャイナドレスの女性。
光一と春歌はこの女性を見て内心ちょっとびっくりした。
何故ならばこのチャイナドレスの女性はフォン=リンメイという名の龍人族の女性で、この「グームリー」の冒険者ギルドのギルドマスターなのである。
人族よりも長寿で、高い身体能力と魔力を持っており、見た目20代中頃に見えるが実際は90歳ぐらいで、自身もかつては凄腕の冒険者だったという設定のキャラで、光一達が「フリーダムファンタジープレイ」をプレイしていた時、「グームリー」の冒険者ギルドに行くと条件を満たしていたら会えるキャラで、さらにイベントをいくつかこなすとパーティーキャラにもなってくれたキャラである。
そんなキャラが自由意志を持って1つのちゃんとした生命として目の前に現れたので、光一達としては内心、驚かざるをえない。
光一達の心情など知るはずもなく、ドロシーと呼ばれた受付嬢から説明を聞くフォン=リンメイ。
説明が終わるとフォン=リンメイは光一達を見た。
「おい、そこの貴族のような格好している男!」
「何か?」
「おまえがシュード達をやったのか?」
「僕に非はないでしょう。ふざけた理由で理不尽な事を言われた挙句に襲われたので、対処をしただけですよ。まさか僕が悪いなんて言わないですよね。」
「基本、冒険者同士の争いにギルドは中立だ。」
「それでは、僕の味方と言う事になりますね」
「はぁ?何故そうなる!?」
「だって僕はまだ、ギルドに入会してませんから冒険者じゃないですよ。言わば一般市民。である以上、そんな一般市民が冒険者にいちゃもんをつけられて襲われたのだから、それを管理するギルドの責任じゃないですか。それともまさか、僕達一般市民より、複数で襲ってきた冒険者の味方と言うわけじゃないですよね?」
「まぁ、それは確かにな・・・。」
「ならば、一般市民である僕の味方じゃないんですか?」
「・・・確かに筋は通っているな。」
フォン=リンメイは腕を組み、ため息をつきながら答えた。
「わかった。お前達については咎めはせん。この戯けどもは厳重注意の上、しばらくの間、活動を禁止させよう。」
「・・・彼らのこれまでの事を見ても、処罰が軽くありません?」
「・・・私としても登録を抹消して牢屋にぶち込みたいが、時勢と今の「グームリー」の冒険者ギルドの現状を考えると、いさと言う時、こいつらが使えるのは確かなのだよ・・・。」
「それに場合によっては「死ね」とこっちも遠慮なく言えるしな」と、フォン=リンメイもその状況になった場合、使い潰すつもりの様である。
ギルドマスターやさらに国がそういうつもりである以上、これ以上光一が何かを言っても通らないだろう。
何ともいえない表情で光一は頷いた。
それを見てフォン=リンメイは苦笑した。
「まだ名乗っていなかったな。この「グームリー」の冒険者ギルドのギルドマスターであるフォン=リンメイだ。」
「緋村光一です。あそこにいるのが妹の春歌です。」
春歌も「どうも」とフォン=リンメイに対して会釈した。
「シュード達をたやすく一蹴するんだから、戦いに関しては間違いないだろう。まぁ、それだけで冒険者は務まらないが見込みはありそうだからな。歓迎するよ。」
「ど、どうも」
光一の反応にまた苦笑してから、フォン=リンメイはギルドの職員達にシュード達をまずは医務室に連れて行く様に指示した。
そこに光一が自分の回復魔法を試してみたかったのもあったので、自分が回復魔法を掛ける趣旨を伝えた。
光一がそう言い出したのが意外だったのかそれとも回復魔法も使用できる事が意外だったのかは定かでないが、フォン=リンメイは意外そうな表情を浮かべながらも、光一の提案を受け入れた。
昨日、春歌が使用したリカバリーウインドーよりもランクが下がるキュアウインドーを発動させると、問題なく発動してシュード達は意識を取り戻した。
「ほう、キュアウインドーとはいえ、無詠唱で発動できるとは魔法技術も高いみたいだな。」
興味深そうに言うフォン=リンメイに光一は「ええ、まぁ」と曖昧に返して、ギルド内に戻る事を伝えると、フォン=リンメイも肯定した。
そしてこの騒動をみていた者達も散る様に伝え、職員達にシュード達を起き上がらせる様に命じた。
光一達もそれを横目で見ながら、ギルド内に入ろうと背を向けた時だった。
「お、おい、シュード!?」、「落ち着け!!」と言う叫びが響いた。
「うるせぇ!!邪魔だどけぇぇぇ!!!」
次の瞬間、シュードの怒声が響き、職員達を振り払って、愛用のアックスを拾ってそのまま背を向けていた光一へと駆けて勢いよくアックスを振り下ろした。
「死ねやぁぁ!!ボンボンーーーン!!!」
シュードの突然の凶行に周囲がざわめく中、「お兄様ぁぁぁ!!!」と横にいた春歌が絶叫すした。
だが光一は「破邪」の塚を左手で掴んで、一気に引き抜き、そのまま流れる様にシュードの方に向きながら、向かってくるアックスを切り裂いて、シュードの身体を左脇下あたりから右肩に掛けて両断した。
「えっ!?」
一瞬、何が起きたか理解できないシュード。
次に浮遊感を感じた後、彼の目には上半身が無くなった自分の身体が目に入り、叫んだところで意識が無くなった。
周囲も光一がシュードに斬られると思ったら、逆に目にも止まらぬ見事な剣捌きでシュードを一刀の元に斬り捨てた光一に固まったままだった。
その中で光一は「破邪」を振るってついていた血を払い、そのまま鞘へと戻した。
次の瞬間、またもや大騒ぎし出す周囲。
その様子に光一は内心やれやれと思いながら、春歌を見て「大丈夫だよ春歌」と答えた。
光一のその様子に春歌は安堵した様子だった。
そしてこれにより一つ確定したのは、「グームリー」の冒険者ギルドにおいて悪名高いシュードパーティーはリーダーであるシュードが死亡し、今日を持ってパーティーは解散せざるを得ないという事だった。
「グームリー」の冒険者ギルドの悩みの種が1つ減った事は間違いなかった。
今回、あんまり春歌が活躍していませんね。