第6話「チートスキルゲット!」
寂しい……というか、
果てしなく絶望的だった俺の人生では、絶対になかった幸運……
憧れの信長と化して、いろいろなスーパーチートが貰えて、その上美少女に、もてもて。
何と!
3拍子も揃った転生なんて!
す、素晴らしい!
素晴らし過ぎるっ!
こんな超サプライズ展開があるから、大人にまで異世界転生ラノベが流行るんだ。
そう!
皆、機会さえあれば素敵な夢を見たいんだよ。
本音は全部投げ出して、辛い現実からすぐ逃げ出したいんだよ。
もうロキが、怖い悪魔でも、いいかげんな詐欺師でも何でも良い!
この俺ブタローを幸せにしてくれぇ!
詰んだ人生なんか完全にサヨナラだ!
バイ、バ~イ!
「ロ、ロキ様っ! ぜ、ぜ、ぜ、是非お願いしますっ! 加護をくださいっ!!!」
本音をむき出しにした俺が勢い込んで頼んだら、ロキの奴、満足そうに「にんまり」している。
「おお、隠れスケベ野郎! 飢えたケダモノみたいに食いつき良いねぇ」
「あうあうあう~」
ここが人生? の分かれ目。
俺は必死だった。
こんなに一生懸命、頼み事をするのは生まれて初めてだ。
極度の興奮状態で、唸る俺を見て、ロキはいかにも面白そうに笑う。
「ひゃははははっ! 女の話といい、一見真面目くさっているくせに、餌を見せられるとお前って本能ムキダシ」
「お、俺が! ほ、ほ、本能ムキダシなのは敢えて否定しませんっ! じ、実際、表だって言わないだけで、皆そうですよっ! 男って!」
「ま~な、それが男の悲しい性って奴だもんな。でもよ、そういう欲望まっしぐらな奴って、俺様、大好きなんだよ」
「だ、大好き? それはありがたいっす!」
「だがよぉ、太郎。ひと言だけ言ったくぜ。加護って奴は神様が独自の判断で与えるもんなんだ」
「え?」
加護は神様の独自の判断?
何、それ?
「てなわけで、太郎よぉ、チート能力は俺様が自分の趣味で勝手に決めさせて貰うからな」
ロキが、くれるチートを勝手に決める!?
自分の趣味で?
さっきの転生の行き先同様、俺に選択権は全く無いって言うの?
それ、何か、いや~な予感がする。
否、予感じゃない。
確信だ。
俺は『無言の抗議』をする。
必殺のジト目攻撃って奴。
「…………」
俺が無言で睨むと……ロキは苦笑する。
「まあまあまあ、そんな冷たい目で見るなよ。俺様に任せておけよ、ぜってぇ悪いようにはしないからよぉ」
「…………」
「ええと、まず最初のチートはスーパーな肉体だ。常人より10倍も頑丈で優れた五感を備えた身体はすっごく役に立つぜ!」
「あ、ありがとうございます」
一応これは素直に礼が言える。
何だよ、脅かしといて……
全然、まともじゃないか?
確かに身体は頑丈で優れた五感があるにこした事はない。
でもロキの説明はまだ終わっていなかった。
「加えて、スペシャル能力は精力絶倫だぁ! 以上!」
「は? スペシャル能力? 精力絶倫?」
「そうよぉ! 一度にい~っぱい女の子を可愛がる事が可能な男のロマン……これはハーレム作ってエッチする時には必須だな。お前はどうせハーレム大好きだろ?」
「は、はあ……まあ、仰る通りハーレムは大好きですけど」
おいおい!
ロキ様が仰る通り、確かに嬉しいよ!
でも……くれるの、それだけ?
武道の達人とか、魔法がガンガン使えるとか、そんなチート能力はくれないの?
ここは黙っていちゃ、転生後に困る。
俺だって言う時は言うからね。
「……でも、貰えるスペシャルチートって……身体とエッチ能力だけなんですか? もっと実用的なものがいいっす」
強い抗議を籠めた、俺の冷たい視線ビーム攻撃……
「何だよ、精力抜群って充分実用的じゃあね~か。男だったら、所詮最後は、あれだろ? 女はおめぇに可愛がって貰ってメロメロだぜぇ」
あれって、何だよ、男はあれって!
俺の冷たい視線ビーム攻撃更にパワーアップ……
「…………」
「おい! 黙ったままそんな目で俺様を睨むな。安心しろぃ、殺気のは冗談だよ。まだ、あるって、お前にやるチート能力」
「え? あ、あるんですか? まだ?」
「ああ、俺はそんなにケチじゃねぇ。次はサトリの能力、いわゆる読心術だな」
「サトリ? 読心術?」
う~む……
いまいちピンと来ない。
補足説明を要求します。
俺がそう言ったら、ロキは得意そうに胸を張った。
「おうよ! この能力はな、相手の気持ちがバッチリ読めるんだよ」
相手の気持ちがバッチリ読める読心術ねぇ……
テレパシーみたいなもの?
でも、それって微妙だ。
「ロキ様、相手の気持ちが読めるって……それ、逆に辛くないですか?」
「辛い? どういう意味じゃい?」
「いえ、俺、極度の豆腐メンタルなんで、どんなもんですかね?」
「豆腐メンタル? は? 何じゃそりゃ?」
「いやぁ……だから気持ちがデリケート、非常に繊細って事ですよ」
「繊細? デリケート? ドスケベなお前がねぇ……」
ロキが首を傾げるが……
本当にそうなんだもの。
「聞いてください。俺って容姿に全く自信がないから……豚とかキモイとか、見る度に思われるんじゃあ……そんなの、ダメージ受けまくりで心身がボロボロになりそう」
「はぁ? それぐらいバシッと撥ね返せよ。どうせ転生したら容姿なんて変わるんだ。気持ちがよえ~ぞ、駄目じゃ、そんなの!」
「いえ、何度も言いますが、こう見えても太郎は超デリケートなんです。たま~に言われるくらいなら耐えられますけど」
「いやいやいや、お前なぁ、折角転生するんだから少しは強くなれよぉ それくらいよ! それより、これがあれば相手から裏切られずにすむぜぇ、逆によぉ、裏切りそうな奴を先にぶっ殺せるんだ」
ああ、そうか……
よくよく考えたら、相手の心が読めれば、信長みたいに配下に裏切られないですむのかな?
だったらロキの言う通りかも。
もし心を読んで光秀みたいな不埒者が居やがったら、襲われる前にズバッと切腹させてやるぜ。
まあ……少しは使えるか、読心術。
冷たい視線ビームの攻撃中止……かな?
俺がジト目をやめて、無理やり笑ったら……
ロキの奴、何故か勘違い。
「おお、嬉しそうだな。更に、それだけじゃないとくらぁ!」
「え? それだけじゃない?」
「ああ! おめぇを心の底から信じているマブダチを、あっさり裏切る快感付きだ~」
「…………」
最低!
こいつ最低!
「俺なんかいっつもやめられね~ぜ、これ。土壇場でマブダチを裏切る快感ってホント~にたまらないんだぞ!」
そうか、こいつはロキ……
裏切るのは大得意だったんだ。
おめぇは明智光秀か、もしくは松永久秀かっつ~の。
戦国ファンなら例えがお分かりだろう。
そんな俺のジト目をスルーし、ロキは完全に自分の世界へ入っていたのである。
東導 号作品、愛読者の皆様!
特報です!
『魔法女子学園の助っ人教師』
『第5巻』の発売が決定致しました!
皆様の多大なる応援のお陰です!
本当に、本当にありがとうございます!
発売日等、詳細は未定です。
◎そして!
この度『コミカライズ』が決定致しました。
宜しければ、11月12日付けの活動報告をご覧下さいませ。
既刊第1巻~4巻が発売中です。
店頭でぜひ、お手に取ってくだされば嬉しいです。
既刊が店頭にない場合は恐縮ですが、書店様にお問合せ下さい。
この機会に4巻まとめ買い、一気読みなどいかがでしょうか。
皆様の応援が、次の第6巻以降の『続刊』につながります。
何卒宜しくお願い致します。