第54話「自称賢弟の変貌③」
死して異世界へ旅立ったアーサー、そして母アドリアナには悪いが……
この愚かで馬鹿な弟に、容赦なく鉄槌をくだす時が遂にやって来た。
なので、俺はさっきのコンラッドみたいに「しれっ」と言ってやる。
「コンラッド、お前今すぐ、この国を出ていけ」
「え? な、な、何を?」
「聞こえなかったのか? 俺は出ていけと言った、つまりお前は国外追放だ!」
「な、ぼ、僕が!? 高貴な王族の僕がぁ!? つ、追放ぉぉ!?」
まさか自分が『国外追放』を命じられるとは思わなかったのだろう。
コンラッドは、今迄の態度が信じられないくらい動揺していた。
こういう奴は概して打たれ弱い。
思った通りである。
うん!
これで、形勢逆転だ。
俺は表情を変えず、更に言ってやる。
「おお、そうさ。とっととアルカディア王国を去れ! ちなみにお前の持っている財産は、王国のものだからな、全てを没収する」
「財産を!? 全部ぅ!? ぼ、ぼ、ぼ、没収!?」
「ああ、お前はな、着の身着のまま、身体ひとつで国外追放だ」
「な、な、な!」
「ははははは、簡単且つシンプルな話だろう?」
「か、か、か、簡単じゃあありませんっ! ちゃんと裁判もせず、お、横暴ですっ!」
「たわけが! 横暴ではない、王になる俺に従えないような家臣など一切不要、謀反を企てた罪で殺されないだけマシと思え」
「そ、そんな! それは誤解だと、ぼ、僕は! は、はっきり言いましたよっ」
「いや! こちらこそ、はっきりとした証拠がある」
「は、はっきりとした ?しょ、証拠?」
「おう! 連判状だ」
「れ、連判状!?」
「そうだ! お前のサインも大き~く真ん中にしてあるぞ。なんなら筆跡鑑定しても構わん!」
「う、うわ!」
「それにここまでのお前の態度で、俺が決めた。だから追放だ」
「ここまでの僕の態度!? あ、あ、兄上! で、でも! 母上が! 母上がそんな事はさせません! 許しやしません!」
「ああ、お前が絶対にそう言うだろうと思って、母上には絶対に口を挟むなと告げてある」
「な、な!」
最後の砦……
溺愛してくれる母へ、俺が「びしっ!」と釘を刺したと知り、驚くコンラッド。
さあて、とどめだ。
「コンラッド、はっきり言おう。俺はな、魔法でお前の心が読める……お前の本心がな」
「へ? ま、魔法!? 僕の本心?」
「ああ! お前はさっき、心の中でこう言ったぞ。……本当は違うよ、ばぁか! 馬鹿なお前さえ居なければ、僕が父上の跡を継ぎ、王になれる……とな」
「あ!」
ずばり!
心の中を言い当てられ、コンラッドは慌てた。
しかし、俺は追撃の手を緩めない。
「だからぁ、邪魔者は消してしまえって自分で決めたんだよ……ってか?」
「あぐうう……」
「今は我慢するけどさぁ、後でタイミングを見て、お前を絶対に殺してやるからね……とかさ」
「あ、ああああっ」
「コンラッド! 俺に対して叛心を抱き、何度も殺そうとする奴など……血を分けた実弟とはいえ傍に置く事など出来ぬ!」
「あうあうあう……」
「王国から出たら、ガルドルド帝国へ行こうが、どこへ行こうが勝手。野垂れ死にしようが、魔物に喰われて死のうが、お前の自由だ。思う通りにするが良い」
「あ、あうう……」
「聞け! 既にガマリエルとガレスにはこう命じてある」
「ガマリエルとガレスに? め、命じて?」
「おう! この俺に従わない貴族は、財産を全て没収の上、家族もろとも国外追放だとな……今頃ふたりは、謀反を企んだ奴らを必死に説得している筈だ」
「うう……」
「コンラッド、お前も奴らと全く同じだぞ!」
「え? ぼ、僕も奴らと全く同じ?」
「ああ、そうだ。俺の命令に従わない場合は」
「ば、場合は?」
「当然、死罪だ。王都の中央広場で、首をすぱっと刎ねてやる」
「あうううっ、ぎゃあああっ!!!」
まさかの死罪と聞き……
これまで嘘八百を並べていたコンラッドは……
ショックのあまり、悲鳴をあげ、失神してしまったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
失神してしまったコンラッドであったが……
心配無用!
俺はイシュタルから魔法を教授された際……
鎮静を含めた治癒の基礎魔法も、改めて教えて貰っていた。
なので、鎮静と目覚めの魔法を発動したら、コンラッドの意識はすぐに戻ったのだ。
俺とゴヴァン、ふたりから見下ろされる形で……
居間の長椅子に寝かされたコンラッドは、落ち着きを取り戻し、苦笑していた。
「……ま、まさか、心を読む魔法まで使うとは……やはり、以前の兄上とは全く違う。違いすぎますね……」
「そうか? ははははは!」
「……本当に、本当に、兄上は変わりました。まるで別人だ……」
以前のアーサーとは違う!
まるで別人だと呟くコンラッドの言葉には実感がこもっていた。
母アドリアナ同様、畏怖の念も伝わって来る……
俺への見方が、だいぶ変わったようだ。
これなら殺さず、改心させられる可能性があるかも……
うん!
予定通りに、作戦実行としよう。
俺はコンラッドを起こして座らせると、話の続きを再開した。
「コンラッド、お前をどうするかは、もう決めてある」
「やはり追放……なのですか。もう既に覚悟は決めました」
どうやら……
コンラッドに、先ほどまでの慌てぶりは消えている。
「死ぬよりはましだ」と開き直ったのであろう。
しかし俺は首を横に振る。
「いや、喜べ! お前に追放と死罪以外の選択肢も与えてやるわい!」
「つ、追放と、死罪以外の選択肢?」
「そうだ! 聞け、コンラッド! 俺は先日、このゴヴァンと王都郊外で魔物退治を行った。ゴブリン200匹以上の大群と戦ったのだ」
「ま、魔物退治? 兄上が魔物と戦った事は噂には聞きました……ですが、そ、それと、ぼ、僕に何の関係が?」
こいつ……完全に自分の立ち位置『戦う者』の精神を忘れていやがる!
ならば、無理にでも思い出させてやるさ。
「たわけ! 僕に何の関係があるかだと? 察しの悪い奴だ。お前もやるのさ、魔物退治を」
「え? ま、魔物退治を!? ぼ、僕も……ですか?」
俺から魔物退治と聞いて……
コンラッドの顔からは、はっきり血の気が引き……
自信がない、不安そうな表情となったのである。
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