第53話「自称賢弟の変貌②」
コンラッドの居間に置かれた応接の長椅子に……
俺とゴヴァン、そしてコンラッドは向かい合って座った。
侍従達は、同席させず3人だけである。
ようは人払いだ。
王族とは身分が違いすぎる騎士爵家の息子ゴヴァンが、一緒に座ると告げたら、コンラッドはとても嫌がったが……俺は 問答無用で強行した。
不機嫌な表情を無理やり引っ込め……
皮肉っぽい笑いを浮かべ続けるコンラッドへ、俺は単刀直入に告げる。
「コンラッド、お前は今回の事件を、どう考えておる」
しかしコンラッドは、笑ったまま手を左右に「ひらひら」と振った。
「やだなぁ、兄上」
「何が、嫌なのだ?」
「だって! 兄上ったら、今迄とは物腰や話し方が全然変わっちゃったじゃないですかぁ?」
はぁ?
こいつ、なんだ?
俺がどのような要件で話に来たのか、分かっている癖に。
「黙れ! 話をすり替えるな」
「すり替えるって、何をですか?」
「たわけ! お前が中心となり、俺を殺そうと画策した陰謀の話をしておる。明白な証拠だって、ちゃんとあがっておるのだぞ」
しかし……
俺が一喝しても、どこ吹く風。
コンラッドは、全く動じない。
それどころか、大声で笑ってしまう。
「あははははははははっ」
「むう、何が可笑しい?」
「これは可笑しいですよ、大笑いです、兄上!」
「俺は全然可笑しくない! 可笑しいと思う……理由を言え」
俺がきつい眼差しを投げかけると、
「ちょっと、待ってください。そんな怖い顔をしないでくださいよぉ」
「…………」
「兄上が殺されそうになったという、怖ろしい陰謀が露見した事は知っています。ですが、僕が中心って何の事です?」
コンラッドは「しれっ」と惚けた。
とりあえずこの場は、何とか巧く言い逃れよう!
邪な心の波動が伝わって来る。
しかしここで、すぐに怒るのは芸がない。
だから、俺も調子を合わせてやった。
「ほう、何だ? 違うのか?」
「いやいや全然、違いますよ」
「うむ、ではしっかりと俺の前で釈明してみせい」
「ええっ、しっかりと釈明って、人聞きが悪いな。そもそも、兄上が罰したオライリーが首謀者なのでは?」
「オライリーが首謀者か……確かにな」
「でしょう? 僕はまだ14歳ですよ。未成年ですよ。あいつらに名前を勝手に使われただけ、えらい迷惑です」
……本当は違うよ、ばぁか!
僕は14歳だけど、もう立派な大人。
一人前の騎士だ。
兄のお前さえ居なければ、僕は病弱な父上の跡を継ぎ、この国の王となれる。
だからぁ、余計な邪魔者は消してしまえって自分で決めたんだ。
今は我慢するけどさぁ、後でタイミングを見て、お前を絶対に殺してやるからね。
という……
コンラッドの怖ろしいほど邪悪な心が、叛心を伝えて来る。
さすがに俺は呆れ、顔をしかめて唸ってしまう。
こいつ、若干14歳とは思えない超悪役キャラだ。
「ふうむ……」
「兄上、たかが14歳の若輩者が、オライリーやガレスのような古参家臣へ、物申すなど出来やしません」
一見、納得しているような俺を見て……
コンラッドは「ここぞ!」とばかりに押して来る。
本当は俺のチート能力サトリで、心の中をばっちり読まれているのに……
だが俺もそんな怒りをおくびにもに出さず、
「それは本当だな?」
「はい! 創世神様に誓って、本当に本当です。その証拠に、責任を感じて、ここまで大人しく謹慎していましたからね」
「よし、分かった。ならば、お前を信じよう」
は?
何が創世神様に誓ってだよ!
と、むかついたが……
ここで、俺は湧き上がる怒りを何とか抑えて大人となり、最大限の『情け』を見せた。
コンラッドの冷酷無比な心を知りながら。
先日、厳しく突き放してしまったが……
俺は亡きアーサーの為、母アドリアナの泣きを聞いていたのだ。
それに俺自身、実の兄弟同士で殺し合うのは嫌なのだ。
しかしコンラッドは、そんな俺の気持ちも知らず、「にやり」と笑い聞いて来る。
「ふふ、兄上、本当ですか? この僕を信じてくれるのですね?」
「ああ、俺はお前を信じる。だからお前も今迄以上に忠実な家臣として仕えてくれるな?」
「兄上の家臣? さあ、それはどうでしょう?」
おっと!
遂にコンラッドの本音が出た。
ここではっきりとした言質を取られたら、一生、俺の下になる。
そう考え、やんわりと躱しにかかったのだ。
こいつ……本当に腐ってるな。
と思いながら、やはり俺は顔に出さず、尋ねてみる。
「コンラッド、どういう意味だ?」
「いやいや、申し上げにくいのですが、今迄兄上は、あまりにもヘタレでしたから。……才ある僕が仕えるのに相応しい主かどうか、大いに迷いますよ」
おいおい!
俺がヘタレ?
はっきり言うじゃないか。
実は当たっているけれど。
そして、『才ある僕』だと?
世間知らずな癖に、自惚れもいい加減にしろ!と言いたい。
こういう奴は前世でもいっぱい居た。
全然実力もない癖に、根拠のない自信を大きく広げて見せるだけの奴が。
俺は苦笑し、念を押してみる。
「成る程、俺がヘタレで王に相応しくないから、お前は迷うのか?」
「はい!」
「ははははは! はっきり言う! あい分かった!」
「ふふ、分かって貰えますか?」
コンラッドの奴は、完全に俺を舐めていた。
もう、そろそろ頃合いだろう。
亡きアーサーと母親には悪いが……
この超馬鹿弟に、容赦なく引導を渡す時がやって来たのだ。
俺は軽く首を振り……
邪悪な心を持つ、『自称賢弟』を見据えたのである。
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