第43話「チート能力本格始動④」
「ゴヴァン、作戦通りに行くぞ!」
「了解! アーサー様!」
俺とゴヴァンは疾駆する馬を並走させ、意思確認をし合った。
いくら俺が邪神ロキの加護を受けたチート魔人でも。
いくらゴヴァンが、天賦の才を欲しいままにする一騎当千の天才騎士でも。
人間たったふたりに対し、ゴブリン200匹強では結構な差がある。
普通は、そんな無謀な戦いなど自ら死にに行くようなものだ。
まあ、俺なんか、もっと本気を出して無双し、倒しても良いのだが……
それはまた次回にとっておくとして……
ここでは、魔法を使った、かく乱作戦を行う事にしたのだ。
さっきも言ったけど、ゴブリンは眩しい光、そして火が苦手。
俺は魔法で両方とも対応可能だが、火の方はまずい。
ここは森に囲まれた草原。
燃えそうなものがたくさんある。
周囲の草や木々に燃え移って、山火事とか、大ごとになったらヤバイ。
なので、今回は『光』のみでかく乱する事に。
「それっ」
気合一閃!
魔法発動!
俺の拳からは、いくつも光の球が放たれた。
直径は30㎝くらいの、白光する魔光球だ。
元々、この魔光球は迷宮や遺跡探索の際、暗闇を照らす灯りとして使う。
それを俺が工夫し、思いっきり強力にしたのである。
放たれた光球は、凄まじい速度で飛んで行った。
そして、迫って来るゴブリン共の真っただ中で、大きく膨張し、眩く輝く。
「ぎぇおおおおっ」
「きええええ~ん」
「ぐわああああ」
「あぎゃうううっ」
おそましい!
まさに人外の声。
魔光球の眩い光に驚き、この世のモノとも思えないおぞましい叫びをあげ、ゴブリン共は大混乱に陥った。
弱点の強い光に怯えたのだ。
たちまち戦意を喪失する。
まさにこちらが一方的に『殲滅』出来るチャンスだ。
「競争だっ、良いかぁ、ゴヴァン!」
「応!」
ゴヴァンは慣れた仕草で、馬上にて大剣を抜いた。
俺も同じく剣を抜き、改めて気合を入れ直した。
幸いにも、相手はゴブリン、俺は憐憫の情を全く持たない。
何故ならば、奴らは捕食者として散々人間を殺したから。
『戦う者』として、王国の民を守り、害する敵を倒すのは王たる俺の義務だ。
中世風戦国の世に放り込まれた俺は、ガルドルド帝国を始め、いずれは敵である『人間』と戦い、倒さなければならない。
だが愛する大事な存在を守る為に……
臆していては駄目だ。
馬上から剣を振るう俺に、柔らかい肉を切り裂く確かな手応えが伝わる。
ゴブリンが発する怖ろしい断末魔の悲鳴が耳へ、血の臭いが鼻へ入って来る。
こういう外道を、または理屈の通らない侵略者を退けなければ、大事な家族が殺される……
俺は勇気を奮い、血しぶきを浴びながら、必死に剣を振るい続けたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
大混乱に陥ったゴブリン共は俺達たったふたりに対し、呆気なく瓦解した。
群れの約2/3強を倒されると、形勢不利と見て、散り散りに逃げ出したのである。
こういう場合も俺とゴヴァンは当然想定していた。
逃げるゴブリンを何匹か倒しただけで、深追いはしなかったのだ。
そんなこんなで……
俺の初陣は終わった。
静けさが戻った草原で、俺とゴヴァンは馬を戻す。
俺達を突破するゴブリンは数匹いたが、歴戦の騎士ガレスなら大丈夫。
数頭のゴブリンなど、足手まといの息子が居たって全然平気だろう。
俺の見込み通り、生命反応を伝える波動も無事伝わって来る。
ガレス親子は無事な筈だ。
「にやり」と笑い、俺はゴヴァンへ問いかける。
「おい、ゴヴァン。倒したゴブリンは、全部数えられたか?」
「い、いえ! 40匹までは覚えていますけどね」
「ははははは、俺もだ、途中までしか覚えておらん! 引き分けだな?」
「でも……完全にアーサー様の方が多いですよ」
「ああ、ほんのちょっとだけな」
「ははは、何すか、それ、謙遜ですね。……俺、また負けましたよ」
ゴヴァンの言う通り、俺は嘘ついた。
実はしっかり数えていた。
俺が83匹、ゴヴァンは61匹。
常人の10倍能力って、そんなところまでロキの奴、チートを与えてくれていたんだ。
意気揚々と戻る俺達の視線に、待機中のガレス父子が飛び込んで来た。
馬に乗ったまま、じいっと俺達を見つめてる。
俺とゴヴァンは声を張り上げ、無事と勝利を告げてやる。
「お~い! 勝ったぞ、ガレス、エイルマー」
「伯爵! 圧勝ですよぉ!!!」
すると!
ガレスもエイルマーも馬を走らせ、こっちへやって来た。
そして、「ぱっ」と馬を降りると……
俺達の馬の傍らに、ふたりとも跪き、丁寧に頭を下げたのである。
まず口を開き、俺を呼んだのは父ガレスだ。
「アーサー王子!」
伝わって来る波動で分かった。
ガレスは……
俺にひたすら詫びようとしているのだ。
自分達をゴブリンの群れに突っ込ませる……
そして名誉の戦死に見せかけ殺す。
ガレスが考えていたのとは全く真逆の展開になった。
俺とゴヴァンが、無茶ともいえる戦いに身を投じたのを見て……
俺を疑い、下種な想像をした自分を、騎士として大いに恥じたのだろう。
片や、息子のエイルマーも同じだ。
貴族の身分をかさにして、王都市民を苛めるという、己の卑怯な行いを恥じたに違いない。
どうやら……
今回の戦いを考え、実行した『俺の気持ち』は充分に伝わったようである。
「わ、私はアーサー王子を誤解しておりました! ま、誠に! も、も、申し訳ありませんっ!!!」
詫びる父に続き、エイルマーも大声で叫ぶ。
「アーサー様ぁ! 私もっ! 心を入れ替えますっ! 思いっきり、き、鍛えて下さいっ! 父と共にっ! か、必ず、貴方のお役に立ちますっ!」
ふたりが初めて見せる真摯な気持ち……
ゴヴァンも感じたのであろう。
黙って俺を見つめて来た。
こうなれば、もう返事は決まっている。
俺は敢えて詫びるふたりを見ず、天を見上げたった一言、
「許す!!!」
そう大声で叫んだのであった。
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