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第29話「やんちゃな慶次をコレクション!③」

 一説によれば、信長は部屋中に轟くほど大声だったという。

 同じく大声で有名な秀吉との掛け合いはさぞかしうるさかった事だろう。

 

 信長&秀吉と比べ、けして劣らない俺の一喝に驚くマイルズ兄弟。


「ゴヴァン! プーのお前には、額に汗して一生懸命働くエリックを笑う資格などないわ!」


「な! 何ぃっ!」


 俺が改めて叱り飛ばすと、ゴヴァンは「キッ」と睨み付けて来る。

 だが、その眼差しに会った時ほどの力はなかった。


 ここはビシッと容赦なくが、俺のモットー。

 鉄は熱いうちに打て……だ!

 

「たわけっ! この愚か者め! まだ分らぬのか? 日々遊び暮らすお前を食わせる為に、エリックは俺の命令、すなわち公務で仕方なく、このような格好をしていたのだ」


「むう……」


 自分の為に兄が恥を忍んで騎士らしからぬ恰好をしていた。

 真実を知ったゴヴァンは言葉を発する事が出来ず、口籠る。


「不出来な弟の将来を心配する、優しい兄の気持ちを理解しようともしないで、大笑いするとは、救いようのない大馬鹿な愚か者よ、お前はな!」


「ぐ…………」


「とはいえ!」


「…………」


「ろくに挨拶もしないお前の態度で分かる。この俺が歯がゆかったのだろう? 大嫌いなのだろう?」


「……そ、そうだっ!」


 やはり、アーサー、つまり俺が嫌い、なのだ。

 

「覇気が全く感じられず、なよなよした、王国騎士らしくない俺みたいな者でも……第一王子に生まれたから世襲が許される。そんな理不尽さと不満を感じていたのだろう? 違うか?」


「そ、そ、そうだっ! その通りだっ!! 俺は情けないあんたなどに仕えたくないわっ!」


「ほう、俺が情けないか?」


「ああ、そうだ! マイルズ兄弟はふたり居る。軟弱な主君にお似合いの草食兄貴だけ仕えれば充分、俺はあんたが主君など真っ平ごめんなんだっ!」


「ほう! そこまで言うか? ならば決着をつけよう……これでな」


 俺はこぶしを突き出した。

 決着は「力づくで!」という意味である。


「ア、アーサー様!」


 双方の安否を心配したエリックが叫ぶが、血気にはやるヴァンは完全に『やる気』となっていた。

 「戦うのはOK!だ」と大声で叫ぶ。


「おう! 望むところだ、やってやるぜ! 良い機会だ、あんたみたいな反吐が出る草食野郎は、俺がぶち殺してくれる!」


「ふ! また言うたな! 但し、単に戦うのでは面白くない。ゴヴァンよ、お前とは何かを賭けよう」


「あんたが戦いに何かを賭けるぅ? は! 名だたる大会で連戦連勝の俺ゴヴァンとか? 構わないぞ! 楽しみだ!」


「ははは、やる気満々だな」

 

 そう言った俺は何故か胸が躍る。

 ドキドキする。

 身体が熱くなる。

 この時、人間って、生来の博打好きなんだと心底思った。

 

 しかし!

 俺が賭けているのは金品ではない。

 ふと信長が好んだ幸若舞の一節を思い出す。

 超が付く有名な言葉だから、誰もが知っているだろう。

 

 人間五十年、化天のうちを比ぶれば、夢幻の如くなり。

一度生を享け、滅せぬもののあるべきか。

 これを菩提の種と思ひ定めざらんは、口惜しかりき次第ぞ。

 

 そう、俺が賭けているのは己の人生だ。

 たったひとつの命なんだ。

 

 また信長はこの小唄も好んだ。

 死のうは一定、しのび草には何をしよぞ、一定かたりをこすよの。

 

 至極名言だ。

 何度聞いても感動する。

 

 このふたつは奥深い言葉で、いろいろな意味があるだろう。

 だが、敢えて簡単にまとめて言おう。

 この俺の解釈で。

 

 人間なんて、たった50年の短くはかない命なんだと。

 だから死ぬまでにやりたい事を思い切りやる。

 完全燃焼しなければ生まれて来た意味などないと。

 

 うん!

 信長様、あんたやっぱり最高だ。

 よ~し、俺は燃えて来た。

 パワー全開、フルパワー120%だ。


「よし! こうしよう! 俺が負けたらゴヴァン、お前に金貨一万枚を払う!」


「おおおおっ、何ぃ!! き、金貨一万枚だとぉ! うし、この勝負乗った! 楽勝で大儲けだ! 」


「ゴ、ゴヴァン」


「心配するな、兄貴。あんたにも少し分けてやるぜっ!!」


 俺が叱った影響ががまだ心に残っている。

 ゴヴァンの奴、こんな偉そうなセリフを吐きやがった。


 受けるぜ、受ける。

 この俺に勝つつもりか?


 つい俺は喉の奥が見えるほど口を開け、大笑い。


「ははははははは! まだ戦ってもいないのに、もう金を貰うつもりか? だがゴヴァン、もしもお前が負けたなら、俺に絶対服従する忠実な家来になる。どうだ、この条件で?」


「わ、分かった! もしもあんたに負けたら、土下座して謝った上、いさぎよく家来になってやろうじゃねぇか!」


「よし! 男の約束だぞ、二言はないぞ」


「分かった! 男の約束に二言はない!」 


「ふん! 絶対にたがえるなよ?」


「違えない!!」


「相変わらずだな。すぐ熱くなる単純な奴だ。念の為……先に言っておくが勝負は殴り合いではないぞ」


「な? 何? ち、ち、違うのか! 殴り合いのケンかじゃないのか?」


「たわけが! 違う! 腕相撲だ」


「お、おお……腕相撲で……勝負か!」


「うむ! そうだ! もう一度聞こう、やるか?」


「ようし! 逆に手間が省ける! 王子だろうが、心置きなく戦える! 望むところだぁ!」


 俺が改めて勝負の方法を告げると、一瞬戸惑ったゴヴァンであったが……

 「ギラギラ」させた目で、食いつくように俺を見据えたのである。

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何卒宜しくお願い致します。

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