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第32話「平手爺やと語る国家運営②」

 嫁イシュタルと妹エリザベスを『宰相補佐』として登用とうようする。

 俺の突拍子もない提案を聞き、マッケンジー公爵は驚きで完全に固まってしまった。


 そんな『爺』を見て、俺は豪快に笑う。

 多分、信長も……

 天へ突き抜けるみたいに、気持ち良く爽快な笑い方をしていたと思うのだ。


「ははははは! そう驚くな、爺。ふたりを使うのは、身内だからというだけではけしてない」


「は、はい」


「夫、兄としての贔屓目ひいきめでもない。単に女子だから、若輩だからいなという声も一切排除する。理由は簡単、簡単な手解ほどきをし、しかるべき経験者の補佐役をつければ、ふたりは政務をしっかり行えるからだ」


「そ、そうなのですか?」


「うむ! 俺が保証する。両名とも相当の切れ者だぞ」


「切れ者……」


「まあすぐに分かる! 見ていろ、爺」


「…………」


 ショックで黙り込んでしまったマッケンジー公爵へ……

 俺は自信たっぷりに告げた。

 

 そう!

 自信以上の確信がある。

 イシュタルもエリザベスも、与えた仕事をしっかりやり遂げると。


 更に俺は、思惑おもわくを告げる。


「それにな、爺……この女子ふたりの登用には他にも意味があるのだ」


「は? ほ、他にも意味があると申しますと?」


「うむ! 爺も知っているであろう? イシュタルとエリザベスの仲は険悪だ」


「…………」


「いろいろと理由わけはあるが……まあ所詮は他愛ない理由だ。ようはコミュニケーションの不足なのだ」


「な、成る程!」


「そのふたりをな、様々な仕事を与えて競わせる。いずれはお互いを良きライバルとして、認め合う筈だ。俺はそうなると信じている」


「むうう……」


「あと、ふたりを登用する理由が、もうひとつ!」


「も、もうひとつ?」


「ああ、裏切者オライリーからも報告が逐一行っているとは思うが、ガルドルド帝国から見て、俺は底なしの馬鹿王子で通っておる」


「…………」


 馬鹿王子……

 さすがに「そうですね」と同意するわけには行かないのだろう。

 マッケンジー公爵は無言で返した。


「爺!この女子ふたりの登用はすぐ帝国へも伝わる。奴らはどう考えると思う?」


「ううむ……」


「ははははは! 答えにくいか、爺! ならば俺から言おう! こうだ! アルカディアの馬鹿王子が、また馬鹿をやらかした。今度は何と! 政務もろくに出来ない、若輩の嫁と妹を重く用いる……まるで、ままごと遊びだとな」


「…………」


「アルカディアのアーサーは馬鹿だと思っていたが全く違う。真性の超大馬鹿だ! そう……確信する筈さ」


「お、おおお……確かに!」


「ふふふ、そこで納得するな爺!」


「こ、これは失礼をば!」


「となれば、爺の考えておる通り、帝国は俺達への攻めを後回しにし、しばし放っておくだろう。あんな馬鹿の治める国などいつでも攻め取れると考えてな。その結果、奴らは先に隣国アヴァロンへの攻略に力を注ぐ……」


「御意!」


「その間、こちらは時間が稼げる。隠密に迅速に、対帝国の準備を着々と進める事が出来よう」


「はい!」


「アヴァロンからもすぐ何らかの動きがあろう。イシュタルの父は凡庸ぼんようではないからな。爺はアヴァロンへ出向いて俺の縁談をまとめたから、あちらの親父殿の事を良く知っているであろう」


「御意!」


「爺! クロージングだ。シンプルにまとめるぞ。俺の方針は富国強兵! この4文字だ」


「は! 分かり易いですね」


「おうよ! では話を戻そうか、爺」


「話を、戻すのでございますか?」


「ああ、オライリー、シードルフ、その他陰謀に加わった貴族どもには、もう一度だけチャンスをやる」


「若! な、何を! 爺はそれだけは! さ、賛同出来ませぬ!」


「何故だ?」


「な、何故って!? や、奴らは! 若! あ、貴方様を殺そうとした者どもですぞっ!」


「おう! 爺に言われずとも、そんな事はとうに分かっておるわい」


「で、ではどうして!」


「爺、思い出せ! 俺は申したであろう? 我が国には人が居ないとな」


「人が居ない?」


「ああ! もし奴らを一気に殺せば、王国はとんでもなく人手不足におちいるわい」


「で、ですが!」


「まあ落ち着いて聞け、爺。毒虫のオライリーは別格として、奴らが反乱を企てたのは、俺が頼りなかったからだ」


「…………」


「現状の不満と将来への不安が相当あった。だから俺もここは譲歩してやるのだ」


「…………」


「だが爺、安心しろ。奴らを無条件には許さん」


「と、申しますと?」


「交換条件を出す」


「交換条件?」


「ああ……俺に対して、再びよこしまな考えを持ったら、その時は家族もろとも極刑に処す、容赦しないとな」


「な、成る程!」


「それにしっかり見返りもつける。ギブアンドテイク、飴と鞭。結果に応じ、現在より上の地位と褒賞も与えようとな」


「御意!」


「それと、もうひとつ」


「も、もうひとつ?」


「俺は今後、人材登用に関しては身分や出自にこだわらん。それも奴らに申し渡す。貴族という身分に関係なく、いちから競争だと伝えるぞ」


「身分出自に拘らず、いちから競争……若、貴族や騎士以外、商人や平民も入れてですか?」


「おう、そうだ! 血筋に関係なく優れた人物を採用し、適材適所に配置。全員が競争しながら、しっかり働いて貰う。それが俺の考えだ」


「お、おお……」


「それとな、爺。人集めに関してはこういう事も考えておる」


 俺は、ずっと考えていたアイディアをマッケンジー公爵へ伝えた。


「な、何と! 若がそんな事をお考えに!」


「ああ、この方法が上手く行けば経費節減、それに最後にあげた情報収集にも役立つわい。いわば一石二鳥。いや三鳥、四鳥以上にもなりうるぞ」


「わ、わ、分かりました……それで若」


「おう!」


「結局、首謀者オライリーの処遇はいかが致しますか? 全財産没収の上、死罪が妥当かと思いますが」


「暫し待て! もう少し放置した後、俺が奴と直接話す」


「え? 若が? 直接オライリーと?」


「ああ、俺自ら牢獄へ出向いてな」


「…………」


 またも黙り込んだマッケンジー公爵は……

 今度は畏怖するような眼差しで、俺を「じっ」と見つめたのである。

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