第39話「邪神ロキ再び②」
俺の『願い』を聞いてロキは困るのかと思えば、却って嬉しそうだ。
どうして?
不思議に思ったら、何と!
ロキの奴、予備動作無しで褒め殺しにも来やがった!
「おお、偉いぞ、太郎! 凄いぞ太郎! 素晴らしいぞ太郎よぉ!」
「……そこまで褒められると何か軽くて嘘くさいっす」
俺はやんわり抗議をしたが、ロキは全然気にしていない。
どうやら、ご機嫌うるわしく絶好調らしい。
「おい! おめぇもはっきり言うようになったねぇ。俺様のお気に入りの使徒として素晴らしく成長したねぇ! こりゃ一本取られたねぇ!」
「あ、ありがとうございます」
「はっははは。わ~ったよ。で、何が欲しい?」
おお!
やっぱり機嫌が良いんだ。
あっちから、何が欲しいか聞いて来たぜ。
これは大チャ~ンス!!!
んでも、俺の希望はず~っと同じ。
ぶれない、折れない、変わらない!
「召喚魔法っす!! ロキ様より呼び甲斐のある、使い勝手抜群の奴が欲しいっす」
望みを尋ねられ、俺は即答した。
そろそろ人間以外で、『使える手下』が欲しかったから。
忠実な『しもべ』って奴をね。
絶対に言えないけど、ロキとは真逆、つまり『真摯で誠実な魔物さん』が希望でっす。
そう不真面目さんは、きっぱりお断りするのでっす。
「はぁ、ロキ様より呼び甲斐のある?」
「えへへ」
「くぉら! 笑って誤魔化すんじゃねぇ。てめぇは相変わらず生意気だけど、まあいいっか。わ~った、今から上席に聞いてみるわ」
軽いジャブの応酬があった後、意外にも、ロキはあっさりOKしてくれた。
「すっ」と速攻で姿を消してしまう。
へぇ、ラッキー、駄目もとでも言ってみるもんだ。
で、約30分後。
再び、ロキは「ぱっ」と何もない空間から現れた。
「お~い、喜べぇ! おめぇに召喚魔法使用の許可が下りたよ。魔物をぱぱっと召喚出来るそうだぞ! これで益々魔王っぽくなるよな!」
「わお! 本当っすか?」
「おう! 但し、これから俺が言う魔物に限定されるがな。それと不要な場合はパスって遠慮なく言ってくれや」
やった~
召喚、召喚、召喚魔法!
俺は思わず小躍りしてしまう。
うん!
実は召喚魔法こそ、中二病たる俺の憧れ。
皆さんも分かるでしょ?
下手な攻撃魔法より、召喚魔法!
自分が戦わないで、何でもしもべにやらせる。
他力本願万歳!
前世で今時ゲームの主流といって間違いないもん。
つまり、俺の趣味と実益を兼ねたものに他ならない。
「嬉しいです、ロキ様、仏様」
「仏様って、おいこら! その名前は俺の管轄外だからNGなんだよ! 俺の信仰度が上がる呼び方をしろ、な!」
「すんませ~ん、わっかりました~、ひへっへへへへ、偉大なるロキ様ぁ」
「あら、おめぇ~、俺と似て来たな。ハイエナみてぇな笑い方する超軽~いおめぇを見たらよぉ、きっと嫁と妹はドン引きだぜぇ、えれぇ嫌われるぜぇ! ひへっへへへ」
いやいやいや!
悪いけど、今の状況ではイシュタルとエリザベスどころじゃないっす。
さあ、召喚魔法を早くお願いしま~っす。
「ロキ様ぁ、早く! 早く! 早くぅ~! お風呂にする? それとも私ぃ?」
「うおっ! せっつくねぇ! じゃあ、召喚魔法の魔物候補ど~ん!」
「わ~い! すっげぇ、わくわくしまっす」
「よし! エントリーナンバー1ば~ん!」
「いよいよ……ごく!」
「じゃ~ん!! ゾ~ンビ」
「……パスです」
「へへへ、やっぱ反応薄いね、まっ、ゾンビじゃしゃあねぇか。じゃあエントリーナンバー2ば~ん!」
「……ごく!」
「スッケルト~ン」
「……パス! あ、あのぉ……不死者の軍団は、冷酷無比、残虐非道……悪逆な王子として俺の爽やかイメージがダウンになるんでNGですよ」
「んだよぉ! 我儘言うんじゃねぇよ! ブタローの癖に、何が爽やかイメージだ!」
「てへぺろ」
「古いギャグ、カマしてんじゃねぇぞ、こら! 不死者は悪の魔王向きじゃねぇのかよぉ! それによ、ゾンビやスッケルト~ンは超の付くコスト安でいっぱい呼べるだぜぇ」
「ノーサンキューっす」
「やっぱ要らねぇってか……しゃーねぇ、次、エントリーナンバー3ば~ん!」
「うし! ……こ、今度こそ期待!」
「じゃじゃ~ん! ゴッブリ~ン」
「は~、NGNGNGっす! そんなん、やられキャラの代表です、パス、パス!」
「どっかのヒーローみたいに無駄無駄無駄みたいな言い方しやがって! 1匹じゃなくて10匹に増やすけど駄目かよ? おめぇの世界じゃ、某ラノベ小説の主人公までば~んと張っているくれぇだぜ」
「駄目! 絶対NGっす」
「ちっ! そうかよ! じゃあ、エントリーナンバー4ば~ん!」
「今度こそ……今度こそぉ、良いの出してくださいよ!」
「ひへへへ! 4番はニ~ンフ! それも超べっぴんニ~ンフ、ちょっち貧乳だけど、スタイル抜群なスレンダー超美少女ニ~ンフ! ついでにドスケベとくらぁ! だからお前は何でもやり放題、どこでもお触りOKの従順ニ~ンフぅ!」
「ごくり! ううう……個人的にはすっごく興味津々なんですが……」
と、言いつつ……
俺はそっと傍らのイシュタルを見た。
さすがに今の俺のコメントを聞かれたらまずい。
新婚早々離婚という地雷が大爆発しかねない。
だが……
ロキの魔法はバッチリ効いていた。
彼女は幸せそうに眠っている。
ああ、無事平穏こそ我が人生。
「だろ! だろ! エッチし放題だぜぇ!!! 男のロマンだぜぇ!!!」
ロキはガンガン煽って来る。
超が付く美少女ニンフ……
可愛いだろうし憧れなんだけど、残念だが俺のキャパはもう一杯である……
「うう……この嫁とあの小姑の事を考えると……おっそろしい地獄が見えていますので、泣く泣く諦めます……」
「何だよ~、そんなの、奴らにば~んと強気に言えよ、俺は、色々な女が大好きな超ドスケベ男だってよぉ、牝はいくら居てもOK! ぎらぎらびんびん性欲全開な一匹の牡だって、言ってみ?」
「そんな事……多分、無理です。瞬殺されます」
「なんでぇ、いくじなし野郎! おめぇは第六天の魔王ノブだろうが! じゃあ今回はこれで最後だぜぇ、エントリーナンバー5ば~ん!」
「……ラ、ラストですか!?」
「おう! ラストはグリフォ~ン! 結構強いし、大空飛び放題~~、おめぇの移動手段にも最適の魔物だぜぇ!!!」
「ええっ! グリフォン! す、凄く良いじゃあないですかぁ! ぜひ欲しいっ! エントリーしますっ!」
グリフォンは鷲の身体と翼の上半身、そして獅子の下半身を持つ魔物だ。
中世西洋の貴族の紋章には獅子と並んで良く採用されるくらい人気がある。
ロキの言う通り、結構どころじゃなく強靭な肉体と凄まじい戦闘力を誇る。
大空を高速で移動出来るから、俺の足、それも空の足としても最適だ。
にやりと笑ったロキは俺に対し、何やら呟いた。
すると、俺の脳裏に一体の魔物がイメージされた……
こうして……
俺はロキから、魔獣グリフォンをゲットしたのである。
「これでよしと! ひえっひひひ!」
大笑いするロキに俺は素朴な質問をした。
「あのぉ……結果論ですが、最初からグリフォンだけ出してくれても良かったんじゃあ」
「ば~か、そんなんじゃ今回のイベントが盛り上がりに欠けるだろ」
「…………」
「それと! ひとつアドバイスをしてやろう! 今後の事もあるからよぉ、魔法の練習もしっかりしておけ! ほれ、可愛い先生がよぉ、そこに居るだろ?」
ロキは、相変わらず幸せそうに眠るイシュタルを指さした。
そして大きな欠伸をする。
「ふぁぁ~~っ、サービスし過ぎて、そろそろ眠くなってきちまった。俺様は帰るぜぇ~」
「あ、待ってくださいよ、グリフォンを呼び出す時はどうすれば?」
「んなもん、適当だよ。おめぇの感覚通りに呼び出せばいいんだよ。おいで~、はいよってな、ひゃはははははは! そうだ、俺様と違って呼び出したら名前を付けてやれよ、じゃな~」
超が付く、いいかげんなロキは俺相手に遊び疲れたのか、また音も立てずに消えて行った。
邪神の放つ威圧的なプレッシャーがなくなり、一気に緊張感が消えた。
心が解放された俺は、ロキではないけれど、凄く眠くなって来た……
……とりあえず、いろいろあった日で疲れた。
だが、たくさん収穫もあり、確実に前進出来た……
生き延びる確率が……高まった。
睡魔に捕まって眠りに落ちる前に、俺はそう思い、少しだけホッとしたのであった。
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