第40話「チート能力本格始動①」
初めて出会った時から思う。
話してから尚更、確信した。
ロキは神だと自称するけれど、凄く適当で、いい加減な邪神。
悪魔の方が言い得て妙。
だけど……
いろいろ考えた末、俺は奴のアドバイスに従う事にした。
この世界の管理神ロキの言う事を聞き、敬虔な信者として信仰心を上げれば……
比例して奴の機嫌が上げ上げになり、昨夜のグリフォンみたく、また何か良い物をくれるかもしれない。
それに、奴の寂しさと退屈さに付け込み、チートな加護をいっぱい貰っているしね。
生き残る為には何でもやると決めた。
さて、ロキがくれた加護の中で、最もありがたく助かったのは……
何といっても織田信長の剛毅な性格を盛り込んでくれた事。
なんたって俺の超チキンな臆病気質を大幅に補正してくれたから。
ただでさえコミュ症気味な俺が、転生したアーサーの跡を継ぎ、王子として堂々と物言いして振る舞えているからね。
まあ、考えてみれば……
ここまで俺は、マイペースな草食君アーサーの遺産、壊れた人間関係の回復と根回しに必死だった。
だって、王宮内で気弱なアーサーは全然求心力がなかったから……
すっごく苦労したよ。
アーサーは男としては真面目で誠実な奴。
だけど、真面目で誠実だけじゃあ、良い施政者とは限らない。
まさにそれを地で行っていた。
俺は幽体状態で死んだアーサーの肉体へ入り込んだ。
だから外見は同じだし、引き継いだアーサーの知識で相手を知っている。
とはいえ……
俺自身は考え方や価値観、生活習慣を含め全く違う人間。
これから生死を共にする相手と上手くやって行く為には、強固な人間関係を新たに構築しなければならない。
おっとぉ!
ここで俺はハッとした。
頭の中に、ある記憶が甦り、凄くヤバイ想像をしてしまったのだ。
もしかして、アーサーの奴!
……自分が血を分けた弟に暗殺されるかもしれないって……
知っていたのだろうか?
入れ替わった、あの日……
あいつが言っていた。
誤って木から落ちて死んだって……
でも!
まさか!?
殺される前に、自らわざと落ちた!?
い、いや、やめよう!
もうアーサーはこの世界に居ない。
彼は俺に後を託し、見知らぬ別世界へ旅立って行った。
だからもうあまり深く……考えないようにしよう。
だって!
過ぎた時間は絶対に戻らない。
俺もアーサーも、不慮の事故で死んだのだから……それで良い。
あんなに可愛い妹のエリザベスを愛していた彼が、自死などありえない。
それより……
この世界で俺が頑張るのと同様に、転生した次の世界で、哀れなアーサーには幸せになって欲しいと願うばかりだ。
閑話休題。
追加になったロキのアドバイスというのは、もっと魔法の練習をしろという事。
でも考えてみたら、俺の能力は魔法だけじゃない。
身体強化を含め、自身の能力全てを改めて把握し、しっかり試す必要があると思ったもの。
そう、俺は肉体だけアーサー王子として転生し、今の身体になってから……
魔法を含め、ロキから授けられた力をいまいち使いこなしてはいない。
否!
いまいちどころか、いまさん以上、能力を発揮してはいないから。
これまでやった事といえば、いきなり乗馬をこなし、乾物……じゃなかった、奸物 オライリーを存分にぶん殴り、嫁イシュタルの部屋の扉を蹴り破っただけだもの。
ああ、そうだ。
イシュタルの部下オーギュスタと腕相撲勝負もやったっけ。
同じくエリックの弟ゴヴァンともね……
だけど、どれも地味。
凶悪な魔物の群れをぶっ潰したとかじゃない。
所詮、ゆっくり試運転レベル。
本格的始動にはまだまだ。
幸い……
先に行った会議で、俺の政策を聞かせた9人には『考える時間』を与えた。
なので、その間、俺も自身の本格始動&ビルドアップに勤しむ事にしたのだ。
かと言って嫁と小姑を放置すれば、ふたりとも拗ねてしまう。
家臣にもしたから、放置プレイで忠誠心がいきなり下がるのは愚の骨頂。
なので、ふたりの相手をしながら適度に実施する事とする。
何?
超可愛い嫁や妹の相手をしながら、適度に鍛錬、ふざけるなって?
お前みたいなリア充、即、爆発しろ?
おいおい、また責めるの?
いやいや!
少しくらいは許してくれ。
これくらい、良いじゃないの。
だってさ、俺は生まれてから17年間、ずっと彼女なしだった。
それどころか、いつでも「キモイ!」とか「ばい菌!」とか周囲の女子達から、嫌われ罵倒され続けて来た。
やっと来た『モテ期』なんだから少しは勘弁して欲しい。
という事で……
俺のビルドアップ第一弾。
魔法の練習、当然先生は嫁イシュタル。
精神集中、発動の魔法基礎を、彼女の部屋にて教えて貰う。
かと言って、いきなり能力全開の、フルパワーは避けた。
ロキから貰った魔獣グリフォンも暫く呼ばない。
何故なら、これ迄のアーサーとのギャップから、あまりにも目立ってしまうから。
でも、さすがにロキ。
愛する嫁に手取り足取り魔法を教えて貰ったので、コツをすぐ覚えた。
うん、魔法を使う勝手が分かったというか。
それに熱々イチャ授業により、イシュタルとの愛も凄く深まった。
そこまでロキが計算していたのなら、さすがに神様だ。
しかしこうなると……
妹エリザベスがむくれてしまう。
なので、ビルドアップ第ニ弾を行った。
エリザベスには身体の鍛錬に付き合って貰った。
それも、王宮の中庭で一緒に身体を動かしたのだ。
俺のペースでやると、常人のエリザベスが倒れてしまう。
なので、のんびりまったり。
一緒に馬にも乗った。
するとエリザベスは大喜び。
イシュタルへの対抗心は勿論、愛する兄上とのお洒落な『健康&乗馬デート』だと受け取ってくれたらしい。
結果、エリザベスとの愛?も深まった。
俺も身体の使い方のコツを掴み、乗馬も著しく上達した。
後は……実践あるのみ。
誰だ?
また砕け散ろとか言ってる?
それは分かるけど……
ああ、良い事を思いついたぞ。
この『実践』を、文字通り、実のある『実戦』で行くんだ。
俺はそう、決めたのであった。
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