第30部分 第28話 いざフタを開けて光一達とドラクニアナイツ2人が激突したら・・・
今回は普段よりも早めに投稿できました。
それと話数を数えると今回で30話目になります。
どっちも我的には嬉しいです。
「破邪」を正眼に構えて、ドラクニアナイツ、カズイクル・ベルリングと対峙する光一。
同じ様にカズイクルも愛用の両刃剣を正眼に構えてにらみ合いながら対峙していたが、背中から冷や汗が流れていた。
自身が知る限りの戦術で光一と斬りあうイメージを浮かべても、必ず自分が斬り殺される姿がハッキリとイメージ出来たからである。
勝てる相手ではないと思っていたが、これ程とはな・・・。カズイクルは内心、そう思いながら自分達の本当の目的である現段階での改造体の戦闘データを持った研究員達を逃がすための隙を作るために必死に光一とにらみ合った。
一方、春歌とアンナ・キムイノは既に戦いを始めており、まずは小手調べのつもりか初歩魔法の打ち合いの応酬となっていたが、瞬く間にアンナが劣勢に追い込まれた。
「ぐううううっ、ふ、ふざけてんじゃないわよ!まさかここまでの差があるなんて笑えないわ!!」
春歌の打ち出した純粋に魔力をぶつける初歩魔法マジックアローを、アンナは防御魔法である「マジックシールド」で何とか防いだが、その衝撃で弾き飛ばされそうになるのを、歯を噛み砕かんばかりに噛み締めて、身体に力を込めて耐えたが、思わず苦悶の声を上げ、今の現実に悪態を突かずにはいられなかった。
魔法の撃ち合いをし、その身をもって理解出来たことだが、アンナよりも春歌の方が威力もそうだが、魔法詠唱の速さ、対象に当てる精度、使用できる魔法の種類、保持している魔力量、魔法使いのすべての面において春歌の方が桁違いに上をいっている。
見た感じ自分と同じ様に魔法やその他の技術を使用して老化を抑えて長く生きている様には見えず、見た目通りの年齢で、ドラクニアナイツに名を連ねる自分よりも魔法使いの技量が遥かに上をいっている春歌にアンナは信じられない気持だった。
こんなふざけた存在が相手じゃ相手の隙を突く前に私の方が殺られちゃうわよ!!アンナは内心、叫びたい気持ちをこらえながら、何とか春歌と応戦を続けたのだが、長く持たないのはアンナ自身がよく理解していた。
まずい、このままではアンナが殺られる!カズイクルは光一と睨みあいながら、ちらりとアンナの状況を確認して焦った。
アンナがこのまま春歌に討たれたら、テレポートを使える者がいなくなるので、改造体の戦闘データを持った研究員達を逃がす事が出来なくなる。
やむを得ないと思ったのか、カズイクルは「飛翔斬」を光一に放った。剣技スキルとしては初歩の「飛翔斬」だが、カズイクルほどの使い手が放てばそれなりの威力となるが、当然の事ながら光一にはあっさりと防がれてしまったが、カズイクルもそれは想定内で、狙いは「飛翔斬」を受けて光一の注意が僅かとはいえカズイクルからそらす事だった。
その隙をついてカズイクルは近くにいた部下の一人に、サイクロップス改造体を突撃させる様に目で合図した。
カズイクルの指示を受けた兵は初歩魔法のファイヤアローを兵士から見て右斜め前に設置され今は半分崩れかけていたテントに向けて放った。
この光景を見たエリスを始めとしたエルフ達は、敵の兵が味方の拠点の1つをいきなり焼き払う光景に一瞬、そちらに気をとられ、何人かはその隙を突かれたりしたが、光一と春歌は驚く事なく目の前の敵から意識をそらす事は無かった。
と言うのもゲーム「フリーダムファンタジープレイ」エリスの最初のイベントクエストのボス戦でカズイクルかアンナのどちらかもしくは両方のHPをある程度減らすとこのイベントが起き、焼かれたテントの中からハイ・オーガ改造体が現れ、戦闘がハイ・オーガ改造体を含めてのバトルになるのである。
しかしこの現実世界ではハイ・オーガ改造体はすでに登場しているので、何が出てくるのかとの懸念はあったが・・・。
そして光一や春歌が知っているゲームの展開の様に焼かれたテントの中から一体の怪物が出てきた。ハイ・オーガ改造体よりも一回り大きく、身体の一部から骨の変異したものと思われるモノが体内から突き出ていたり、皮膚と思われるものが変異し固くなっていたりしているが、もっとも特徴なのが頭部の中央に大きな目が1つある事、右腕が丸太の様に大きくなっており、手の爪も鋭く伸びている、そして左腕は右腕よりも細いが、ところどころ変異しており、その手にはそれなりの長さの鉄棒が握られていた。
このモンスターがもともと上位のモンスターであるサイクロップスを改造したサイクロップス改造体であり、本来はエリスではなくベイルガルド・ドラクニア帝国関連のイベントクエストを始め、物語の中盤から後半に登場する存在である。
無論、強さもハイ・オーガ改造体よりもけた違いに強く、プレイヤーが操作するキャラをしっかりと能力を上げておかねば、かなりの強敵となる敵だった。
両腕を上げて大きく上半身を威圧する様に動かしながら、大きな声で叫ぶサイクロップス改造体にその場にいた者のほとんどが動きを止め、目が釘付けとなった。
エリスを含め「フォートウッド」のエルフ達はサイクロップス改造体の登場に驚愕で動きが止まってしまったが、帝国側の兵士達もそれは同様だった。
カズイクルやアンナの側近達ですら、サイクロップス改造体の異様から発せられる威圧に飲まれてしまっている。
そんな中、サイクロップス改造体は一番近くいた「フォートウッド」のエルフの戦士達に向かって駆けだした。そして握っていた鉄棒を振り上げ、そのままエルフ達に向かって振り下ろそうとした。
エルフ達は威圧に飲まれて一瞬の行動が遅れ、このままではサイクロップス改造体の一撃を交わす事が出来ずに受けてしまうだろう。
こんな怪物の放つ勢いをつけた一撃なので、直撃をしたら即死だろう。エルフ達の表情が恐怖に歪み、その光景を見てエリス達も悲痛な表彰となった。
その逆に帝国側は活気づき、アンナは愉悦の入った笑みを浮かべ、カズイクルも内心で光一と春歌、そして他のエルフ達の注意を僅かでも引き付けて隙を作れるだろうと安堵の息を吐いた。
しかしそこに、
「ケルちゃん、殺れ!」
「ドラゴンさん、殺っちゃって!」
光一と春歌がそれぞれの召喚モンスター「ケルベロス・ロード」と「ライトニング・ホワイトドラゴン」に指示を出すと、2体はエルフ達に襲い掛かろうとしていたサイクロップス改造体に襲い掛かり、「ケルベロス・ロード」が覆いかかる様にしてサイクロップス改造体を押し倒し、3つの頭がそれぞれサイクロップス改造体に噛み付いた。
そこに「ライトニング・ホワイトドラゴン」がやってくると同時に「ケルベロス・ロード」の3つの頭がそれぞれ噛み付いていた部分を噛み千切って素早く倒れているサイクロップス改造体から離れた。
その直後、「ライトニング・ホワイトドラゴン」が口から雷撃を放ってサイクロップス改造体は悲鳴を上げる間もなく真っ黒焦げの死体と変わり果てた。
『は?』
この光景に光一と春歌以外は呆然とするしかなかった。
特にサイクロップス改造体の性能を知っているカズイクルやアンナ、製作に関わった研究員や兵達は最上級モンスター2体が相手では勝てないとは最初から分かっていたが、そこそこは粘れるだろうと思っていたのに、瞬殺されるとは予想外にも程があった。
そしてこれがカズイクルとアンナの運命を決定づける致命的な隙となった。
光一はカズイクルが自分から注意をそらし、思考が停止したのを見るや一気に駆け寄り「破邪」で斬りかかった。
「!!」
カズイクルは何とか自分の手にしている剣で「破邪」を受け止めたが、その衝撃が全身を襲う。「ぐううっ」とうなり声のような声を出しながら全身に力を入れて耐え、光一と鍔迫り合いをした。
が、ほどなくして刃をはじき返しながらお互い数歩下がると後は剣撃の応酬となった。お互い見事な剣技の応酬に、それを見ているエリスを含むエルフ達も、帝国の兵達も固唾を飲んで見ていたが、決着はいきなり訪れた。
カズイクル自身も押され気味であったが、さすがはドラクニアナイツに名を連ねる一騎当千の強者だけあり、まだ十分に戦えたのだが、カズイクルの剣の方が限界を超えて折れてしまったのである。
カズイクルの剣は帝国でも皇帝帝国皇帝直属の最精鋭部隊が持つだけあり、帝国内の人間、エルフ、ドワーフ、龍人族など鍛冶師や技術者等が集められて造り出された剣だけあり、切れ味、強度どれも優れた一級の剣なのだが、今回ばかりは相手が悪かった。神造兵器である「破邪」の前ではどうしても劣ってしまう。
「?!」
剣が折れて驚きと動揺に一瞬動きが止まったカズイクルに光一は、スキル「ミネウチ」を発動させてカズイクルを殺さない様にしてからドラゴンキメラに大ダメージを与えた雷魔法を使用した魔法剣技の最上級技の1つ「雷龍連撃斬」を叩き込んだ。
「雷龍連撃斬」をまともに受けて全身から焦げた煙を上げながら、カズイクルはうつ伏せに倒れた。手にしていた折れた剣も手放しており、完全に気を失った様である。「ミネウチ」の効果もあり、息はあった。
これを見て焦ったのはアンナである。
「ちょ、ちょっと!あのカズイクルがこんなにあっさり負けるなんて聞いてないんですけど?!」
もはや事態が決まったも同然の事になった事か、それともその技量をよく知る相方があっさり倒されてしまった事による恐怖か動揺か思わず叫んだアンナの声は震えが入っている。だが、アンナもドラクニアナイツに名を連ねるだけあり、感情は制御出来ていないが、今自分がすべき事を即座に判断し、現段階での改造体の戦闘データを持った研究員達を逃がすため、テレポートを唱えようとしたところで、春歌に阻止されてしまった。
「そうはいきませんよ!!シール!!」
兄の光一がカズイクルをあっさり倒したのを見て震えた声で叫んだ後、何か魔法を唱えようとしたアンナに対して春歌はスキルや魔法を使えなくする封印魔法「シール」を無詠唱で発動させてアンナに掛けた。
「フリーダムファンタジープレイ」において封印魔法「シール」が掛かるのは術者よりも魔法技量も含めて総合スティタスが下の者だけであり、総合スティタスが低ければ低いほど「シール」が掛かる確率が高くなり、この現実となった世界でも春歌とアンナの総合スティタスの差は春歌の方が遥かに上なので、問題なくアンナに「シール」が掛かったのだった。
「!?えっ!どういう事!?」
テレポートの詠唱をし魔法が発動し始めていたところに、いきなり魔法が消滅し、呪文を唱えても何も起こらない事に混乱するアンナ。
が、すぐにこれがシールによるスキルと魔法が使用不可の状態になった事に気付き歯噛みした。アンナにとって一番、恐れていたことが魔法を使用できない状態にされる事で、そうならないためにも遥か格上の春歌に対し無謀にも攻撃魔法の応酬をしていたのである。
カズイクルが敗れたことにより、研究員達だけは是が非でも逃がそうと焦って目の前の春歌を無視してテレポートを唱えようとした事が仇となってしまったのである。とはいえあのまま春歌と戦っていても敗れていただろうが・・・。
魔法もスキルも使えず、素手による肉弾戦しか戦う方法が残っていないアンナ。並みの相手ならアンナも一騎当千の強者だけに無手でも勝てない事はないが、今回ばかりは相手が悪い。とはいえどうにもならない以上、責任者として出来る事をするしかないので、せめて場を乱して研究員達を逃げる隙を作ろうと、春歌が肉弾戦が弱い事を祈りながら突撃したところで、横から光一がカズイクルの時と同じように「ミネウチ」の効果がある状態で、「飛翔剛波」を放ち、無防備な横からの直撃を受けてアンナはその小柄な身体を大きく宙に浮かして勢いよく崩れたテントへと突っ込んだ。
起きる気配がない以上、アンナも気絶した様である。
この帝国の部隊の統率者であるドラクニアナイツの2人があっさりと負け、切り札としていたサイクロップス改造体も光一と春歌が従えている最上級モンスターの2体に瞬殺された事により、残った帝国兵達は戦意が著しく低下していた。中にはもう無くなっている者も少なくなかった。
「お前達の負けだ!死にたくなければ全員降伏しろ!」
兵達の戦意喪失を感じ取った光一は、ある理由もあり兵達を威圧しながら降伏する様に叫んだ。
そんな光一の独断ともいえる行動にエルフの何人かは抗議しようとしたところで、光一や「ケルベロス・ロード」に目で制止されて、しぶしぶ黙った。
そんな光一達のやり取りをよそに兵達は持っている武器を手放して皆、降伏する事を受け入れた。
こうしてゲーム「フリーダムファンタジープレイ」のエリスの最初のイベントクエストにして、この現実となった世界において「フォートウッド」の周辺の治安を脅かすベイルガルド・ドラクニア帝国軍の戦いは光一達の圧勝に終わったのだった。
次もこれぐらいの速さもしくはそれ以上の速さで更新できるように頑張らねば!!
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