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ゲームの世界に義妹と来たので、素敵な”出会い”を求めて僕らは二人、冒険に出る。  作者: 謎の生物
素敵な”出会い”を求めて冒険に出るまで
5/92

第5話 僕もモンスターも凶暴です。

ようやく主人公である光一が戦闘をします。

ほんの少しだけグロっぽい内容もあるの・・・かな・・・?

 「もう少しでイネアの街かぁ~。」


 光一が遠くにそれなりの規模の街が見えたので、何気に呟いた。

 マーハード王国首都「グームリー」に行く途中にある中規模都市であった。

 二人が召喚したモンスターに乗って、そこ20分ぐらいしか経過していいないのにもうイネアの街付近まで近づいていた。

 当然、その前にあった小規模の村「チサイ」など、すでに通り過ぎている。

 この様子では「グームリー」まで30分も掛からずに到着できるだろう。

 「グームリー」に行ったらまずは、冒険者ギルドにでも行ってみようかなと何気に思案していた光一は春歌の声によって中断させられた。


 「お、お兄様、前方に豪華な造りの馬車が停まっているのですけど、何だか襲撃を受けている様なのですが・・・。」

 「ん?あ、本当だ?!」


 春歌の言葉に光一が前方を見てみると、確かに豪華な造りの馬車が停まっており、護衛の騎士と思われる男2人と女性1人、その周りをいかにもアウトローの野盗ですといった外見の10人ぐらいの人数が囲んでおり、互いに剣を抜いて対峙していた。

 すでに戦闘は行われている様であり、騎士の死体も野盗の死体もそこそこにあった。


 春歌の「どうしましょうお兄様!?」の声に、どうしようかとほんの少しの間、悩んでいる間に、跨っているモンスター達は関係なしに進んで行き、それに気づき慌ててストップを掛けた時には、目の前の事態に対してかなり近づいてしまっていた。

 ましてや「ケルベロス・ロード」も「ライトニング・ホワイトドラゴン」もその巨体に加え、最上級モンスターらしい存在感と威圧感を放っているので、護衛の騎士も野盗達も否応なしでもこちらに気づいた。

 ただどちらも、こちらに気づいてこっちを見た時、ありえないモノを見たような愕然とした表情をしているたが・・・。


 「───だ、誰だっ!? てめえらは!!」

 

 野盗の一人が剣を構えながら、尋ねてきた。だが若干、声が震えている様にも感じる。


 「えっ?僕達?」

 「てめえら以外に誰がいる!化け物共に乗ってるてめえらだよ!!」


 野盗の「化け物」という言葉に、事実は事実とはいえ手塩を掛けて育成したモンスターをそう言われて光一は内心ムッとし、思わず「ケルベロス・ロード」を持つ手に力が入った。

 そしてそれが野盗の運命を決定付けた。

 次の瞬間、野盗に一番近かった「ケルベロス・ロード」の右頭が、野盗に噛み付き、野盗の腰から上は嚙み取られてしまった。


 「「「なっ!!てめえ!?」」」


 馬車の周りを囲んでいた野盗達はそれを見てブチきれた。

 だが光一はそれよりも今、目の前で起こった惨劇の方が大事だった。

 今、間違いなく目の前で人が死んだのに、それに対するショックが全然なかったのである。

 せいぜい驚いた事は、「ケルベロス・ロード」が何も命令していないのに野盗に噛み付いた事ぐらいで、野盗が死んだ事に思う事は何もなかったのである。

 思わず光一は春歌に訊ねた。


 「ねぇ春歌、春歌は今の光景に何か感じた?」

 「い、いえ、人が死んだのに何も・・・。」


 戸惑った様に答える春歌だが、それは野盗が目の前で死んだ事ではなく、それに何も感じない自分に戸惑っている様子だった。

 この自分や春歌の精神の状態に、これもこの身体になった事の影響なのか、それとも自分や春歌は元々、こういう精神をしていたのかと思案し、前者ならばまだ良いが、後者ならば自分達の気づきたくない一面だと思い、落ち込みそうになった。

 しかし光一が思案していられるのも、ここまでだった。


 「てめえら!俺達を無視して話し込むなんざ、とことん舐めてくれんじゃねぇか!!」


 野盗の頭目と思われる男の怒声に、光一は目の前にある事態に意識を戻す事になった。

 とはいえ野盗の大半は、もうすでにこちらに剣を向けて対峙している。

 もう戦闘は避けられそうにないので、光一は「ケルベロス・ロード」に降ろす様に命じた。

 「お兄様、私も」と春歌も「ライトニング・ホワイトドラゴン」から降り様としたが、「春歌はそこで待ってていいよ。」と光一が止めた。

 そして「ケルベロス・ロード」から降りて光一は野盗達と対峙した。

 だが光一の中性的な顔立ちとどこぞの貴族のような服装に、野盗達は敵ではなく獲物と見たのか、ニヤニヤした下卑た笑みを浮かべた。

 しかし、すぐにそれは大きな間違いであると思い知るハメになった。


 光一は「破邪」を抜こうとした時に、ふと自分の素手系の戦闘スキルはどうなんだろうと思い、対峙してる野盗達で試してみようと考えた。

 まずは「超加速」を使って高速移動で対峙していた野盗の一人の目の前に立ち、そのまま素手系の戦闘スキルの1つ「手刀斬しゅとうざん」を使って、驚愕している野盗の右肩から左腰に一閃、手刀を振り下ろした。

 次の瞬間、野盗の上半身が綺麗にずれ落ちた。斬られた野盗は何が起きたか理解できていない表情で世を去った。

 だが、光一はそれに構わず、そのままの勢いで近くにいた野盗に、「手刀斬」と同じく素手系の戦闘スキルの1つ「閃光脚せんこうきゃく」を使って鋭い勢いのついた蹴りを野盗の頭部に放った。

 次の瞬間、野盗の頭部は砕け散った。

 

 「「「!?」」」


 他の野盗達は、光一の予想外の強さに驚愕と動揺した様だった。

 その隙を突いて光一はあっさりと更に3人、素手で殺していた。

 その光景に更に残った野盗達は動きが固まる。


 「てめえら!!な、何、ビビッてやがる!!ボケっとしてねぇで戦わねぇか!!」


 野盗の頭目が部下の様子をまずいと思ったのか、怒声を張り上げて残った部下達を我に返らせ様としたが、すでに手遅れだった。

 馬車の護衛の騎士達と対峙していた野盗達は、動きが固まった隙を突かれて討伐されており、残った最後の部下の野盗も光一の素手系の戦闘スキルの1つ「手槍突きしゅそうつき」で胸部を光一の腕で貫かれており、「あああぁぁ!」と絶叫しており、光一が腕を引き抜くと野盗は地に伏してそのまま絶命した。

 この光景を見て野盗の頭目は「ヒィッ」と短い悲鳴をあげながら一目散に逃げ出した。

 その背に向かって光一は両手の平の下と下を合わせて構え、それを左腰に持っていき、気を込める様にイメージするとすぐに構えた手の中が輝き始め、瞬く間に手の中の輝きが溢れんばかりに輝き、エネルギーをほとばらせていた。

 そして勢いよく逃げる野盗の頭目の背中に目掛けて両手を突き出すと、青白いエネルギーの矢のようなものが放たれ、野盗の頭目に当たった瞬間、野盗の頭目は肉片となって砕け散らせ、そのまま遥か後方にある樹にまで飛んでいき、樹の身体まで破壊して横に倒したのだった。

 素手系の戦闘スキルの1つで飛び技系の1つである「気功破きこうは」だった。

 光一は内心でどれも想像以上のトンでもな威力だったなと思いつつも、それを表情に出したりせずに、構えを解いて馬車の方を見た。

 馬車の護衛の騎士達は、一瞬、身体を硬直させ、助けられた側とは思えない程の警戒と緊張感を漂わせていたが、そこにいつの間にか「ライトニング・ホワイトドラゴン」から降りた春歌が無邪気に「お兄様強い!まさに無双ですね♪」と嬉しそうに駆け寄った。


 「まぁ、確かにね。何はともあれ良い訓練代わりにはなったよ春歌。で、あなた達は大丈夫だったのですか?」


 春歌に応じた後、光一は馬車の護衛の騎士達に無事かどうかを訊ねた。

 騎士達は一瞬、警戒と緊張感のあまり何を訊かれたか解らない様だったが、我に返ったのか言葉を返してきた。


 「え・・・あ、ごほん、い、いえ大丈夫です。おかげで助かりました。」


 ここにきてようやく騎士達も光一達に対しての警戒を解いた。


 「私は「あ、自己紹介とかはいいです。問題がないのならば、僕達はもう行きますから」え、あ、ちょっと」


 光一は名乗ろうとした騎士の言葉をさえぎって、そう伝えると踵を返して「ケルベロス・ロード」の元に行こうとし、春歌もそれに続きながら、光一に話しかけてきた。

 後ろで騎士達が何か言っていたが、光一達の耳には入ってなかった。


 「今の戦闘を見るに、お兄様の習得したスキルは剣であれ素手であれ問題なく使えそうですね。」

 「そうだね。でもまぁ、まだ使用していないスキルや魔法もあるから、完全に問題無しとも言えないけど。」

 「それもそうですね。私も攻撃魔法は先程使用したので問題なさそうなのですが、他の補助とか回復とか蘇生などは・・・。」


 春歌はそこまで言って、何かに気づいたらしく、ハッとなって勢いよく騎士達の方を振り向いた。


 「あの、いきなりで申し訳ないのですが、あなた方はこの野盗の襲撃で負傷などをされたのでしょうか?」

 「はっ?あ、いえ、馬車に乗られているお嬢様はお怪我はありませんが、私達3人は多少の負傷は負いましたが、命に問題はおろか、行動にも支障ありません。」


 いきなり春歌に話しかけられて光一達を引き止めようとしていた騎士は面食らった様だが、春歌の問いに答えた。

 その騎士の返答は春歌にとっては十分だった様である。


 「あ、皆さん、負傷はしたんですね。なら治癒魔法を掛けますね。リカバリーウインドー」


 有無を言わさずに春歌は回復魔法の1つで、複数の人間を治療するリカバリーウインドーを護衛の騎士達3人に掛けた。

 一瞬、馬車についてた騎士二人が何事かと構えたが、次の瞬間、暖かな光と共にそれぞれが負傷していた傷が治っていくので、回復魔法を掛けられたのだと理解した。


 「回復魔法を掛けたのですが、ちゃんと効いています?」

 「え?ええっ、助けていただいた上に、回復魔法を掛けていただいて、重ね重ねお礼を申し上げます。」


 春歌の問いに、騎士は丁重に礼を返す。どうやら春歌の魔法は問題なく発動して効果もちゃんとあった様である。

 それを踏まえ、春歌はもう1つの実験をしようと馬車の付近に倒れている騎士達の方を見た。

 パッと見た上では、どの死体も剣で斬られたり、刺されたりした様で綺麗な状態である。

 これから使う魔法がどういう状態の死体まで蘇生可能か分からないが、最初の実験としては良いだろうと思い、春歌は「三精霊王の杖」の杖の杖尻を地面に刺して魔法を発動させた。


 「「「!?」」」


 春歌からあふれ出す凄まじい魔力に、騎士達は何事かと目を見開き、再び警戒した様子になる。

 光一は春歌の様子を黙って見ており、そして春歌は「三精霊王の杖」を勢いよく引き抜いて、天に掲げ複数の死者を蘇生させる魔法スキルの中で最上級魔法である「オール・リバイバル」を発動させた。

 春歌を中心に大規模な魔方陣が現れ、それが輝いたと同時に騎士達の亡骸に光が注がれていき、やがて魔法陣が消えていった。

 騎士達は何をしたのかと追求しようとした時、騎士達の亡骸全てがうめき声を上げて、目を開いたり、頭に手を当てながら上半身を起こしたりしたのである。

 これには生き残っていた3人の騎士達は驚きのあまり声も出ない。

 そんな様子を尻目に光一は春歌に声を掛けた。


 「「オール・リバイバル」も問題なく使用できたみたいだね。」

 「はい、これで私の回復魔法も蘇生魔法も使用が確認できたので、お兄様が必要な時はいつでも掛けてあげますね♪」

 「ははっ、その時は頼むよ春歌、じゃあ、今度こそ行こうか。」

 「はい♪」


 光一達が今度こそモンスター達に乗ろうとした時、光一達に助けられた礼をした騎士がそれを止めた。


 「お、お待ちくださいませ!仲間達を助けていただいたご恩はおろか、まだ野盗達から助けられたお礼もしてりませぬ。どうか我等が主の屋敷までご同伴くださいませんか!」

 「あ、いや、気持ちだけ貰っておきますから結構です。ありがとうございます。」


 光一としては領主と会うなど厄介にしか思わなかったので、きっぱりと拒否したのだが、相手も面子があるのかどうか知らないが、ガンとして引こうとせず、若干だが内心でしつこいと思った光一だった。

 すると次の瞬間、「ケルベロス・ロード」から凄まじい殺気が放たれ、騎士は悲鳴こそ上げなかったが、息を飲んで動きが固まった。

 その様子を見ながら光一は「ケルベロス・ロード」をポンポンと叩くと、殺気がなくなった。

 しかしもはや光一達を引きとめ様とはせずに、光一達がモンスター達に跨るのを止めはしなかった。


 「では、僕達は目的地に行く途中なんで、行かせていただきますね。」

 「ど、どうぞ、色々とありがとうございました。」


 騎士は引きつった笑みを浮かべながら素直に通した。


 「では春歌、少し寄り道したけど能力テストにはなったので無問題だ!さぁ、今度こそ首都へと出発だ!」

 「はい、お兄様♪」

 「ではいざ出発~」


 光一の掛け声と共に光一達が跨っている2体は答える様に鳴いて動き出し、あっという間にその場からいなくなった。

 その場には呆然とそれを見送った騎士達だけがそこにいたのだった。

 

ある意味では能力の再確認の話でもありました。

そういえば馬車に乗っているお嬢様の話は全然なかったな・・・。

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