第36話 「シスコ」のギルドに行く。
遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。
今年も「ゲームの世界に義妹と来たので、素敵な”出会い”を求めて僕らは二人、冒険に出る。」をよろしくお願いいたします。
光一が朝起きて、身支度を整え、部屋を出て春歌やエリスの部屋のドアを叩くと返事が返って来たので、二人とももう起きている様だった。
二人が部屋から出てきて朝の挨拶をしてくるので、光一もそれに返してから3人で食堂に向かった。
食堂へ向かう途中、昨日は寝れたかなどのたわいのない事を多少しながら歩いていると食堂に着いた。
食堂では昨夜と同じ子供達がメイの手伝いをして朝食の手伝いをしており、光一達の姿を見ると一斉に挨拶してきた。
『あ、おはようございます!』
「お、おはようございます。」
「・・・おはようございます。」
「おはようございます皆さん。」
順に春歌、光一、エリスと子供達に挨拶を返すと、料理をしていたメイも奥から姿を見せた。
「おはようございます。皆さん、昨日はよく眠れましたか?」
「ええ、ぐっすり寝さしていただきましたよ。ね、春歌、エリス?」
朝の挨拶と共に尋ねてきたメイに光一は肯定の返事を返すと春歌とエリスにも同意を求め、二人とも頷いた。
「それはよかったです。朝食も今、出来たところですよ。」
そう言ってメイは朝食を乗せた皿をそれぞれの席に置く様に子供達に頼み、子供達は皿を手にしてそれぞれの席に置いた。
そこにアニエスも姿を見せた。
「皆さん、おはようございます。」
『おはようございますシスター!!』
「おはようございますアニエス様。」
「・・・おはようございます。」
「おはようございます。」
「お、おはようございます。」
アニエスの挨拶に子供達は元気よく、メイは敬う天使で上司だからか丁重に、光一は子供達のアニエスの呼び方から、そういえば子供達もアニエスを天使じゃなくシスターとして認識していたなと思いながら、春歌は普通に、エリスは天使だからと言う事で、少し気後れしながら挨拶を返した。
アニエスはそれを嬉しそうに聞くと、光一達に昨夜は眠れたかを聞いてきた。すでにメイに答えたんだけどなと思いながらも、メイに答えた事をもう一度言う光一。
それを聞いてアニエスも安堵した表情を見せ、それからそれぞれが自分の席について朝食を食べた。
「冒険者ギルドに行って、教会の依頼を受けた事を伝えて欲しい?」
朝食を食べた後、食事休憩もかねてアニエスに自分達は何をしたらよいのかを尋ねたら、光一にそう返してきた。
「はい、ギルドを通さず、直接依頼をした事もギルドに伝える事になっていますから。そうでないと後々、トラブルなどが起きた場合、面倒な事になりますから。」
「面倒な事とは?」
「ギルドを通さず直接依頼を受けた冒険者が依頼をこなしている過程で、ギルドを通して受けた依頼を受けた冒険者と鉢合わせして、トラブルになった場合、ギルドの依頼を受けた冒険者は正式な依頼遂行者として証明されるのですが、ギルドを通していない場合、それができないので最悪、犯罪者等と勘違いされてもそれをすぐに証明できないので、依頼者、そして依頼を受けた冒険者も潔白を証明するのに多大な時間と労力がかかるので、それを回避するためにも私が直接依頼をした事も教会が依頼した事としてギルドに伝えてきてください。」
アニエスの説明に光一達はなるほどと頷いて、いったん部屋に戻って装備を整えてから教会を出た。
「シスコ」の冒険者ギルドは中央大陸北部にある自由都市アーベルの冒険者ギルドよりもいささか小さかった。
それどころか中に入ってみると人っ子一人おらずガランガランである。
「・・・誰もいませんねお兄様。」
「誰もいないですね御使い様。」
「うん、誰もいないね二人とも。」
「失礼ね。ちゃんとここにいるわよ。ひくっ」
声がした受付の奥の方を見ると随分と露出が激しい服装の20代中頃の外見をした犬耳が特徴の獣人の女性がそこにいた。
強調された大きな胸に肌が見える腰周り、そして短いスカート、どう見ても露出狂の痴女である。
その痴女は他の職員の机よりもいささか大きい机の椅子に座って、豪快に酒瓶をラッパ飲みしていた。
周りには今までの間に、この女性が飲んだと思われる空の酒瓶が無造作にいくつも転がっている。
ゲームではこういう展開はなかったが、この目の前の犬耳痴女は知識で知っていた。
「ここは冒険者ギルドで、あなたはここの職員の方ですか?」
「そうだけど、お貴族様方が滅びかけたの街のこんなしけた冒険者ギルドに何の御用でしょうか?ひくっ」
顔を赤くし、完全に出来上がっており、光一の質問に自虐気味に言う女性。
光一がこの服装は完全な個人の趣向で貴族でなく冒険者である事を伝えると、
「あんたら、冒険者ならそれらしい恰好をしなさいよ。まぎらわしい、ひっく」
と文句を言ってくる女性。その言葉に光一はいささかムッとなり、あんただった痴女だろうがと口には出さなかったが、内心で吐き捨てた。しかし、
「あなただって職員なのに痴女の恰好しているじゃないですか!」
と春歌が声に喰ってかかった。思わず光一は「何言っちゃってんの春歌?!」と突っ込み、案の定、女性もいささか不快な表情になった。
「誰が痴女よ!これはわたしのれっきとした私服よ。それに男どもは喜んでくれるのよ。それが分からないなんて所詮は”ガキ”ね。」
女性の言葉に春歌はさらに何か言おうとしたが、その前に光一が面倒な事態にならない様に慌てて修正を図った。
「あの、先程、冒険者ギルドと言ったのですけど、その肝心の冒険者が誰もいないんですけど?」
「はん、いるわけないでしょう。あんた達はこの街の事、聞いていないのかしら?」
「魔王軍とシーサーペントと海賊が同時に攻めてきて、守護天使様は敗北寸前で、街は存亡の危機だとは。」
「そう、それで合ってるわよ。そんな訳だから上級冒険者はこの街のお偉いさんや金持ちが資産などを持てるだけ持って別の街にずらかる時に護衛などで雇ってたわ。下級冒険者達も大半が海賊もそうだけど魔王軍とシーサーペント相手じゃ勝ち目がないと逃げてったわよ。上級下級問わず何人か勇敢な冒険者もいたけど、そんな人達は皆、殉職したわ。わずかに下級冒険者が残っているけど、彼らは今、この「シスコ」に物資を運ぶために別の街に行っているわ。」
「・・・街のえらいさんも逃げたなら、現在、誰がこの街を纏めているんですか?」
「私と教会の昔からいるシスターアニエスが相談しながらなんとかまとめていると言うのが実情ね。もっともそれもいつまで続くかわからないけど・・・。」
「あなたは逃げないんですか?」
「・・・ギルドマスターである私まで逃げたら「シスコ」の冒険者ギルドは終わっちゃうでしょ。」
光一の質問に女性は睨みつける様に見ながら答えた。
だが光一と春歌はたじろぐ事無く、むしろ女性の言葉に内心でやはりギルドマスターだったかと自分達の知識通りで喜んだが、エリスだけは女性がギルドマスターである事に驚いたらしく「あなたはギルドマスターなのですか?」と思わず尋ねた。
「ああ、そう言えば名乗っていなかったわね。私はこの「シスコ」の冒険者ギルドのギルドマスターのネイムよ。」
ゲームの知識通り、このネイムと名乗った犬族の露出狂の痴女こそ「シスコ」の冒険者ギルドのギルドマスターだった。
と言ってもゲームにおいては「シスコ」の冒険者ギルドで上級のクエストをこなすかアニエス、メイのイベントクエストを進めると出てくるが、それ以外ではゲーム内でプレイヤーが関わる事はないので、まぁ、そういうキャラが一人いるぐらいである。
だから光一と春歌もそれ以上の事は知らないと言うのが実情だった。
「それであなた達はは冒険者ギルドに何しに来たのかしら?」
「教会のシスターアニエスの直接依頼で魔王軍やシーサーペント、海賊を倒す事になったのでその報告をしにきました。」
「は?」
ネイムは全く思ってもなかった要件に思わず目を丸くした。
「ごめんなさい。今、あり得ない人物から随分とおかしな事を依頼された様に聞こえたのだけれども、もう一度言ってくれないかしら。」
「だからシスターアニエスに魔王軍やシーサーペント、海賊を倒してほしいと言う直接依頼を受けたので、その報告に来たんですけど。」
「・・・聞き間違いではないようね。何?あなた達って実はSかAランク冒険者なの?」
「いえ、Eです。」
「・・・本当にシスターアニエスがあなた達にそんな無理難題を直接依頼したの?」
「ええ、今すぐ確認をとりに行ってくれても構いませんよ。」
「・・・そこまで言うなら本当みたいね。いいわ。普通なら絶対受けないけど、シスターアニエスが直接依頼したのならば承認する。じゃ、ギルドカードを出して。」
「僕と春歌は冒険者ギルドに登録してるんですけど、エリスは登録してないので持っていないんですけど。」
「あら、そうなの?じゃあ、そこのエルフさん、料金掛かるけどあなたも冒険者登録する?」
「あ、じゃあお願いします。」
ネイムにギルドカードを渡すと、まず、エリスに冒険者ギルドに登録するための用紙を渡し、ネイムは自分の机で光一と春歌のカードを見ながら書類を書いている。
しばらくして書類を書き終えたネイムがギルドカードを返し、それを受け取った光一は、エリスが書いているのを待ちながらふと思った事を尋ねた。
「そういえば先程、シスターアニエスが直接依頼したのならばと言っていたのですけど、それってどういう意味なんですか?」
「言葉通りの意味、シスターアニエスはああ見えてこの街では随分昔から教会に赴任しており、発言権は強いのよ。それで私がギルドの新人職員の時からの色々お世話になった上に、今も色々と相談にも乗ってもらってるのよ。それで冒険者ギルドにも度々訪れてもらってるんだけど、その際に冒険者に対して実力以上の依頼をこなそうとすると、必ず止めに入ってるのよ。”もっと身の丈に合った依頼をこなしなさい”とね。
シスターアニエスは人の技量を見る目は本物だから、実力以上の絶対失敗する依頼を受けさせない様にするし、逆にこなせるのであれば下級冒険者でも上級冒険者が受ける依頼を進めていたわ。
それは今の状況になっても同じ。だからシスターアニエスがあなた達に魔王軍やシーサーペント、海賊を倒してほしいと言う直接依頼を出したのなら、あなた達はそれがこなせると判断したからよ。だから承認したと言う訳。」
ネイムの説明に光一と春歌、書類を書く手を止めてい聞いていたエリスもなるほどと頷いた。もっとも光一は神造兵器である神刀「破邪」や「三精霊王の杖」を所持しているのも理由だと思いますけどねと内心思ったが声には出さなかった。
それから間もなくエリスも書類を書き終え、登録手数料も払いギルドカードを発行してもらい、光一達のギルドでの用件は終わった。
「じゃあ、シスターアニエスの直接依頼は承認したわ。シスターの目が曇ってない事を是非とも証明して欲しいわね。ギルドマスターとしてもこの街の住人としても私個人としても。」
「ええ、全部、倒して見せますよ。」
「期待してるわ。ご武運を!」
最後にネイムの激励を受けて光一達はギルドを後にした。これでこの「シスコ」の騒動の元凶達と問題なく戦えるようになったのだった。
少し遅くなりましたが、今年度最初の投稿です。




