第50話「新体制発進!③」
俺の視線を受け、エリザベスはいつものように微笑んだ。
しかし、多少顔が強張っている。
事前に仕事内容を聞いているとはいえ、やはり緊張しているのだろう。
「次! エリザベス・バンドラゴン!」
「は、はい! お兄様!」
「改めて申し渡す! 統括担当の爺を補佐する宰相代理を命ずる。また当該職以外に、お前にも商業ギルドの幹部を命じる」
「はいっ!」
「補佐役としてトーマス・ビーンの妻ネネを副官としてつけよう。同性の部下も何人かつける。ガマリエル同様、岩塩販売ルートの確立、新規事業の提案、準備、起業を行え! 分からなかったらネネだけではなく俺にも聞けっ!」
「は、はいっ!」
エリザベスにもオライリー同様のケアをした。
王国の運営はマッケンジー公爵から、教えを受けるから良いとして……
王女として育った彼女には商人の仕事など分からない。
なのでネネ以外にも、王都の商人の娘達から、選りすぐった女子数人を腹心として付けたのだ。
中には、オーギュストのように武芸の心得のある者が居り、エリザベスの護衛を兼ねている。
ちなみに副官としてつけたネネは有能なのは勿論、夫トーマスへの実質的な人質である。
ここでいう人質とは、いろいろな意味がある……
「よし、次! イシュタル・バンドラゴン!」
「はいっ!」
「お前にもエリザベス同様、宰相代理の職を命ずる。それと当該職以外に、新設する魔法省の長も命じる。アルカディア王国魔法使い部隊の創設、育成、訓練を行え。副官にはオーギュスタを付ける」
「はい!」
「足りない人材はエリックと相談し、王国内外及び冒険者ギルドから、獲得せい! お前とオーギュスタで直に面接し、良い人材には金を惜しむな!」
「かしこまりました!」
魔法使いの効用は俺自身が身に染みている。
それにイシュタルと話したところ、アルカディアとほぼ同規模である隣国のアヴァロンが、帝国に対抗出来ているのは魔法使いの力だという。
俺は、イシュタルからいろいろと聞いてはっきり認識した。
攻城戦の守り手として、魔法使いの攻防魔法が絶大な効果を発揮すると。
魔法に関しては発展途上国のアルカディアが……
騎馬軍団をメインとした強靭なガルドルド帝国に対抗する為には、力を入れないわけにはいかない。
幸い、イシュタルは父王譲りの天才と謳われる魔法使い。
最高の適任者だろう。
当然、オーギュスタはイシュタルの護衛も兼ねる。
「うむ! ただ魔法を使うだけではない。戦士オーギュスタの補佐により、適性がある者には武器も使える魔法戦士にするよう、どしどし育成して貰いたい!」
「御意!」
「よし! 次! エリック・マイルズ!」
「ははっ!」
「お前には新設される冒険者ギルド長ギルドマスターを命じる! ギルドの効用は、この場の者へは散々説明したから省く!」
「はい! 冒険者ギルドの意義及び任務は、しっかり理解、認識しております! お任せ下さいっ!」
「よし、エリック! 一応念を入れるぞ! お前に任せるのは、国内の雇用を生み出し、国内外の優秀な人材を獲得する大切な仕事だ」
「はっ!」
「ギルドに登録した中で、良い人材が居たら、身分は関係ない。俺へ、遠慮なく上申せよ! 既に考えておるが、お前とゴヴァンの、将来の部下にもなりうる!」
「はい!」
エリックの声には張りがある。
仕事自体が重要なのと、優れた部下を召し抱えれば、いずれ俺の『親衛隊』を任せると伝えてあるからだ。
この親衛隊とは、かつて信長が重用した赤母衣衆、黒母衣衆をイメージしたものだ。
「次! ゴヴァン・マイルズ!」
「はいっ!」
「兄エリックと共に、冒険者ギルドを任す。サブマスターとしてやんちゃ息子共を教育せい! いずれ兄と共に親衛隊一隊を任す!」
「御意!」
ゴヴァンも兄に劣らず、他者には負けまいと目が輝いている。
「やる気満々!」という激しい波動が強烈に放たれていた。
「次! トーマス・ビーン!」
と、俺が呼べば、相変わらずトーマスは掴みどころがない男。
惚けた顔で切り返して来る。
「は? トーマスとは畏れ多い。私を猿と呼ばないので?」
「ならば、猿っ!」
「ほい、来た! そう呼ばれた方が猿は気合が入ります!」
「ふん! お前には新たに創設する諜報省を任す! 国内外の情報を広く得るのだ。子飼いの草の者を有効活用しろ! 予算もたっぷり割いてやる!」
「へへ、ありがたき幸せで」
「ふん! 何がありがたきだ、たわけ! 本心を言え!」
「は? 本心?」
「惚けるな! 汚い猿顔にはっきり書いてある! お前も腹ペコ猿として、冒険者ギルドへひと噛みしたいのだろう?」
「御意!」
「たわけ! 何が御意だ? ははははは!」
トーマスが冒険者ギルドに絡みたい理由ははっきりしている。
平民出身のトーマスには、信頼出来る部下が少ない。
血が繋がった親しい身内も少ないという。
なので、ギルドに良い人材が居たら、どんどん引き入れたいに違いない。
これは、あの秀吉も全く同じだった。
仕事に前向きなのは良い事だし、こいつの『人たらし』は必ず役に立つと確信している。
「許す! その代わり、猿はあくまで諜報省の仕事がメインだぞ」
「了解です!」
「よし! ゴヴァン同様、ギルドのサブマスターとなり、エリックを助けよ! 但し、ギルド内で不埒な真似をしたら絶対に許さぬ!」
念の為、トーマスへ釘を刺したのはエリザベスに対しての事。
ネネが目を光らせているから、一応安心はしているが……
邪な恋心は勿論、俺と身内になるような大それた野心が芽生えれば、容赦はしない。
「かしこまりましたぁ!」
そして、遂にオオトリの登場だ。
今迄『うつけ』と散々言われた、草食系のアーサーを見捨てず、ずっと忠実に仕えて来た男……
「よし、最後にクラーク・マッケンジー公爵!」
「ははっ!」
「王国宰相として、俺と共にアルカディアを統括する、頼むぞ!」
「御意!」
慈愛を籠めて俺を見つめるマッケンジー公爵が、嬉しそうに短く叫び、会議は終わった。
こうして……
アルカディア王国は俺の下、新たな体制で、リスタートする事となったのである。
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