表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/63

第5話「選択肢はひとつだけ?」

 自らを神と名乗り、己の能力を一方的に自慢するロキ……

 抵抗不可、無力な俺はつい話を聞いてしまったけれど。

 

 さっきの凶暴な悪魔顔とか……

 考えてみたら、こいつ、神様なんてとんでもない !

 

 怪しさ満点の、『トンデモ詐欺師』じゃないか?

 もしかしたら転生なんて大嘘で、責め苦満載なおっそろしい地獄へこれから連れて行かれるかもしれない。

 

 俺はそう思い、ついロキを凝視した。


「…………」


「おお、何だ太郎、そのジト目はよぉ! 畏れ多くも神の俺様に向かって疑いの眼差しってかぁ?」


「…………」


「はは~ん、この俺様を神だって信じてねぇな。まあ、おめぇが信じねぇのは勝手だけどよぉ、太郎、おめぇ、神の力の源って何で決まるか知ってるかぁ?」


 ロキの奴……知っている。

 絶対、俺が『中二病』だって知っている。

 でなきゃ、いきなりこんな話題を振って来るわけがない。


 哀しいかな、当然の如く、俺は喰い付いてしまう。


「神様の力の源?」


「おお、神の力ってのはな。信者である民からの信仰の力に比例するんだよ。だからよぉ、信仰が大きければ大きいほど神の力が増し、比例して民への加護も大きいと来たもんだ、この意味分かるよな?」


 畜生!

 怪しい癖して、変に深~い事を言いやがって。

 要はロキを『素敵な神』だと信じて、俺はこの身を任せるしか、道はないって事だろう?


 暫し考えたが、他に方法はない。

 仕方がないから……全面降伏だ……


「わ、分かりました、信じますよ! 聞いた事ありますよ、ロキ様を信じる俺は救われるんでしょう?」


「ひゃははは! 信じる者は救われるってか? おめぇはよ~く分かっているじゃね~か」


 あ~あ。

 仕方がない。

 俺が信じる事でロキの力が増すのなら加護も大きくなる……

 とりあえず信じましょう。

 置かれた状況を考えると、他に道はない。

 俺はこいつから加護を受けるしかないもんな。


「よ~っしゃあ。じゃあさっさと片付けちまうか。太郎よぉ、転生先の異世界はどんな所が良い? 一応おめぇの希望を聞いてやる!」


 ようし、とうとう来たか、異世界転生!

 自分の好きな行き先が選べるのかな?

 その質問だったら――俺は自信を持って即答できる!


「ええと、絶対に日本の戦国時代へ! 尊敬する織田信長様の側近が希望でッス! きりっ」


 最大MAXの気合をこめてロキへ希望を伝えた。

 しかし、俺の願いはあっさり却下されてしまう。


「はん……馬鹿か、太郎。おめぇ~はよぉ、俺様の風体をよ~く見ろ。日本の神様かっていうんだよ。おめぇから見たら、金髪碧眼きんぱつへきがんの典型的なガイジン様だぜ」


 ロキの言った通り、美しい碧眼が俺を馬鹿にしたように見つめている。

 確かにこの風貌では、我が日本との関わり合いは無い……みたい。


「え、駄目ですか!? ううう、確かに! ……どこをどう見てもロキ様は日本の神様じゃあありませんもんね」


「だろ? おめぇの故国、日本の中世風世界は完全に俺様の管轄外ってんだよ」


「…………」


 完全に管轄外だときっぱり言われ、俺はがっかりして黙り込んでしまう。

 信長ワールドが駄目だと聞いて、落胆があからさまに顔に出ていたらしい。

 ロキは急に機嫌が悪くなり、しまいには怒り出したからだ。


「あ、てめ~、糞ったれ! 今、心の中で俺様を凄く馬鹿にしたなぁ。使えね~神だとか思っただろ」


「い、いえ……そんな事」


 さすがに鋭い!

 実は思ったけれどね、少しだけ……


「てめ、生意気言うんじゃねぇ! 地獄に落とすぞ、こらぁ!」


「あ、すみません! でも何とかなりませんか? 日本の戦国時代への転生」

 

 俺はすかさず謝った。

 この状況でロキの機嫌を損ねて良い事はない。


「糞ぉ! 完全無欠の俺だって管轄外エリアへの転生は無理なんだよ」


「あ、そうっすか」


「何が、あ、そうっすかだ!!! 可愛げのない野郎だぜぇ」


「すみません。ロキ様の事を倍、信じます」


「よし! まあ良いや。そういう変わり身が早いのも実は俺様に似てて嫌いじゃないし、今回だけは許してやるぜぇ。じゃあ、さ。おめぇの希望する世界と似たような所ってのはどうだ」


 クールダウンさせられたロキは、俺の事をほんのちょっとだけ同情したようだ。

 何と妥協案を出して来たのである。


「え? 似たような所?」


「言っておく! 日本の戦国時代だけはぜって~無理だ、あきらめろ」


「……ですか」


 俺が肩を落とすと……


「ひひ、そうがっかりするな。転生先はな、戦国の次におめぇの好きな中世西洋風だぁ」


「中世西洋風?」


「おう! 剣と魔法でバンバン暴れる事が出来て、兇悪な魔物も跋扈ばっこするおもしれ~世界だからよぉ」


「ああ、ゲームで良くありがちな世界ですよね。まあ珍しくないっす」


「はん! 全部分かったみたいに偉そうに! おう! 代わりに素敵なオプションを付けてやる。お前はそこで、大好きなノブとかいう奴と極めて近い立場になって残りの人生を楽しめるって寸法だ、どうよ?」


「う~ん、西洋世界で信長? いまいちピンと来ないけど……どうしよう?」

 

 ええ~っ、西洋かよぉ……

 異世界ファンタジーは大好きだけど、俺はやはり日本の戦国時代の方が……


 俺がウダウダ迷っていると、超短気らしいロキはすぐ痺れを切らしたらしい。 


「あ~、もう面倒臭えなぁ! はい、これで決定、はい終わり!」


「そ、そんなぁ! 一択ですかぁ!」


「うるせぇ! ぐだぐだ言うんじゃねぇ! 俺様の管理している世界でお前が最も執着している、ノブと同じ体験が出来るのはその世界しか無いっつ~の」


「信長と同じ体験ですか……」


「おう! もう脚本は出来てる! お前は俺の管理する世界でノブになるんだよ。さっきぽっくり死んだ地方領主の息子が居るから、そいつと魂を交換な。顔も体型も今よりはいくらか恰好良くなるぜぇ」


 中世西洋風異世界で、信長と同じような体験かぁ……

 まあ……妥協するしかないか。

 「それも嫌なら、力だけが正義の原始時代へ行けよ」なんて命令されたら、それこそ絶対に嫌だし。


「う、うん……まあ仕方がないかぁ」


「おいおい、そんな、つまらなそうな顔するなよ。お前が行く世界はなぁ、戦国乱世の生きるか死ぬかですっげ~スリリング。もし勝ちぬければよぉ、今迄、お前には縁の無かった美少女、美女が、てんこもり~って場所だからな、ひひひひ」


 は?

 何げに凄い事言ってますよ、ロキ様ったら!


「び、び、び、美少女!? び、美女も、てんこもりって! ロキ様ぁ!!! ほ、本当ですかぁ!?」


「ひゃははは。おめぇもやっぱ男だなぁ! 俺様はよぉ、すげぇ噓つきって言われてるけどよぉ、つまらね~嘘だけは言わないって」


「…………」


「お、そうだ、てんこもりで思い出した。俺様からの特典、いわゆるお約束なチート能力をあげようじゃないか」


 ああ、希望が見えて来た。

 これはチャンスかもしれない。

 この俺が、キモいブタローがだよ!

 

 あの信長みたいになれて、可愛い女の子とも付き合える?

 そして、チート、チート、チートォ!

 チート能力は転生モノのお約束。

 やっとキタ~ッ!


 ロキをひたすらあがめ、おだてて……

 やっと巡って来た素晴らしい幸運か?

 

 俺は、叫んで躍り上がりたい気分を、何とか抑えたのであった。

東導 号作品、愛読者の皆様!

特報です!


『魔法女子学園の助っ人教師』


『第5巻』の発売が決定致しました!

皆様の多大なる応援のお陰です!

本当に、本当にありがとうございます!

発売日等、詳細は未定です。


◎そして!

この度『コミカライズ』が決定致しました。

宜しければ、11月12日付けの活動報告をご覧下さいませ。


既刊第1巻~4巻が発売中です。

店頭でぜひ、お手に取ってくだされば嬉しいです。

既刊が店頭にない場合は恐縮ですが、書店様にお問合せ下さい。

この機会に4巻まとめ買い、一気読みなどいかがでしょうか。

皆様の応援が、次の第6巻以降の『続刊』につながります。

何卒宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ