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第28話「やんちゃな慶次をコレクション!②」

 前方から歩いて来るゴヴァンの顔はけわしかった。

 チラ見した兄のエリックは、渋い顔をした。

 そして俺にささやいて来る。


「アーサー様、あいつ今日も機嫌がめちゃくちゃ悪そうです。変に絡まれたら面倒なので、見つからないよう、さりげなく横へ避けましょう」


「成る程、了解だ」


「え? 了解って!? な、何を?」


 エリックが、戸惑い驚くのも無理はない。

 俺はエリックの言葉に反し、「のしのし」歩いて来るゴヴァンに向かって、これまた堂々と真っすぐに歩いて行ったのだから。


 慌てに慌てたエリックだが、「やむを得ない」という感じで、俺の後をこそこそついて来た。


 やがて……

 俺とゴヴァンは正面から対峙した。


 うん、顔には見覚えがある。

 生前のアーサーは、こいつとは数回会っているだろうが、記憶を受け継いだ俺は初対面。

 

 第一印象は……ガタイがでっけぇ!

 もの凄くでかいっ!


 ゴヴァンの実兄エリックは身長185㎝を超えている。

 転生した俺だって180㎝近いっていうのに。

 こいつは2mを楽にオーバー。

 下から見上げるという表現がぴったりなのだ。


 ゴヴァンは立ちふさがった冒険者風の俺を見て、一瞬怪訝な表情となるが……

 すぐに正体を見抜いたようだ。


「ん? あんた……いえ、貴方は」


 すぐ言い直したが、王族の俺をじっと見つめるだけで挨拶もしない。


 その理由を俺は知っている。

 ゴヴァンは俺が……嫌いなのだ。

 というか、繰り返しになるけど生前のアーサーが大嫌いだったのだ。

 主君として認めていない。


 さすがにエリックが、弟の無作法をとがめる。


「おい、ゴヴァン! 失礼だぞ、主君アーサー様にしっかりご挨拶しないか!」


「な? 兄貴?」


 俺の背後に見知った顔があるのを見て、一瞬、ゴヴァンは「ポカン」とした。

 そして、俺と同じく『冒険者ルックの兄』を見て大笑いしたのである。


「あ~~はははははっ!!! 兄貴何だよ、そのうす汚い恰好はぁ! だっせぇぇぇ!!!  王国騎士たる者がなんてみっともねぇ!!! 弟としてすげぇ恥ずかしいぜぇぇぇ!!!」


「く!」


 思い切り嘲笑され、唇を噛み締めるエリック……


 こうなる事は充分予想出来ていた。

 エリックに前振りした通り、俺がやる事はひとつだ。

 有言実行!!!


 どぐわぁっ!

 重く鈍い音がした。


 笑い続けるゴヴァンの腹へ、怒りをこめた俺の拳が深々食い込むと……

 奴は呆気なく気絶してしまったのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 30分後……


 ここは王宮のとある一室である。

 目の前のベッドに、気を失ったゴヴァンが寝かされていた。

 先ほど俺が腹へパンチを食らわせ、あっさり気を失ったゴヴァンを担ぎ、ここまで来たのだ。


 エリックは、俺がゴヴァンを一発でノックアウトしたのを目の当たりにして、驚愕していた。

 更に痩躯の俺が軽々と巨漢のゴヴァンをおんぶし運んだ事にも。


 と、同時に愛する弟の容体が気になるようだ。


「アーサー様……ゴヴァンの奴、大丈夫でしょうか?」


「ノープロブレム! 問題ない! 俺は充分に手加減したし、これくらいで壊れるほどやわじゃないだろう」


「ほ、本当ですか?」


「ふん! ドラゴンが踏んでも壊れないこいつの頑丈さは、兄であるお前が一番よく知っているだろう?」


「た、確かに……そうですが」


「ほら! ゴヴァン様はもうすぐ目を覚ますぞ」


 俺がゴヴァンを指させば、奴の瞼がぴくぴく動いていた。

 誰もがそうだが、目覚める直前の癖である。


 大きく息を吐き、安堵したエリックが思わず呼び掛ける。


「ほ、本当だ! おい、ゴヴァン!」


「う、むむむ……」


 寝起き特有の声で唸ったゴヴァンは、やがてゆっくりと目を開けた。

 起きた瞬間、俺はさっきのお返しとばかり、大いに笑ってやった。


「ははははは! やっと目が覚めたか、このたわけめがぁ!」


 「がばっ!」と起き上がったゴヴァンは自分の置かれた状況が分からない。

 左右を「きょろきょろ」見て、目を丸くしている。


「こ、ここはっ!?」


 うむ!

 質問されたらしっかり答えてやらねばなるまい。

 俺は悪戯っぽく笑ったまま、ゴヴァンへ教えてやる。


「おう! ここは王都の街中ではない! 我が王宮の中じゃ。気絶したお前を俺が運んだ」


「な!? 気絶した俺を? アーサー様が運んだって!?」


「そうだ!」


「あ、兄貴とふたりがかりで……か?」


「違う! お前如きを運ぶなど、この俺ひとりで充分だ」


「へ?」


 そんな事は信じられない!

 驚愕の波動がゴヴァンから感じられる。


 ゴヴァンの心の声も聞こえて来た。

 

 俺は……

 体重130㎏なんだぞ!

 ありえねぇ!

 こんななよなよの虚弱野郎が!?


 そう……『なよなよの虚弱野郎』

 この言葉で分かるだろう。

 

 ゴヴァンが俺を嫌いな理由は……はっきりしている。

 それはまず弱いから。

 それと愚図で、覇気にかけ、大人し過ぎるから。

 

 つまり威厳のある王族らしくなく、勇ましい騎士らしくもなく、生理的に大嫌いって事だ。


 だけど、そんな事を言われたら、俺だってこいつが嫌いだ。


 奴の心をサトリで読んだから分かる。

 こいつは人の好き嫌いが激しく、好きな奴はとことん好き、嫌いな奴は大嫌い。

 武骨でデリカシーがない。

 冷静さを失い、すぐ情に流される。

 きまぐれで、飽きっぽい。


 俺が冷ややかな目で見ていたら、ゴヴァンの奴、慌てて記憶を手繰たぐり始めた。


「だが……どうして……あ!」


 すぐ小さく叫んだのは、記憶がはっきり甦ったのだろう。

 油断していたとはいえ、俺にあっさりノックアウトされた事を思い出したらしい。


「ば、ば、馬鹿なっ!」


「ははははは! 何が馬鹿なじゃ! この俺はな、くそ弱い隙だらけのお前など軽くひねれるわ」


「くう! この俺がくそ弱いだと! ち、畜生ぉ!」


 自信満々のゴヴァンが憤るのも分かる。

 ここ数年、アルカディア王国主催の武術大会で、奴はずっと敵なしで優勝しているからだ。


「ゴヴァンよ、お前はどうして俺に一発くらったのか、分かるか?」


「わ、分からん! 悔しいけど……あんたが言うように俺に隙があるからかよ?」


「たわけが! 違う! 殴った理由の方だ!」


「殴った理由?」


「弟のお前が兄を笑った……エリックをバカにして鼻で笑ったからだ」


「むう! 仕方がねぇじゃねぇか! 兄貴が、き、汚い恰好をしてたから! ちょっと笑っただけだろう?」


「この、くそ大たわけがぁぁ!!!」


「わ!」

「うわ!」


 部屋の空気が「びりびり」と振動するくらい大声で叱った俺の一喝に……

 当のゴヴァンどころか、エリックまでが驚いていたのであった。

東導 号作品、愛読者の皆様!

特報です!


『魔法女子学園の助っ人教師』


『第5巻』の発売が決定致しました!

皆様の多大なる応援のお陰です!

本当に、本当にありがとうございます!

発売日等、詳細は未定です。


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この度『コミカライズ』が決定致しました。

宜しければ、11月12日付けの活動報告をご覧下さいませ。


既刊第1巻~4巻が発売中です。

店頭でぜひ、お手に取ってくだされば嬉しいです。

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皆様の応援が、次の第6巻以降の『続刊』につながります。

何卒宜しくお願い致します。

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