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第26話「口入れ屋藤吉郎への宿題③」

 ネネちゃんの『口撃』でとどめを刺されたエリックは、目を丸くした上、思わずひっくり返りそうになった。

 暫くは、立ち直れそうもないかもしれない。

 

「ははははは! リック! もしもここが敵と戦う戦場なら矢で射抜かれて落馬した所を首を斬られ、お前は即座に討ち死にだな」


 俺はエリックに向かって笑い飛ばすと、トーマスに再び、尋ねてみる。


「ふうむ! お前みたいな猿が最高と言うだけあって、確かにネネは大したものだ。成る程な、人間観察と人たらしが、お前の最大の武器というわけか?」


「へへへ、それだけじゃあありませんぜ! アーロン様、貴方の次に賢い知恵、この青い大空のように広い人脈、そして戦場(いくさば)での度胸も結構ありますよ」


 トーマスが調子に乗って売り込むのを、ネネちゃんもフォローする。


「あら! もしかして貴方を雇ってくれるの? この冒険者さん達(・・・・・・)


「おう! この様子なら俺の腕を高く買ってくれそうだ」 


 もう俺が、自分を雇うと決め付けるトーマス。

 しかし、俺は少し考えてから駄目を出す。


「待て猿、確かに嫁は可愛くて出来る女だが、お前は違う。俺へのおべんちゃらとエリックの人柄を見抜くくらいじゃまだまだ物足らないぞ」


「ええっ!」


 俺がきっぱり言えば、トーマスの奴、ずっこけたのか、のけぞってる。

 それも思い切りオーバーアクションで。

 しかし、そろそろ俺が主導権を取る時だ。

 いつまでも猿に良い顔をさせてはいられない。

 

「……猿よ。いい加減にしろ。お前、俺が本当は誰だか分かっていて、わざと嫁に声を掛けさせたな」


 見抜いた俺が指摘すると、トーマスは悪戯っぽく笑って頭を掻く。


「あはは、アーサー王子、さすがにお見通しでしたかい」


「あらあら、ばれちゃいましたね」


 夫の照れ笑いに、嫁も合わせる。

 お~お、さすがに夫婦、息がぴたりと合っているぞ。


「ははははは、夫婦揃ってこの食わせ者めが! 猿! お前は紹介業を生業なりわいとする口入れ屋のオヤジなのに、自分自身を売り込むのか?」

 

 俺が笑いながら一喝すると、トーマスとネネちゃんは揃って頭をぺこりと下げた。


「はい、アーサー様! 申し訳ありませんでしたっ! だけどネネと話しているのを遠目で見てすぐに分かりましたよ」


「ふん、本当か?」


「やだなぁ、本当ですよ。俺はこのアルカディア領内を良く見回る貴方のお顔は覚えていましたからね。でも所詮、人の噂なんて、あてになりませんねぇ」


「ははっ、俺が超天然の暗愚王子ってか? その通りの男だろう?」


「いいや、違います。貴方はとても器の大きい方だ。ぜひ俺を貴方の家来にしてくださいよ」


「ふん、今度は褒め殺しか?」


「いいえ、本音です! 貴方は間違いなく、何か凄い事をしでかす(ひと)なんだ。ほら天下一の俺の勘がぴ~んと来たんでさ」 


 さすが、あの藤吉郎の物言いだ。

 

 気難しい信長が、常にご機嫌だったのも頷ける。

 俺も、使える人材を見つけたと確信して、もう既に天国状態だから。

 しかしここでトーマスを簡単に雇ったら、逆に見透かされてしまうだろう。


「ふふふ、さっきも言ったが、これ以上おだてても無駄だぞ。本当に仕えたいなら出直して来い。俺の目にかなったら、お前を正式に取り立ててやろう」


 ここで慌てたのは、やはりエリックである。

 ず~っと固まっていたが、トーマスを臣下に取り立てると聞いて焦ったのであろう。


「お、王子! 幾ら何でも乱暴過ぎますよ。貴族の子弟ではなく、出自も不明な卑しい平民を直参の家臣にされるなんて……マッケンジー公爵も絶対に反対されます」


 エリックは、一般的な常識論を持ち出して反対した。

 しかし俺の中では、このままあたりまえに常識的なやり方では、アルカディアは立ち行かないと判断していた。

 

 だって!

 人は石垣、人は城。

 これは信長ではなく武田信玄の言葉である。

 だが有能で、志と野心があれば、身分に拘らず乱暴なまでの人材抜擢を行った信長。

 彼の方針が、金を掛けずに国力を高める方法のひとつなのだ。


「黙れ、エリック。爺は俺が説得する。まあ、現時点では言う事が大きいだけの、はったり猿が合格するかどうかも、分からんじゃあないか」

 

 そう言ってわざと挑発した俺に対して、トーマスはぎらぎらと燃える目で食いついて来た。

 俺がわざとしたと分かっていて演技半分、本気半分で挑発に乗ったのであろう。


「へへへ、王子! 言ってくれますねぇ! こうなったら男の意地ですぜ。俺がはったり野郎か、どうか……貴方に絶対気に入られる土産を持って再度、参上しましょう」


「面白い! だがな、ずっとは待たん。せいぜい1週間だ。1週間待ってお前が現れなければ、猿如き存在すら忘れるだろうよ」


「御意! それだけあれば充分でさぁ! 絶対に貴方を唸らせてみせますよ!」


「ほう! じゃあ、出来なかったらどうする?」


「何でも! 貴方の言う事を聞きますよ、俺は!」


 トーマスはそう言うと、俺は見て不敵に笑ったのである。

東導 号作品、愛読者の皆様!

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皆様の多大なる応援のお陰です!

本当に、本当にありがとうございます!

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何卒宜しくお願い致します。

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