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第42話「チート能力本格始動③」

 山をいくつか抜け、俺達は結構広い草原に出た。

 見やれば、あちこちに小さな雑木林が点在している。

 村長の話によると、この草原にゴブリンが穴を掘って住んでいるらしい。


 前世でいえば、ゴブリンって、プレイリードッグみたいな習性らしい。

 まあ、あんなに可愛くはないから、プレイリードッグには大変失礼だけどね。


 やがて、前方にゴブリン共が現れた。

 俺達の気配を察し、次から次へと、数を頼んでうじゃうじゃ出て来る。

 

 こいつらが、先ほどの村に大きな被害をもたらしている。

 

 村民が丹精込めて育てた作物の実った畑を荒らすのは当たり前。

 少しでも隙があれば容赦なく、人間や家畜を大群で襲って喰い殺すという悪逆非道ぶりだ。

 まあ奴らは捕食者だから、人間を襲うのは当たり前といえなくもない。

 だが、『餌』である俺達が「はい、どうぞ。ゴブリン様食べて下さい」と無抵抗になるわけにいかない。

 

 だから!

 殺られる前に殺る

 すなわち……ぶっ倒す!

 それしかない。


 でも結構な数だ。

 俺の『試運転』には少しきつい相手かも。

 村長の話通り、パッと見て奴らの数は楽に200匹を超えていた。

 

 と、その時。

 馬上でゴブリンを見据える俺に、ガレスが叫ぶように呼び掛ける。


「お、王子っ!」


「なんだ?」


「なんだ? ではありませんっ! あの群れに、ゴヴァンとたったふたりで突っ込むとは……あ、貴方は死ぬおつもりなのですか?」


 ガレスの、忠臣らしいセリフを聞き、俺は思わず笑ってしまう。


「ははははは!」


「な、な、何が可笑しいのですかっ?」


 せっかく真面目に心配したのに、何故笑う!

 と、ガレスからは凄まじい怒りの波動が伝わって来る。


「たわけっ! これが笑わずにいられるか」


「な!」


 からかわれ、その上、お前は馬鹿だと言われ……

 怒りで目をカッと見開くガレスだが、俺は動じない。

 皮肉たっぷりに言ってやる。


「俺が魔物に喰われ、死ぬ事を心配しているのか? お前が容赦なく殺そうとした男を……逆に願ったり叶ったりじゃないのか?」


「う!」


 矛盾を指摘され、絶句するガレスだが……

 俺の言葉を聞き、ガレスの息子エイルマーが父と同じように吃驚する。

 どうやら息子へは……

 俺の『暗殺未遂事件』をガレスは告げていなかったらしい。


「な!? ち、父上っ! それは! ど、どういう事ですかっ!?」


「ぐ…………」


 息子に詰め寄られ、ガレスは言葉が出て来ない。

 じゃあ、俺が代わりに言ってやろう。


「何だ、ガレス。息子には反逆未遂事件を教えてはいなかったのか?」


「は、は、反逆未遂!? 王子! そ、それ!? ほ、本当ですかっ!」


 俺の言葉を聞き、エイルマーの顔色が完全に変わった。

 普段オライリーの息子バッドとつるみ、軟弱者と俺の悪口は散々言っていただろうが……

 さすがに、父が王子暗殺を謀り、王家に反逆するのとはわけが違う。

 全然違う。


「…………」


 遂にガレスは黙り込んでしまった。

 そんな父親をスルーし、俺は息子エイルマーへ言う。

 厳然たる事実を。

 いずれ分かる事なのだから。


「聞け、エイルマー!」


「は、はい! お、王子!」


「お前の父親はな、オライリーの馬鹿と共謀し、俺を殺そうとした」


「え!?」


「だから素行不良のお前共々、自宅へ謹慎、蟄居させた。首謀者のオライリーと態度が改まらないバッドは地下牢へ放り込んだ」


「な、何故! 父上がアーサー王子を害そうなどと!」


「なあに簡単さ。跡取りの俺が頼りなく、ひ弱と見たのであろう。このままではアルカディア王国が立ち行かぬと考えたのだ」


「王子が頼りない、ひ弱……う!」


 と言い、エイルマーは慌てて言葉を呑み込んだ。

 こいつだって俺への見方は、父親と全く同じだったに違いない。


 だがこの場では敢えて指摘せず、俺はそのまま話を続ける。


「そうだ! しかし俺も簡単には死にたくない。だから、そろそろ本気を出す事に決めた」


「そ、そろそろ!? ほ、ほ、本気を出す!? のですか?」


「ああ、エイルマー、いいかげん本気を出すぞ! 可愛い嫁も貰ったしな」


 俺は「にやり」と笑い、項垂れたままのガレスへ向き直った。


「おい、ガレス!」


「は、ははっ!」


「とりあえず話は後だ。先ほどの打合せ通りに戦う、後方は任せたぞ」


「は、は、はいっ!」


 俺の言葉を聞き、ガレスは何とか顔をあげた。

 少し顔色が青ざめているが、眼光だけは鋭い。


 さすが、歴戦の騎士。

 いつまで落ち込んでいても始まらないと、覚悟を決め、開き直ったのであろう。


「ち、父上! 王子と打合せ通りにって?」


 訝し気な表情のエイルマーからの問いに対し、ガレスは、俺の指示を伝える。


「エ、エイルマー! 王子の命で! わ、私達は後方待機なのだ!」


「え? 後方待機!? ゴブリンと!? た、た、戦わないのですかっ!」


 そんな父子のやりとりなどおかまいなく、ゴブリン共は俺達を見つけた。

 結構足が速い。

 こちらへ、どんどん迫って来る。


 さあ! いよいよ実戦だ。

 俺は気合を入れ直し、勝負開始を宣言する。


「よっしゃ! ゴヴァン行くぞ!」


 ゴヴァンに突撃を促すと、さすが異世界の前田慶次だ。

 「圧倒的に不利な戦いこそ、面白い!」とばかりに、ニヒルに且つ面白そうに笑いやがった。


「ははっ!」


「良い面構えだな、ゴヴァン! 腕相撲の続きだ。どちらが多く倒すか、いざ勝負っ!」


「御意!」


 俺とゴヴァンは顔を見合わせ大きく頷くと……

 騎乗する馬の横腹を足で叩き、ゴブリンの大群へ向かって走り出したのである。

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