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第60話「道三会見④」

 イシュタル父アヴァロン魔法王国国王、アルベール・サン・ジェルマンは先ほどからずっと無言である。

 苦笑した俺は「仕方なく」という感じで話を切り出した。


「ははは、オヤジ殿。そのように無言のままでは会話にならぬ。ならば俺から話をしよう」


「…………」


「聞け、オヤジ殿。俺がな、わざわざここまで会いに来てやった明確な理由がいくつかある」


「ぬぬぬ」


 敬語など殆ど無し。

 上から目線且つ相変わらず人を喰ったような俺の命令口調。

 アルベールの腹立ちは沸騰したまま、高値安定といったところか。


 でも……

 「毒を喰らわば皿まで」という感じで、俺は思い切り笑い飛ばす。


「ははははははは! そう怒るなオヤジ殿。頭から魔力波オーラの湯気が立っておる」


「くあああっ」


「おっと、オヤジ殿はだいぶお疲れのご様子じゃ。いらいらして話す気力もないようだ。だったら婿の俺が代わりに話すのが筋であろうよ」


「ぬうう……」


 唸ってばかりのアルベールは肯定も否定もしない。

 まあ沈黙は『肯定の証』という事で話を進めよう。


「オヤジ殿の貴重な唯一無二の宝物、イシュタルを貰い受けた礼はさきほど致した」


「…………」


 あんたの『お宝』イシュタルをありがたく貰った。

 再び俺の言葉を聞いたアルベール顔には、やはりというかひどく不快の表情が宿った。


「次は両国が結んだ同盟の意思確認じゃ」


「…………」


「これはウチの(マッケンジー)から念入りに頼まれた。万が一忘れたら瞬殺されるわい」


「…………」


「良いか、オヤジ殿。同盟期間の延長は締結日が更新期日となっておる。その日から改めて3か年延長。相互不可侵、不足物資の供給などは変わらず継続じゃ、宜しいか?」


「ぬぬ……ま、まあ良いだろう」


 本日、俺の最も公的な役目はアヴァロン魔法王国との同盟再契約の上、期間延長。

 随行する書記が俺の述べる内容を記載した書面を持っている。

 だから、王アルベールにはサインして貰うだけ。

 俺のサインは既にしてあるし、楽勝である。


「よし、次は仮想敵国についてだ。これはガルドルド帝国が最大の敵国という事で一致する。敵の敵は友、そういう理屈だのう」


「そ、そうだ」


「帝国以外、周辺の小国が相手でも、もしも難儀する場合はお互いに援軍を出す、これで宜しいか?」


「う、うむ! それも了解した。良いだろう」


 誰でも分かるという本のタイトルみたいな仮想敵国。

 当然憎きガルドルド帝国なのである。


 そして今、世間を騒がせている奴らの邪悪な魔物軍団。

 そもそも俺は帝国皇帝の顔なんて知らない。

 だが……

 あんなに非道な人喰いの部隊を使う皇帝の顔が、ロキに匹敵するとんでもない悪魔顔に思えて来た。


「次! 仮想敵国からの流れだが、直近の懸案事項は同帝国の新規軍、魔物軍団じゃ」


「……その通りだ」


「うむ、ここでひとつ聞きたいぞ、オヤジ殿」


「な、何だ? 何を聞きたい?」


 質問だと言われ、アルベールは訝し気な表情となる。

 だが、やはり俺のペース。

 先ほどの不機嫌顔とはまるで違っている。


「人を喰らう人外の魔物軍に対し、オヤジ殿のアヴァロンにおいては何か有効な作戦や対策は立てておられるのかな?」


「ま、まあな……ある事はある」


 はっきりとは言わず、口を濁すアルベール。

 だが、既に対策は立てているらしい。


 ここで『サトリの能力』を使っても良いが、先ほどの魔法を使っていれば完全には読み取れないだろう。

 

 と、なればここは「ズバン!」と聞く。

 つまりど真ん中へ直球を投げ込む。


「して、それはどのようなものか?」


 俺がストレートに聞けば、アルベールは小さく首を振った。


「いやいや……答えられん。いくらムコ殿でも今、機密を明かすわけにはいかんのだ。それにまだもろもろが未完成でな」


「ふうむ……もろもろが未完成……で、あるか」


 改めて聞いてはみたが、やはり内緒か。

 同盟国とはいえ、手の内を簡単に見せないというのは戦国の鉄則。

 まあ、仕方がないだろう。


「そうだ。悪いな、ムコ殿。では逆に私の方から聞きたい」


「ははは、何かな、オヤジ殿」


 このオヤジめ、一体何を質問する気だ?

 と思ったら、期待通り俺の尋ねて欲しい事を告げて来る。


「お前の近衛隊だが……何やら変なものが背についておる」


「ふむ、であるか」


「うむ……騎士の彼等が捧げ持つあの奇妙な金属の棒も不可解だ。長年、騎馬隊は見慣れているが……生まれて初めて目にする、このように奇抜で奇妙な出で立ちの軍勢は」


「ははははは、あれはなオヤジ殿」


 と俺は笑いながら、やはり気にして聞いて来たかとほくそえむ。


「な、何なのだムコ殿」


「内緒だ!」


「な、内緒?」


「おう! 俺もオヤジ殿同様、今、秘密を明かすわけにはいかん。これでおあいこだな」


「む、むっか~~」


「おお、また頭から魔力波オーラを出して怒るなよ、オヤジ殿。では特別サービスだ」


「私に? と、特別サービス?」


「おう! ひとつだけ教えよう。俺の兵が背中につけているもの……あれは母衣ほろだ」


「ほ、母衣? な、何だそれは?」


「ああ、母衣の形状は袋のようになっていてな。騎馬で走り背に風を受けると、大きくふくらむ。それで敵の矢やいしつぶてを弾いて防ぐ」


「むむ……でもあれは見た所、布製だ。とても燃えやすいのではないか。普通の矢や石などは防げるが、火矢や火の魔法を受けたら、人間ごと一発で燃え上がってしまう」


 アルベールの懸念はもっともである。

 前述したが、日本に鉄砲が伝わると、母衣の実用性は著しく低下したから。


 だが俺は再び笑い飛ばした。


「ははははは! その心配はご無用じゃ」


「何!?」


「オヤジ殿も魔法使いなら、こう言えば分かるであろう。ウチの母衣はな、特製じゃ。強力な付呪魔法エンチャントで物理と魔法、両方の耐性を高めておる」


「な? エ、エンチャントだとぉ!」


「そうだ、特にオヤジ殿ご指摘の耐火性には優れておる」


「わ、我が娘イシュタルは付呪魔法エンチャントを使えない筈……では誰が処置を? ムコ殿が高名な魔法使いでも雇ったのか?」


「はは、それも内緒じゃ」


 俺はそう言うと、呆気に取られるアルベールへにやりと笑ったのである。

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