第43話 依頼の報酬をもらうために「グームリー」を目指して冒険に出る。
この話で第三章は終わりとなります。
後は幕間を入れて第4章になります。
「それで光一さんはこれからどうするつもりですか?」
「まぁ、今すぐ、この「シスコ」から旅立つなんてことはしないかな。」
「まぁ、そうでしょね。」
アニエスは光一の言葉に頷いた。ちなみにパーティーに加わると言う事でアニエスは光一の呼び名を緋村さんから光一さんに変えた。
「とは言え、ここでの目的はもう果たしたからいる意味がないんだよね。」
「そうですか。」
「だから、これからどうしようかな。春歌やエリスは何か目的地がある?」
光一の問いにエリスはしばし考えたが、これと言ってなく首を横に振った。春歌は「う~ん」と首をひねりながら考えているとふと何かを思いついた表情になった。
「お兄様、目的地がないなら、一度マーハード王国の首都「グームリー」に戻りませんか?」
「マーハード王国の首都「グームリー」?別にいいけどなんかあったっけ?」
「アデス山脈のドラゴンキメラの件でギルドからまだ報酬を受け取ってないじゃないですか。」
春歌の言葉に光一は「そういえばそうだったな。」と納得した。
光一と春歌がフリーダムファンタジープレイの世界にプレイヤーキャラとなってこの世界に来て、しばらく滞在して、冒険者となり色々な依頼をこなし、そこそこの騒ぎも起こしたのが「グームリー」である。
そして光一と春歌がこの世界での生きていく目的である「素敵な”出会い”を求めて冒険に出る」と言うのを得たのが、冒険に出る前に受けた最後の依頼がアデス山脈の異変を調査すると言う強制依頼で、光一と春歌はその依頼の報酬が支払われるのにいささか時間が掛かると聞いて、受け取る事なく素敵な”出会い”を求めて冒険に出たのである。
今ならば行っても報酬が決まっているだろうから、春歌の言う通り受け取りに行くのもいいだろう。
他にこれと言って目的がない光一は、春歌の案に従ってマーハード王国の首都「グームリー」に戻る事にした。
「シスコ」を旅立つのは明日と言う事で、今日もそれぞれが自由に行動と言う事で、光一は一応、世話にはなった冒険者ギルドに一言礼を述べようとギルドに向かった。
行く道中を見ると、街の住人の数は今もほとんど変わっておらず、海賊に荒らされて損壊しているところもあったが、初めて「シスコ」を訪れた時のような重苦しい雰囲気はなく、明るい様子だった。
そんな様子を感じながらギルドを訪れると、相変わらず人はおらず、奥にいるギルド長ネイムが光一に気付いて受付へとやってきた。
「あら、いやっしゃい。町を救った英雄様がこんな寂れた冒険者ギルドに何か御用かしら。」
おどけた様に少し自虐も入れて出迎えたネイム、最初来た時も自虐しながらの紹介だったので、案外こういうのが好きなのかもしれないが、光一は別段、これと言った反応もせずに「どうも」とだけ返した。
その様子にネイムは
「何ともつまらない反応ね。まぁ、いいけど。それでギルドに何か用かしら?」
「明日、この「シスコ」を旅立つので、一言挨拶をと思いまして。」
「えっ!?もう旅立っちゃうの!?町の人達は「シスコ」の脅威が無くなったのが、ようやく実感できたのか、みんなでお祝いしようと準備を始めたのに、肝心の主役がいなくなっちゃったら、盛り上がりも何もないじゃない?!」
「そうですか。それはまた何とも。」
「それはまた何ともって・・・その旅立ちって明日じゃなければいけないわけ?」
「そういう訳ではありませんが、僕達も僕達でぜんは急げと言いますから。」
「そういう訳ではならって、それなら別に明日じゃなくてもいいじゃない。町の皆も大いに宴を開こうとしているから参加してよ。」
「僕達は結構ですから。」
「・・・あのねぇ、町全体で開こうとしている宴は君達がいないと盛り上がらず、困ると言ってるの。町のためと思って参加して欲しいのよ!」
「別に僕達がいなくても宴は盛り上がりますよ。それに町の脅威はちゃんと祓ったのだから非難されるいわれはないでしょう。それともそれに何か不服でもあるんですか?」
光一が少し威圧しながら睨む様に見ると、ネイムはビクッと一瞬身体を震わせ、無意識に一歩下がった。
そして慌てた様に否定した。
「な、ないわよ。わ、分かったわ。無理強いを言ってごめんなさいね。」
「いえ、理解してくれれば別にいいです。」
光一の反応にネイムは内心で色々な意味で大きく息を吐いて何気を装って尋ねた。
「と、ところで旅立つと言うけれど、どこに行くつもりなのかしら?」
「マーハード王国の首都「グームリー」です。」
光一の出した地名にネイムは表情をいささか曇らせた。それに気づいた光一が尋ねた。
「「グームリー」に何かあるんですか?」
「・・・いえ、「グームリー」自体に何かわけじゃないんだけれども、「グームリー」の南西にある大きな平原で今、王国軍と魔王軍が戦闘をしており何と勇者も王国軍に参戦しているそうよ。」
「へぇ、勇者も参戦しているんですか。なら王国軍の勝利に終わるのでは?」
光一はそう言いながらも内心では、そういえばゲームの「フリーダムファンタジープレイ」でもゲームをある程度進めていくと、そんなイベントが起きたなと思い出していた。
光一の内心などネイムに分かるはずもなく、ネイムは光一の問いに首を横に振り、
「勇者が参戦していてもどうやら旗色は若干悪い様で「グームリー」も厳重警戒態勢になっているそうよ。王国の冒険者ギルドも国内にいる上級冒険者は全て強制依頼で駆り出し、国外からも冒険者や傭兵を募集しているわ・・・。」
そこまで言ってからネイムは光一をまじまじと見て、しばし思案してから「なるほど、そう言う事。」と勝手に一人納得した。
そのネイムの様子に思わず光一は「あの、何か?」と尋ねると、
「いえ、あなた達が急いでここを旅立つ理由が分かっただけよ。なるほど確かに「グームリー」の状況を考えたら募集に応募しようと思うのは当然よね。あなたや妹さんの技量を考えたら参戦しても問題ないし、うまくいけば大活躍して王国から莫大な報酬ももらえるかもしれないんだから、ここでのんびり宴に参加しているわけにはいかないわよね。」
自分で言ってうんうん頷きながら納得するとネイムは光一を見、
「町の人達からは私が伝えておくわ。あなた達は「グームリー」に向かって、マーハード王国の危機もこの「シスコ」を救った様に、何とかしてあげて。あなた達ならできるわ。」
「は、はぁ、善処はします?」
ネイムは光一の返答が疑問形に聞こえたが、気のせいだろうと思い、「ご武運を」と言って光一を見送ったのだった。
光一は内心で話がかみ合っていないなと首を傾げたが、余計な事を言って話がこじれるのが面倒だったので、何も言わずに冒険者ギルドを後にするのだった。
それから光一は「シスコ」の町を一回りして教会に戻ると、教会の子供達が光一達に対してささやかだがお礼のパーティーを開いてくれ、光一としても満更悪くもなく楽しめたので、「シスコ」の町を旅立つ前の催し物としては十分だった。
そして次の日、光一達は教会で朝食を済ませると、準備を整えて「シスコ」から出るための出入り口に来た。
その後ろには見送りとしてきたアニエスの分身体やメイや教会の子供達がおり、光一が代表としてアニエスに礼を述べると、
「いいえ、こちらこそ私達の住む「シスコ」を救っていただき、誠にありがとうございました。」
「皆さんには本当に色々とお世話になりました。これからの旅にも女神様のご加護がある様にお祈りいたします。」
アニエスに続いてメイはそう言った後、少しだけ光一に近づくと小声で「アニエス様の事もよろしくお願い致します。それといくらそういう約束とは言え、あんまりアニエス様にエッチな事を要求してはいけませんよ!」と呟いてきた。
どうやら、メイもにもアニエスは光一のパーティーにもハーレムに入る事も理解している様だった。
「緋村の兄ちゃん、おいらたちの町を救ってくれてありがとー!」
「またきてねー!!」
「冒険、がんばってねー!」
教会の子供達もそれぞれに別れの挨拶を言い、光一達はそれを受けながら「シスコ」を旅立った。
それから徒歩で歩いていると春歌が「それでお兄様、いつからアニエスさんは合流するんですか?」と尋ねたところで、「いえ、もう合流してますよ春歌さん。」という声が光一の頭上から掛かって来た。
上を見上げたところで、翼をはやし、空を飛んでいたアニエスが春歌のすぐ隣に着地した。
「では皆さん、今からパーティーに加わる天使のアニエスです。世のため民達のために頑張りましょう!!」
自己紹介と共にそう宣言したアニエスにエリスは「は、はい!頑張ります!!」と反射的に返したが、光一と春歌はそれには反応せず、
「つい先ほど別れの挨拶をしたのに、一緒に冒険をするのって変な気分・・・。」
と春歌は少し首を傾げ、光一はこれで本当にアニエスを仲間にしたんだなと少し感慨にふけっていた。
こうして上級天使のアニエスを仲間にした光一と春歌は以前達成した依頼の報酬をもらうためにマーハード王国の首都「グームリー」に戻る事にしたのだった。
余談だが、「シスコ」の町の住人達は光一達がもう既に冒険に旅立った事をネイムから聞かされた時、驚きと共に普段からあのような服装をしているだけあってやっぱり”カブキモノ”だなと納得し、その後のマーハード王国での魔王軍と王国軍の攻防と今の情勢をネイムから伝えられ、ネイム同様に勘違いした「シスコ」の町の住人達は”カブキモノ”だけど根はやっぱり英雄なんだなと感心され、無事を祈られたという。
これを光一と春歌が聞いたらどのような表情になったかは想像に任せようと思う・・・。
何とか想定していた期間内に投稿する事が出来ました。
でももっと頑張れ我!!




