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ゲームの世界に義妹と来たので、素敵な”出会い”を求めて僕らは二人、冒険に出る。  作者: 謎の生物
まずはエルフのヒロインを求めて冒険に出る。
23/92

第21話 あの方は神もしくは精霊様の御使い様ですね。

予定よりも遅くなりましたが、何とか投稿できました。

ようやくエルフの女性の名前を出せた。

 エルフ達の間に何とも言えない重苦しい雰囲気が流れる中、春歌ののほほんとした声が響いた。


 「何だか妙な空気になっていますけど、取り合えずそこの鉄格子に囚われている人?えっとこの場合はエルフ?の方達を助けましょうよ。」


 だが、提案した春歌に、エルフ達は視線を向けるだけで動く気配がない。どうやら光一と、それに同行している春歌とそれに従っている「ライトニング・ホワイトドラゴン」に強い警戒心と恐怖により動けない様だった。

 動く気配のないエルフ達を見て春歌は光一に言った。


 「お兄様、エルフの皆様はどうやら色々とあって動く気配がないご様子なので、代わりに囚われているエルフの皆さんを助けてあげたらどうですか?」

 「あ~、まぁ、そうだね。このままでは話が進まないし・・・。」


 光一はそう言うと動く気配のないエルフ達を無視して荷馬車の荷台にある鉄格子に歩み寄った。さすがに光一が鉄格子に歩み寄ろうとした時は、エルフ達も反応して何か言おうとしたが、そこに「ケルベロス・ロード」が殺気を込めた威圧感を出して睨みつけるとまたもや黙らざるを得なかった。

 光一が鉄格子に寄ると中にいたエルフの子供達は短い悲鳴を上げて、ガタガタと震え上がり、それを同じ囚われているエルフの女性達が少しでも安心させようと抱きしめながら、光一を睨みつけたが、その瞳には明らかな恐怖が宿っており、やせ我慢というのがよくわかるものだった。

 光一は、それらを敢えて無視して鉄格子を見てぼやいた。


 「あ~、ちょっと考えればわかる事だけど、これって鍵がなきゃ開かないか・・・。」

 「だったら鍵を探しましょうか?」


 光一のぼやきを聞いた春歌があちこちに転がっている武装集団の死体を見まわしながら言った。光一はどうしようかなと思って周りを見回してみると、あちこちに死体があるが、そこから探して見つけるのは手間が掛かるのは間違いなさそうである。

 だったら、腰に差している「破邪」を抜いて斬った方が手っ取り早いだろう。「破邪」を含む「刀剣」や「槍」などの神造武器は、この世界では武器としての性能の1つである切れ味も凄まじいものがある。それに加え、この世界での光一の剣技はまさに神域の物だと断言していい。その2つの前では目の前の鉄格子など紙同然である。

 「破邪」を抜こうかと思った時、何気に自分の手を見て、ふと思いついた。この世界では光一は剣技や格闘技の技術は神域の物ものだが、それを使いこなす身体能力も凄まじいものがあり、腕力だけでも鉄格子を開けようと思えば開けれるのではないかと思ったのである。


 「・・・いや、鍵は探さなくていいよ春歌。この鉄格子はこうやって開けるから。」

 「・・・お兄様?」


 光一の様子に首を傾げる春歌。このやりとりを見ていたエルフ達も何をする気だ?と恐怖と警戒の中に怪訝の色が混じる。

しかし光一はそんな視線を意にも介さず、鉄格子を両腕でそれぞれ一本ずつ掴んだ。そして力を込めて左右に広げる様に動かした。

 最初はびくともしない鉄格子だったが、徐々に光一の力に耐えれなくなってきたのか、左右に広がり始める。

 そし全力を出すと同時に気合を入れるためにも「うっだらぁぁ!!」と叫んだと同時に鉄格子は大きく広がり、中に人間を閉じ込めておく機能は無くなった。

 この光景を目の前で見ている囚われたエルフの子供達はよりガタガタを震えだし、女性達も震え始めた。そしてこれを遠くから見ていたエリスを含めたエルフ達も目を見開いた。

 どう見ても細腕しかも筋力なんてなさそうな貴族のボンボンのような恰好をした光一が、まさか腕力だけで鉄格子を開けるとは思ってもみなかったのだろう。

 

 「もう開いたから鉄格子から出てきていいよ。」


 光一はそう言って鉄格子から離れると、エリスがすぐに駆け寄って中にいたエルフ達を助け出し、そのまま離れたところでこの状況を見ていた武装していたエルフ達の元へ向かわせた。

 囚われていたエルフの女性や子供達は、光一やその従わせている「ケルベロス・ロード」から逃げる様に武装していたエルフ達の元へ駆けた。

 取り合えず目的である囚われのエルフ達を助ける事は達成したが、エルフ達の警戒はまだ解かれていない。何故ならエルフ達を捕えていた人間の武装集団達などとは比べ物にならない未知の絶対的強者が目の前にいるからである。

 光一と春歌の近くにいたエリス警戒心丸出しで尋ねてきた。


 「あ、あなた達はこれからどうするのですか?」

 「僕達?僕達は先程言った様に、エルフの里「フォートウッド」に生えている霊樹「フォートツリー」を見ようとここまで来たので、出来れば「フォートウッド」まで案内して欲しいのですけど。」


 光一の発言にエルフ達の顔が強張った。そしてエリスが答える前に、エルフの集団の一人で、先程、光一に動かない様に命令しようとして逆に脅されたエルフの女性が金切り声で叫んだ。


 「ふ、ふ、ふざけないで!!あ、あんた達みたいな危険極まりないのを私達の里に連れて行けるわけないでしょう!!」

 「危険極まりない?何故?少なくとも僕達はあなた達に手助けはしても、ここに死体で転がっている連中の様に危害を加えた覚えはないですけど?」


 光一は不思議そうな表情で尋ねた。光一の問うている事が間違いでないのは自覚があるのか、エルフの女性は一瞬、言葉に詰まったがすぐに反論した。


 「あ、あんたの言っている事は間違って無いけど、あの人間達を怒りに任せてあっという間に皆殺しにした上に、そんな危険なモンスターを引き連れている人間を里に連れていける訳ないわ!それこそあんた達が私達の里で暴れる可能性もあるし、そんな危険性を持った人間を里に招く事なんてできないわ!!」


 どうやら彼女の目には光一は、エルフの女子供を捕えていた武装集団よりも危険極まりない人物に映っているらしい。

 そんなエルフの女性の様子に光一はやれやれと首を振った。


 「・・・どうもあなた1つ重要な事を認識できていないようですね。」

 「・・・どういう意味!?」

 「僕達がここに来たのは霊樹「フォートツリー」を見るために来たんですよ。だからもしあなた達がここで僕達を招かなくても、僕達は自分で探して「フォートウッド」に行く事になるんですよ。故にあなた達がここで僕達を招こうと招かなかろうと、僕達が「フォートウッド」に行くという結果は変わらない。これは僕と妹にとって決定事項だ!」


 光一の言葉にエルフ達は騒ぎ始めたが、光一は意に介さずに決断を迫った。


 「さぁ、どうします?僕達を「フォートウッド」まで案内してくれます?それとも拒否します?」


 光一の決断の迫りに、エルフ達はどうするべきかとしばし迷っている時だった。

 「グオオオオオッ!」と言う大きな叫び声がエルフ達の更に後ろの森の茂みから響いた。

 光一達やエルフ達、この場にいる者全員が声がした方を見ると、茂みの中から4メートルはあろうという巨体に筋骨隆々の鎧を纏った全身が薄い青色をいた人鬼のようなモンスターが出てきた。だが全身を見るとあちこちから骨の変異したものと思われるモノが体内から突き出ており、心臓らしきモノも浮き出ている。何より目を引くのが左腕で、右上に比べて倍ほどの太さになっており、手や手首と言ったものはなくなっており、そのまま先端に5本の鋭い爪が突き出ている。その姿は些か醜悪にすら見えた。

 それを見てエルフ達は驚きの声を上げ、その中の一人が叫ぶ様に言った。


 「な、何だあれは?!ハイ・オーガか!?それにしては随分と所々がおかしいが!?」


 エルフ達が驚きの声を上げるのも無理はない。目の前にいるハイ・オーガと思われるモンスターは彼らの知識のハイ・オーガとは余りにも違うからである。

 エルフの叫び声をよそに、光一と春歌も驚いてはいたが、この世界に来てから、自分達の知っているゲームのイベントと違う事が、何度も起き、それを体験していたのでそれほどの衝撃はなかった。

 故にエリス関連のイベントボス・・・・・・がいきなり現れても驚きはしても、同時にそういう事もあるかと悟りつつもあった。


 目の前のモンスターは、ドラゴンキメラと同じくハイ・オーガ、つまりモンスターを改造した生物兵器なのだが、造り主が決定的に違う。

 ドラゴンキメラは魔王軍が生み出したものだが、目の前のハイ・オーガの改造体は北の大陸の半分を支配し、「フリーダムファンタジープレイ」の世界でも大国の1つとなるベイルガルド・ドラクニア帝国が生み出したモノである。

 ゲームの設定ではエリスをパーティーメンバーの仲間に加え、好感度を上げるイベントの最後にイベントボスとして出てくる敵で、その強さはこの樹海では上位のモンスターになるハイ・オーガをより強くしたモノなのだが、ドラゴンキメラと比べたら全く大した事はない。ゲームにおいても初プレイのプレイヤーにはそれなりの強敵かもしれないが、適当にプレイして、そこそこのレベルやスキルなどの引継をした2回目のプレイヤーならばさほど苦戦するボスではない。

 故にゲームが現実となっているこの状況においても、少なくとも光一や春歌が戦うどころか「ケルベロス・ロード」や「ライトニング・ホワイトドラゴン」に戦わしても苦戦することなく難なく勝つだろう。

 

 ハイ・オーガ改造体は威嚇する様にもう一度叫ぶとエルフ達に向かって駆けた。改造されている故か普通のハイ・オーガの駆ける早さよりも早く、瞬く間にエルフ達の間合いに入り、その凶悪な左腕をエルフの一人に突き刺した。

 先程、光一が人間の武装集団を「手槍突き」で難なく貫いた様に、ハイ・オーガ改造体の左腕の爪もエルフの身体を貫いた。

 ごふっと吐血し、信じられない表情をしたまま事切れるエルフの男。その光景にエルフ達の間に動揺が広がる。

 それを意にも介さないハイ・オーガ改造体は左腕を振り払うとエルフの亡骸は大地に叩きつけられた。それを見て動揺していたエルフ達は激高してハイ・オーガ改造体に矢や魔法を放つが、改造されて身体の強度も上がっているハイ・オーガ改造体には矢が刺さったり、魔法が身体を焼いたり、斬り裂いたりしているが、致命傷にはどれも至っておらず、逆にハイ・オーガ改造体が左腕を振るう度に、エルフ達は致命傷を負わされて次々と亡骸へと変えられていく。

 残ったのは光一が鉄格子から出した女子供達と光一と口論をした女性エルフそして光一達の近くにいるエリスだけとなった。

 だが、その女性エルフも仲間達が殺られたのを見て激高し、ハイ・オーガ改造体に斬りかかったが難なく返り討ちに合い、身体を切り裂かれて絶命した。


 「ファルテッ?!」


 それを見て女性エルフの名前を呼んで絶叫し、力が抜けてへなへなと座り込んでしまうエリス。だが光一はその名前を聞いて、ああ、彼女がエリスのイベントで、エリスの友人という設定の名前だけ出てくるモブエルフかと場違いな納得をする光一。

 光一が、そんな事を思案している間に、ハイ・オーガ改造体は残った恐怖で動けないエルフの女子供達に襲い掛かった。

 

 「誰か助けてッ!!」


 子供達の一人であるエルフの女の子が思わず叫んだ次の瞬間だった。


 「ああ、いいよ。」


 光一の気楽な声と共に「閃光脚」を発動した光一の右足がハイ・オーガ改造体の頭部を吹き飛ばした。そのまま頭部を失ったハイ・オーガ改造体の身体は仰向けに倒れた。

 後に残ったのは静かな静寂だけである。生き残ったエルフ達はエリスも含めて現実感が伴っていないのか、呆然としている。

 暫くして漸く感情が追いついたのか、残ったエルフ達は生きている安堵と共に仲間達が死んだと言う深い悲しみが襲ってきた。

 子供達は泣き始め、そばにいた女性エルフ達がそれを抱きしめていた。そんな中、座り込んで友人であるファルテを死を悲しんでいたエリスが叫んだ。


 「どうしてあんなにあっさり倒せるのならば、ファルテが、みんなが殺られる前に助けてくれなかったんですかっ!!」


 それをきっかけにエリスだけでなく、子供達も泣きながら光一を罵倒した。恐らくこうする事で精神の安定を図っているのだろう。

 だが次の光一の言葉で皆、再び固まってしまった。


 「だったら仕方がないから皆、蘇生させてあげますよ。そうすればあなた達も落ち着くでしょう。」


 あまりに気楽に、それこそちょっと料理でもしようとでも言うかの様に言う光一に、エリスが激高して何か言おうとした時だった。

 光一が手をかざして、呪文を唱え始めた。魔法使いとしての技量が最高レベルな春歌ならば、これから5分ほどで蘇生魔法「オール・リバイバル」を発動させたが、魔法使いとしての技量が高レベルどまりの光一だと、それから蘇生魔法「オール・リバイバル」を発動させるまで、30分程掛かったが、魔法が発動してこの場にあるエルフ達の亡骸、ハイ・オーガ改造体に殺害されたもの、人間の武装集団に殺されたもの全てが光に包まれ、光が収まると倒れていたエルフ達が傷が癒え、息を吹き返した。

 中には頭を振りながら起き上がる者もいる。

 この一部始終を見ていたエリスを含めたエルフ達は目を目一杯に見開き、息を飲んでみていた。そして間違いなく目の前で殺されたはずのファルテが、手で頭を支えながら上半身を起こしたのを見て、光一の方を見てぽつりと呟いた。


 「そうか、彼はいえあのお方・・・・は神もしくは精霊様の御使い様ですね・・・。」


 もはや、エリスの目は神を見る者の目をしていた。

と言う訳で、光一に対してエリスが少し変な方向にフラグを立てましたwww


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