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記憶


 風に揺れるカーテンが。

 テーブルの上に置き去りにされた黒縁の眼鏡。

 痛いぐらいの西日。

 甘いシチューの匂い。


 悲しいぐらいに、覚えているのに。


 初めに消えたのは声だった。

 どんなに思いだそうとしても、その声の低さや甘さが、今は思いだせない。

 なんて薄情な女だろうと、どれだけ自分を責めただろう。

 声の次に色が消えて、あの日のシチューの味も忘れた。


 ただ匂いだけ。

 シチューの甘い匂い。

 首筋に鼻を埋めた時の懐かしい匂い。


 手首を切った痛みや、拳にめり込んだガラスの痛みは忘れるのに。

 匂いだけが、いつまでたっても残っている。

 いつか胸に感じる痛みにも鈍くなり、悲しくない朝を迎える日が来るとしても、その匂いだけは憶えている。

 


 

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