第45話「悪党よ、チャンスは一度だ!②」
容赦なく処刑すると言われ……
黙り込んだオライリーへ、俺は話を続けて行く。
「毒虫! 最後まで俺の話を良く聞け。まずはバカ息子共の処置だ」
「…………」
「お前の息子も含め、罪は相当重い。策謀に加わった貴族の息子共は身分を剥奪。全員を俺の作る機関所属の平民冒険者とする」
「ななな、なに~っ!!! む、息子を平民に貶め冒険者にするだとぉ!?」
これからの息子の運命を思うと……
父親オライリーは目の前が真っ暗になったらしい。
再び悔しそうに拳を握り締める。
身体も「ぶるぶる」と震わせていた。
しかし俺は、同情など一切しない。
いわば自業自得だ。
「これは王としての命令である。異論は一切許さん。まあ、お前らのバカ息子共は大事な人質でもあるからな」
「な、人質ぃ!?」
「そうだ! 親のお前らがまた変な気を起こしたら、バカ息子共は容赦なく殺す。だから有無は言わさん」
「俺の息子を! こ、殺すだとぉ! 卑怯なぁ!」
「卑怯? たわけ! そのままお前に、そっくりブーメランで返してやるわぁ」
「ち、ち、ち、畜生! 呪ってやるぞぉ、ケダモノぉ、外道ぉ、悪魔めぇ~~!」
オライリーから呪詛の言葉が洩れ、あまりの無念さだろうか、手足を「じたばた」させ地団太を踏んでいる。
ああ、オライリーの奴め。
息子を冒険者にするという事=即死刑なら分かる。
だが、本人の努力と運次第で生き抜き、挽回する機会があるというのに。
宰相まで務めたベテラン貴族が、可愛い息子の事となると完全に錯乱して、冷静さを欠いている。
しかし使い方次第では、この毒虫が俺の改革の重要なピースにもなるのだ。
「たわけが! 話を最後まで聞け。何だ、その情けない取り乱しようは」
「ううう……」
「俺の話はまだ終わっておらん! 良いか! バカ息子共はゴヴァンをリーダーとする冒険者のクランに入れ、身共に鍛え直させる」
「冒険者クラン!?」
俺はいろいろな役職や役目を配下に振り分け、命じる事を考えつつある。
その中で、ゴヴァンはその際立つ武芸を大いに活かして貰う。
反乱貴族の人質である、バカ息子共の『教育係』も任せる事にしたのだ。
「そうだ! 王国に跋扈する魔物を討伐するなど、多くの依頼をクリアし手柄を立て、結果、王国に貢献すれば貴族復帰も考えてやるわい」
「ま、ま、魔物討伐!? やっぱり無理だぁっ! バ、バッドが荒っぽい冒険者なんて出来るわけがないっ!」
罪のない王国民に散々暴力を振るう癖に、害を為す魔物とは戦えない?
甘ったれるな!
そんなの……単なる弱い者いじめだ。
「無理だと? それはお前の物の見方だ。可愛いと溺愛するバカ息子も、いずれは男として大空に羽ばたくものだぞ」
「う、うるさいっ! あいつは……バッドは、俺が傍に居ないとダメなんだぁ」
「それだ! あいつが駄目になったのは、お前の過保護が原因だ」
「過保護!? そんな事はない!」
「論より証拠! バカ息子はな、お前が甘やかし放題で育てた結果、理由も無く市民に暴行する屑ゴミとなった」
「う、嘘だ! お前の言う事など、一切信じないぞ」
「たわけ! 過保護なお前が息子の悪行を知らぬわけがない!」
「…………」
「バカ息子にはこれから話す。それよりお前には別の大事な話がある」
「べ、別の大事な話だと! ふ、ふざけるなぁ!」
俺がいくら諭しても……
やはりオライリーは冷静な判断が出来ないようだ。
こうなれば、奴とは筋を通した形で、サシの話し合いをするしかない。
「おい、ゴヴァン、牢の扉を開けろ」
「え、ええっ!? アーサー王子、宜しいんですか?」
「ああ、これから男と男が大事な話をする。鉄格子越しじゃあ、出来ない話だ」
促され、ゴヴァンはためらいながら鍵束を差し出した。
受け取った俺は、オライリーの牢の鍵を開け、扉を開く。
「うがあああああああ~~っ!」
瞬間!
オライリーが獣のように吼え、脱兎の如く、駆け出していた。
年齢に似合わず、思いがけないほど敏捷な身のこなし。
ゴヴァンの脇をすり抜け、突進したオライリーは悪鬼のような顔付きで俺に掴みかかった。
「し、しまった!」
思わず叫ぶゴヴァン。
俺が不意を衝かれ、危害を加えられると思ったに違いない。
「うがっ! うががががっ!」
オライリーは激高して我を忘れているようだ。
まるでたがが外れ、本能むきだしの魔物である。
息子可愛さのあまり、一種のトランス状態に陥っているのであろう。
一方、俺は腕組をしながら、そのままオライリーを見つめている。
ゴヴァンからしてみれば、まるで無抵抗に見えたに違いない。
しかし、オライリーは何と!
今にも掴みかかるぞという格好のまま、
ぴたり!
と動きを止めていた。
俺から発せられる強力な魔力波が闘気として放出され、獣に成り果てたオライリーの動きを封じているのだ。
「落ち着け、しっ!」
俺はどこぞの『カリスマドッグトレーナー』のように躾の声をかけた。
「くっ!」
するとオライリーの身体から力が抜けたのか、床にへなへなと崩れ落ちた。
飢えた獣のようだった目にも、ようやく理性の色が戻って来た。
俺は不敵に笑い、きっぱりと言い放つ。
「ふ! 毒虫めが! どうやら話が出来る状態になったようだな。お前には別の役目がある。まあ、受けるか受けないかは自由だ」
「…………」
脱力して言葉が出ないらしいオライリー。
俺は、今回のキモである『依頼』を言い放つ。
「俺は冒険者ギルドと同時に商業者ギルドも創立する。お前にギルド責任者のひとり、つまり商人になって貰うぞ」
「な、なにっ! しょ、商人だと!?」
上級貴族の元宰相を商人にする?
全くの想定外!
俺の突飛な命令に対し、オライリーは吃驚し、完全に固まっていたのであった。
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