第2話
ちょっと文が長くなりましたがギルド登場です
太陽が傾き橙に空が染まる頃ユウたちを乗せた馬車は「ノーザンリーフ」の町に入り馬車専用の駐留場に到着した。
「ふぅ〜やっとついたな。長く馬車に乗ってたから疲れたぜ」
俺は馬車から降りると軽く伸びをする。
「ハァハァ…私はもっと疲れたわよ…」
エリリはなぜか馬車に乗ってたというのに息を切らせていた。
まぁさっきまで「アレがないコレがない!」って大量に馬車に散らかした私物探してたからな…
俺はエリリがしょっている少し大きく膨らんだバックをじっと見た。
「なっなによ!別にぬいぐるみとか持ってきてもいいじゃない!」
俺の視線に気づいたのかエリリは恥ずかしそうに頬を赤く染める。
「なぁ!お嬢ちゃんって見かけによらず結構な少女趣味してんだな‼︎」
「う〜おじさんまで…恥ずかしいよぉ〜…」
おっちゃんのさらなる追い討ちを受け、エリリは恥ずかしさのあまりその場にしゃがみこんだのだった
エリリ外見だけじゃなく心も大人になれよ…
両際に多くの露店がずらりと並び、市民や観光客、そしてたまに折れたみたいな甲冑を着て剣などを帯刀している冒険者やこの街の騎士などが大勢いて、賑わっているこの大通りの中
「うわっすごい人混みだな…こりゃ早々にギルドを見つけないとな…」
俺たちは駐留場でおっちゃんと別れた後この街のギルドへと向かっていた。
目的はこの付近で起きてる噂の事象に関する情報収集だ。冒険者などを管理する他にその街の周辺に生息するモンスターなども管理しているギルドだったら今回の噂の事象に関する情報もちゃんとあるはずだからだ。
「この先の十字路を右に行って!突き当たりに多分ギルドがあるから!」
おっちゃんがくれたこの街の地図を片手にエリリがそう言う。
あー本当だ少し遠くに十字路が見えるな。
「よしっ!じゃあ早くこの人混みを抜けて行くか。」
俺はエリリの手をとり少し引っ張る形で早歩きで歩き出す。
「へっ⁉︎ う、うん…」
エリリの方を向かなかったからどんな表情をしているかわからなかったが、なぜか握っている手が熱くなっているのを俺はかすかに感じた。
コイツって握ると手が熱くなりやすいタイプなのか?ーーー
「こ、ここが多分ギルドよ…」
「おっ!ここか」
俺は目の前にあるこの街でも一際大きな建物をまじまじと見上げる。
4階建てはあるとおもわれるギルドの建物は、壁は赤レンガ、屋根は黒いレンガでできていて歩いてきた道中で見てきた木造建築の建物とは違った雰囲気を出していた。
「…………。」
「んっ。エリリどうした?さっきので疲れたか?」
早速ギルドへ入ろうとした時。俺はエリリが顔を真っ赤にして俯いているのに気づく。
「えっ!…い、いや大丈夫全然疲れてなわよ!」
俺が話しかけるとエリリはわざとらしく笑顔を浮かべた。
まぁぎこちないのバレバレで誤魔化しきれてないけどな…
「そっかなら早速入ろうぜ。」
向こうが大丈夫っていうのなら無理に気にする必要はない。
俺は目の前にあるギルドの入り口に何箇所もある高価なガラス張りのドアのうち一つを開け中へと入って行く。
後ろでなんかエリリが呟いていたのが聞こえた気もしたが気のせいだと受け取っておいた。
「あそこが受付か。」
ギルドの中はどうやら入り口側の前半分は天井まで吹き抜けになっているらしくとても広々としていて、その吹き抜け部分に横にずらっと並ぶ受け付けカウンターを中心に左には冒険者などが談話できるスペースがあり、右には食堂がある。
そして夕方だからかギルド内は多くの冒険者で賑わっていた。
「とりあえず並びましょ。」
エリリはとりあえず任務の報告で受付に並んでいる冒険者の長蛇の列のうち1番自分たちから近いところに並んだ。
いつも通りのエリリだな…
いつものエリリに戻っていることに少し安堵しつつ俺もエリリの後ろに並ぶ。
時折他に並んでいる冒険者たちから少し悪寒が走るような視線を向けられてる気がしたが俺は理由がわからなくとりあえずスルーし
た。
それから並ぶこと十数分。やっと俺たちの番になった。
「本日はどのようなご用件ですか?」
黒髮黒目とこの辺りでは珍しい色をしている受付の女性が営業スマイルを浮かべながらそう言ってくる。 ちなみに容姿もある程度整ってて俺の好みの部類だった。
そんなことを思いつつ俺はこの街のギルドに訪れたのは初めてだというむねを伝える。
すると初めての人に対する気遣いか受付の女性は自己紹介をしてくれた。名前はレミアというらしく種族は人間らしい。
「レミアさんちょっとここのギルドマスターと面会をしたいんですけど…」
一通りの自己紹介を終え、俺は早速本題に入る。
今回ギルドに来たのはギルドマスターに噂の事象について情報を聞き出すためだ。
この情報によって今後俺たちがどう動くか決まるからな。
「わかりました。では紹介状をお持ちですか?」
「はい。持ってます。」
俺はカバンから丁寧に折りたたまれた招待状を取り出し渡す。
「少し拝見させていただきますね。」
レミアさんは招待状を受け取ると丁寧に開き中を確認し、それからまた丁寧に折りたたみ俺に返した。
そして彼女はニッコリと笑みを浮かべる。
「アイユーブ騎士団団長の印、たしかに確認しました。では早速マスターのもとへご案内しますね。」
「はっはいお願いします。」
やばい…つい笑顔に見惚れたわ。
それから俺たちは受付を他の人に任せギルドマスターのもとまで案内してくれるというレミアさんについていった。
ーーその時にエリリに勢いよく足を踏まれ周りの冒険者からクスクスと笑われ恥ずかしい思いをしたことはおいとくけどな…。
「ギルドマスター。お客様がお越しです。」
「おうそうか。では入りたまえ。」
レミアさんがギルドマスターの執務室のドア叩きながらそう言うと部屋の中からギルドマスターらしき人の声が返ってきた。
「失礼します。」
「「失礼します。」」
レミアさんが執務室のドアを開け中に入る。
俺たちもそれに続いて俺、エリリの順番で中に入った。
「ようこそノーザンリーフギルド支部へ。私はこのギルドのギルドマスター ジェフ•バレッドと申す。」
「私はアイユーブ守護騎士団所属ユウ•オルデシアで、こちらは連れのエリリ•テールナーです。」
正面奥の執務椅子の前に立ち笑顔を向けているこの街のギルドマスター…ジェフさんは柔和な容姿をしていてそれに合うように体格も細身の部類に入る感じだった。
俺たちは左手を斜め上に真っ直ぐ挙げるこの世界の騎士団共通の敬礼のポーズを取る。
「立ち話もなんですからそちらのソファーに座ってください。」
「ではお言葉に甘えて失礼します。」
そしてジェフさんの厚意に甘え俺たちは執務室のちょうど中央あたりにテーブルを挟んで両サイドに置かれた黒い革でできたソファーに座った。
ーー結構座りごごちがいいなこれ。
「本日はどのようなご用件で?」
お互いに座りあったのを確認してからジェフさんは早速用件を訪ねてきた。
「最近この辺りでレベル7の上級モンスターが多く出没するという噂を聞いて調査のためにこの街に来たのですが、初めて来たのでとりあえず現状を知りたくてここに来ました。」
「なるほどそうゆうことですか。しかし我々もまだ調査が難航していてそこまで情報はないですがそれでもよろしいですか?」
「いえ別に構いませんよ。情報があるないじゃないより少しでも情報があるほうが助かりますから。」
少し申し訳なさそうに話したジェフさんに対し俺は笑顔でそう対応した。
ちなみにこの世界のモンスターと呼ばれる生物にはレベル1〜10までの階級があり、レベル1〜3までを下級、4〜6までを中級、7〜9までが上級、そして最大の10が特級と区分されているが普通上級なんて例外を除けばそうそう現れないし特級なんて50年に一回出るか出ないかぐらいだ。
ーーまぁ今回の事例は例外だけどな
「わかりました。では早速お話しいたしましょう。レミア!」
「はいなんでしょう。」
「ちょっと最近の特殊事例に関する資料とノーザンリーフ周辺の地図を持ってきてくれ」
「かしこまりました。」
ドアの近くに立っていたレミアさんに対しジェフさんは今回の噂に関する資料とこの辺の地図を持ってくるように指示を出す。
そしてそれを受けたレミアさんはそれらを取りに部屋を出て行った。
それから数分後ーー
「ただいま持ってきました。」
手に何枚かの紙の束になっている資料と地図を持ちレミアさんは部屋に戻ってきてそれらを俺たちの間に置かれたテーブルの上に置いた。
「ありがとうレミア下がっていてくれ。 では騎士の方々、早速お話ししますのでまずそこに置かれた資料を見てください。」
ジェフさんはレミアさんに下がるように言うと俺たちにテーブルに置かれた資料を見るように促す。
「最初は森で遭遇したんですか?」
「はい。どうやらある親子が薬草探しの最中に遭遇したそうなんです。」
「その親子は無事だったのですか?」
「その時の報告によるとどうやら母親が元Aランク冒険者だったらしく遭遇したモンスターから無事逃げることが出来たようです。」
俺たちは資料を見て疑問に思ったことを聞き、それにジェフさんが答える。ーー
そうした形で面会は1時間ほど続き、結果俺たちはある程度の情報を得られることができた。
1つ 上級モンスターは毎日20体ずつ必ず出現するということ。
2つ モンスターは街の近くではなく国境周辺でしか目撃されていないこと。
3つ それらの掃討のためにこの街のギルドに所属するAランク以上の冒険者や騎士がほとんど出払っているせいでB以下の冒険者による事件が多発していること。
4つ ジェフさんと仲良くなったこと。
3つ目まではともかく4つ目はまぁ…ねなんか話してるうちに仲良くなったんだよね。
「まぁとりあえず現状はこんな感じだ。協力者として私は君たちを心から歓迎する。明日から存分に調査に励んでくれ。」
「もちろんだぜジェフ。」
握手をしあう俺とジェフ。お互い敬語で話すのをやめタメ口で話すようになっていた。
「なんかすごいですね…。」
「えぇ…まぁ…」
声がしたので後ろをちらりと見るとレミアさんは苦笑を浮かべ、エリリは呆れた表情をしていた。
「じゃあ俺たちそろそろ宿に行くわ」
俺は握手をしていた手を放すとジェフに宿に行くことを告げる。
とりあえず宿に行って明日からの行動を考えたいしな
「そうだなまた今度は酒でも飲みながらゆっくり語り合おう。じゃあレミア下までまた案内を頼むよ。」
ジェフはレミアさんにまた受付まで案内することを指示する。
そんな時だった
「マスター‼︎ 大変です北の街道を通っていたある馬車が例の上級モンスターから襲撃を受けているらしいです‼︎」
突然部屋に入ってきた男性職員がそんな報告をしてきたのはーーー