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第58話「道三会見②」

 俺の嫁イシュタルの父・隣国アヴァロン魔法王国国王アルベール・サン・ジェルマン。

 彼の名声と実力はこの世界で広く知れ渡っている。

 智謀に優れ、底知れない実力を誇る上級魔法使いだと。


 この義理父から『使い魔』の白鷹が来て丁度2週間経った……

 俺は既に会見OKの返事を戻してある。

 

 というわけで、俺は配下を引き連れ、馬で約10日かかる国境近いデルブリ村目指して出発した。

 計算上、アルベールとの会見日1か月後には間に合う筈。


 さすがにチート魔人とはいえ、次期国王ともなれば単身乗り込むわけにはいかない。

 俺は護衛の為の同行メンバーを召集した。


 ぜひお供したいと、意志表明したマッケンジー公爵は勿論なのだが……

 エリックとゴヴァンのマイルズ兄弟が、編成したばかりの精鋭部隊・黒母衣衆くろほろしゅう赤母衣衆あかほろしゅうを率いて参加すると名乗り出たのを始め……あのガレス・シードルフ伯爵さえもお供の申し入れをしてくれた。


 だが、俺はそんな志願の声を抑え、大部分の部隊を王国に残した。

 結局考え抜いた末、連れて行くのはマイルズ兄弟の両母衣衆に限ったのだ。

 そして猿ことトーマス・ビーンが率いる騎馬隊、都合3隊のみにした。


 この3隊は、俺の親衛隊ともいえる特別な騎馬部隊である。

 黒母衣、赤母衣の2隊は前述した通りだが……

 それに母衣を派手な黄色に染めた猿の1隊が加わっていた。


 平民出身の猿ことトーマスは騎士爵家出身のマイルズ兄弟に対し、何かにつけ張り合いたいらしい。

 母衣代全てを自分で持ち、馬を乗りこなせる強い配下も責任を持って集める!

 という条件で、俺へ一隊の編成希望を申し出たのだ。


 俺は猿の気合に免じ、許可した。

 そう、この騎馬隊こそが、信長の生きていた時代には存在しなかったこの異世界の黄母衣衆なのである。


 そして……量産こそ間に合わなかったが……

 試作品を50個あまり作らせた特製の新兵器も持参している。


 え?

 新兵器が気になる?

 一体、何かって?


 いやいや、種明かしはまだ少し先にする。

 道三ことアルベール・サン・ジェルマン王へお披露目する際に教えよう。


 そんなこんなで……

 馬上に揺られる俺は……

 出がけに強烈なインパクトを与えてくれた、嫁と妹の見送りシーンを思い出していた。


 まずはイシュタル。

 白鷹から父のメッセージが告げられた際「絶対に罠だ、行かないでくれ」と、

 泣いて俺にとりすがったが……

 一旦覚悟を決めれば女子は強い。

 凄く凄く強くなる。

 彼女の居間でオーギュスタ達侍女を下がらせ、ふたりきりで話した時にきっぱりと言われたのだ。


「旦那様、もしも貴方に万が一の事があれば、私も死にます」


 俺がもし死ねば、イシュタルも死ぬ?

 死なばもろともって奴か。

 そこまで、俺の事を深く愛してくれているのか……

 凄く嬉しい反面……言葉が出ない。


「むう……」


 唸った俺が複雑な表情をしていると、イシュタルは口を真一文字に結んで首を横に振った。


「でも誤解なさらずに、私は自死など絶対に致しませんから」


「う、うむ!」


「帝国でも故国アヴァロンでも、たとえ実の父へでもためらいなどなく、魔力が尽きるまで攻撃魔法を撃ちまくり、戦い抜いて討ち死に致します」


 イシュタル……お前……

 もし敵となったら、実の父にさえ、ためらいなく魔法を撃つ。

 俺の為に、そこまで覚悟を決めたのか……


「……分かった、お前の父でもためらわず撃つか……良い覚悟だ」


「はい! 当然です! イシュタルは旦那様の妻なのです! たとえ何があっても……万が一、不幸な事になろうともいつまでもおそばにおります」


「で、あるか! よし! ……行って来るぞ」


「気を付けていってらっしゃいませ! 旦那様!」


 イシュタルの大きな声を背に受け、俺は振り返らずに彼女の居間を出て行った。


 片やエリザベス。

 彼女と話したのは、やはりふたりきり。

 イシュタルと同じく彼女の居間である。 


「権謀術数に長けた……イシュタル(あのひと)の父に呼ばれて行く……危険は覚悟されているのですね、お兄様」


「ああ、当然、覚悟の上だ」


「成る程……」


「帝国の脅威が増すこの状況ではあのオヤジとは会う価値が充分ある、だから行く」


「はい、情勢を考えると仕方がありませんね。でも危険は非常に大きいですし、この会見が罠であるのは確実でしょう。ですがお兄様にはまだまだ利用価値があります」


「俺に利用価値か?」


「ええ、アルベール王はお兄様を殺しはせず、生け捕りにし、人質にする可能性が高いと考えられます」


「ふむ……」


「何故なら、お兄様を殺せばアルカディアはアヴァロンと同盟を破棄した上、確実に国交を断絶します。あの人(イシュタル)マッケンジーに容赦なく処刑されるでしょう」


「……まあ、そうだろうな」


「アルベール王はアヴァロンが生き残る為、お兄様を盾にアルカディアをつなぎとめ捨て駒とし、ガルドルド帝国へ対抗しようとする腹づもりなのです」


 情勢を鋭く見通す洞察力。

 冷静沈着な性格……そして物言い。

 どう考えても12歳の少女とは思えない。


「うむ、良い読みだ。俺も同じ考えだよ、エリザベス」


「うふふ、当然です、素敵なお兄様の妹ですもの」


「うむ! というわけで後を頼むぞ」


「了解致しました。留守の間は私にお任せを」


「心強いぞ、エリザベス」


「はい! お褒め頂きありがとうございます。但し……」


「但し?」


「何があっても! 最後まで諦めないでくださいませ」


「う、うむ」


「たとえどのような恥辱を受けても! 絶対に死んではなりませぬ。生き残る事に注力してくださいませ。エリザベスはいつまでもお兄様をお待ちしております」


 切々と訴えるエリザベス。

 心の叫びともいえる言葉に俺は「じん!」と来た。

 こうなれば、返事など決まっている。


「よし! 分かった、絶対に死なずお前の下へ戻る! 必ず生きて戻るぞ!」


「はい! お兄様を信じます。ですが万が一お兄様が不覚をとり、たとえ地獄へ行ったとしても」


「ほう! 俺が地獄へ行ったとしても?」


「このエリザベスも同じく地獄へおもむき、必ずお待ちしております」


 俺が死んだら、自分も地獄で待つ。

 まるで悪党のセリフだが、それを可憐なエリザベスが言うと、尚更凄みがある。


「うむ! で、あるか! 行って来る!」


「いってらっしゃいませ! お兄様!」


 ふたりの見送りコメントは全く違う。

 とても対照的だ。


 しかし、共通しているのは……

 命を懸け、俺と運命を共にしようと強く決意している事。

 とても愛情が深い事……


 こうして俺は……

 愛する女子ふたりを故国へ残し、遠く国境の村へと旅だったのである。

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