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第7話「俺は無敵!」

 ロキのいち押しスキル『サトリ』

 熱心に勧める奴のひとり芝居は相変わらず続いている。


「貴方を信じていたのにぃ! 外道! クズ! 最低よぉ! って泣き叫ぶ相手をよぉ、この馬鹿めぇとあざけるのは最高だろ?」


 ああ、こいつおかしい。

 完全に壊れてる……


 冷たい視線ビーム攻撃完全復活……


「ありゃ? 裏切るのは最高の快感なのにうけねぇのか? おかしいな?」


「はぁ……もうロキ様の加護は終わりっすか?」


 俺が醒めた目で、投げやりに言えば、


「いやいや、まだすげぇのがあるって! じゃあ次、お約束の魔法だな」


 おお、魔法?

 具体的に教えてください。

 しょっぱいのは、もうイヤよ。


「魔法? 何、どんなの?」


「お、これは? 俺様の上席からのご指示だ。何と! 召喚魔法だよ!」


「召喚魔法? じゃあドラゴンとか、バハムートとか派手な奴が呼べるの?」


「いやいや、も~っと派手な奴だよ。何と! この俺様がさくっと呼び出せるんだぜぇ~。これは俺様も、ちょ~幸運(ラッキー)


「は?」


「聞こえなかったのか? この俺様が呼べるって言ってるの」


「はぁぁぁ……よりによってロキ様の召喚って……今までで、いちば~ん嬉しくないっす……」


 がっかり!

 何だよ……

 微妙な能力ばっかじゃん。

 チートに期待した俺の夢と高揚感は、空気が「しゅ~っ」と抜けた風船のようにしぼんで行った。

 

 すっかり落ち込んだ俺。

 ロキが俺を見て、「にやり」と笑う。


「ふふふ、何だよ、腐りやがって。安心しな、ちゃんと落ちがあるからよ。召喚魔法はよ、俺様以外も呼び出せるんだが」


「え? 本当っすか?」


「ああ、嘘の反対! 本当だよ」


 ああ、それなら、安心。

 持ってて良かった、召喚魔法。

 使えるのなら、超が付く便利に越した事はない。


「少し、ホッとした……当分ロキ様だけは呼ばない……と思う」


「ほ~う! えらく嫌われたもんだなぁ、へへへ。たまには俺様も呼んでくれよ。最近退屈なんだぞ」


 ロキは哀願するように俺を見る。

 奴の言う通り、普段の仕事は、退屈極まりないようだ。

 

 そこで、パッとひらめいた。

 もっと凄くて使えるチートを貰うチャンス、ここが勝負なのだと。

 

 俺は思い切って、逆襲へ出る事にした。


「ふうん……退屈しているロキ様を召喚魔法で呼んであげても良いけどさぁ。代わりに俺の言う事聞いてくれるぅ?」


 俺が猫なで声に声色を変えて言えば、ロキの奴、珍しく驚いている。


「うわ! おめぇ! その声気持ちわりぃ!」


「ほっといてください」


「だがよ、おめぇは俺様以上に人の弱味を突くのが上手いな! まるで悪魔みたいじゃん」


「だって、ロキ様ったら、どうせ俺をいじって遊ぶのが良い暇つぶしなんでしょ?」


 俺が突っ込んだら、ロキの奴、苦笑している。

 ばれた? って感じだ。


「おお、太郎。おめぇ、しっかり俺様の魂胆見抜いてるな」


「いやぁ、すぐ分かりますよ。俺の事、ちくちく、いじるのは結構楽しいのかなって」


「あ~もう! めんどくせ~! 分かったよ! チートをやろう! 内容にもよるがな、仕方ねぇ、OKだ」


 OK?

 よっし、ここから俺、ブタローの反撃。

 まずは、変えてくれないと困るこれだ!


「じゃあ、まずエッチ以外にスペシャルオプションください」


「なんだい? エッチギンギンだけじゃ嫌かよ? しかたねぇ……ま、いっか」


「ま、いっかじゃないっす。当たり前です、そんなのだけあっても、ただのジゴロかヒモっす。ちなみに、今ある記憶……例えば信長の知識とかは転生しても持ち越せるんですかね?」


「あ、それはサービス、サービスゥ、問題ねぇ」


 俺はホッとした。

 歩く生殖器じゃなくなった。

 そして西洋ファンタジーの世界へ行くのなら、今迄蓄えた中二病的な知識は、ぜひぜひ活かしたいから。


「まあ良いや、せっかく剣と魔法が使える世界に行くんだから、まずは剣の達人スキルと攻防の魔法だな、どうっすか?」


 剣と魔法に万能なのは、西洋風異世界転生では最強への王道でしょ!

 幸いロキは、あっさりOKしてくれた。


「それくれぇなら問題ねぇぞ、ところでよぉ、剣は誰のスキルが良いんだ?」


 聞かれて俺は少し悩む。

 どうせ日本の剣法なんて、ロキからは「そんなの管轄外で知らねぇ」とか、

 きっぱり言われそうだ。

 

 剣の仕様だって、日本刀と西洋剣じゃあ全く違う。

 第一……俺って、西洋では誰が剣客か全く知らないから……

 中二病もけして万能じゃない。

 

 ならば、欲張りに折衷案。

 言うだけなら、タダだ。


「じゃあ、古今東西全部の武器全てが達人級に使いこなせるってどう?」


「おおっと、欲張って凄い条件を出して来たな。まあOKだ」


「OK? ありがとうございますっす!」


「ああ偉大なる神の俺様には造作もねぇ! こうなるとお前はもう無敵だぁ! 俺様最強! てなわけで俺様TUEEE状態間違い無しだよ」


 やったぁ! 最強剣士の座あっさりゲットぉ!

 更に、俺TUEEEもゲットぉ!


 思わず顔がほころぶ俺に、ロキが問う。


「で、魔法はどうするよ? 系統で選んで良いぜ、例えば光だったら回復系とかな」


「もう少し、詳しく教えてくださいよぉ。あ、それと念の為、MPじゃない……魔力の量は魔王並みでお願いします」


「う~ん、いろいろあって俺様、面倒くせ~」


 やっぱりロキはせっかちで短気だ。

 しかしここは強気に出て主導権を握らないと。


「あ、いけないんだぁ。そんな事言うとね、もうロキ様、呼ばないよ、信じないよ、頼りにしないよ! と、なると信仰心、めっさ落ちちゃうよぉ……神様失格一直線よぉ」


「ずるいぞ、てめ~、神様失格一直線だとぉ。非道な悪魔みたいな脅しと駆け引きしやがって、分かったよ、ちっ!」


 結果……

 俺は暫く、ロキから転生先の魔法体系について話を聞く。

 中二病の俺が知っているのと、同じ魔法体系らしい。

 うわ!

 すっごく面白い!

 

 そして不思議な事に、俺って、どんどん大胆になる。

 だからズバズバ、頼んでいった。


「さっきも言ったけど、魔力は使い放題で! 魔法は……属性に関係なく全部を覚えられるようにしてよ。攻撃防御、その他オールで、そんでもって職業は魔法使いで剣士だから魔法剣士にして欲しい」


 そう、俺は西洋ファンタジーなら、名前からして格好良い『魔法剣士』に憧れていたのだ。


「ちっ! 欲張り野郎め! 見かけによらず、おめぇはしっかりしていやがるな。わ~ったよ、魔法剣士だな、とりあえずは回復と、全属性の基礎的な攻撃防御の魔法だけ入れとくからな。で、最後はどうするんだ?」


「索敵と内容量無制限の収納魔法も忘れずにね。敵がこっそり近付いて不意打ちは嫌だし、重い荷物持つのはパスだから」


「ち! すっげぇ慎重過ぎる奴! まるでどっかの勇者だぜ! 超欲張り野郎が!

そろそろ終わりだぜ、これで最後!」


「えっと……最後はもう決めている。俺……自分の暗くて臆病な性格がすっごく嫌だから、普通に女の子と話せるくらいの性格かな」


「ほぉ! くれぇ性格が嫌だと来たぜ。やっぱ堅実だねぇ。でも、そんなのごく普通の性格だ」


 そう、俺は普通の性格が良い……

 というか、臆病で大人し過ぎる性格だから……ごく普通になりたいっす。


「太郎よぉ! 俺様はもっと冒険して欲しいところなんだけどな。破天荒で無茶苦茶、後先を全く考えない性格とかよぉ」 


「いいえ、そんなのパス。どうせ冒険は、これからたくさんするから結構です」


 俺が、性格破綻はNGだと手を振ったら……

 またも、ロキがにんまり。

 凄くいや~な予感……


「うひひひ」


「な、何?」


「今、すげ~良い事を思い付いたんだよ。太郎よぉ、おめぇの性格をきっちり改造してやる」


「性格改造?」


「ああ、そうさ。ちなみによ、おめぇが寝ている間に、記憶を全部見させて貰ったぜ」


 え?

 ロキに俺の全てが?

 個人情報の流出?


「いやん、エッチ」


「うるせ~、何が、いやんエッチだ。それよりも、おめぇを憧れの信長とやら、そのものにしてやるぜぇ」


「え? 信長? 性格を?」


「ああ、そうだ! まあ、前向きに受け止めろや。今迄のお前の超暗い性格が、逆に超ビルドアップされるって考えとけ」


「俺の暗い性格が……信長みたいに……なる?」


 信長の性格?

 そりゃ、凄く憧れるけど……無理ゲーでしょ、そんなの。


「言葉遣いも大幅に変わるぜ! ついでに信長の得意スキルって入れといてやる。射撃とか、乗馬とか、水泳とか、役立ちそうな奴ばかりだ」


 射撃とか、乗馬とか、水泳ねぇ……

 スポーツ万能のスキルも確かに役には立つ。

 何故なら、殆どが実戦に繋がるものであり……

 その上、俺、雷同太郎の苦手なものばかりだからだ。


「単純に嬉しいです」


「おお、納得したかぁ? じゃあこれから与えた能力スキルを入れてやる。ほ~らよ!」


 ロキの身体が光った。

 何やら力を使ったらしい。

 すると!

 霊体らしい身体に力がみなぎり、俺もロキと同じ様にまばゆく光り始めた。


「おっと、結構おめぇの器って大きいぜ。自信持てや! 渡した能力がよ、全部入ったじゃね~か、太郎よぉ」


「おお、じゃあ俺って無敵ですね」


 俺が冗談めかして言えば……


「ああ、太郎! おめぇはこれから行く世界で無敵だ。さすがに不死まではいかね~がな」


「え? ほんと?」


「そうさ! お前は思ったより素質って奴がありそうだぜ。なら、せいぜい頑張って生き残れ! 俺様と上席を楽しませてくれよ~、ひひひひひ」


 無敵と言われ、俺が呆気に取られていると……

 あざ笑うロキの声はだんだん遠くなり、意識は深く深く沈んで行ったのだった。

東導 号作品、愛読者の皆様!

特報です!


『魔法女子学園の助っ人教師』


『第5巻』の発売が決定致しました!

皆様の多大なる応援のお陰です!

本当に、本当にありがとうございます!

発売日等、詳細は未定です。


◎そして!

この度『コミカライズ』が決定致しました。

宜しければ、11月12日付けの活動報告をご覧下さいませ。


既刊第1巻~4巻が発売中です。

店頭でぜひ、お手に取ってくだされば嬉しいです。

既刊が店頭にない場合は恐縮ですが、書店様にお問合せ下さい。

この機会に4巻まとめ買い、一気読みなどいかがでしょうか。

皆様の応援が、次の第6巻以降の『続刊』につながります。

何卒宜しくお願い致します。

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