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第2話「俺は歴史オタクの雷同ブタロー」

 現在、俺は『アーサーなんちゃら』っていう、死んだ王子様と対峙している。

 そうそう、自己紹介は勿論、まだ名乗ってもいなかったっけ。

 じゃあ手短かに済ませよう。

 

 今更だけど、初めまして!

 俺は雷同太郎らいどうたろう、17歳。

 少し前まで高校2年生……だった。

 「だった」というのは、さっきも言ったけど、死んでしまったから過去形なんだ。

 

 生前、俺は凄い変人だと思われていたみたい。

 自分では、至って普通の少年のつもりなんだけど……

 不細工だのキモオタだの中二病だの周囲から散々言われていた。

 以上、終わり。

 

 え?

 不細工は想像つくけど、キモオタとか中二病って、今時おおまか過ぎるから、詳しく説明しろって?

 例えば一番好きな趣味を言え?

 

 ……あのさ、手短かにするって言ったよね。

 死んだ俺は、異世界転生の引継ぎ真っ最中なんだぜ。

 

 え、うるさい、かんけーねぇ、教えろ?

 教えなきゃ、これ以上読むのをやめるって?

 

 分かったよ、貴方が読まないと豆腐メンタルの作者がひどく落ち込むから……

 言えば良いんだろ?

 

 じゃあ、今ここに居る経緯いきさつを含めて話すから聞いてくれ。

 ちょっとだけ長くなるけど、勘弁な。

 って言うか、あんたに聞いて貰えると、ホッとするから頼むよ。

 

 だって、俺はこれからどうなるか分からない。

 折角転生したけど、スーパーチートな不死ではない。

 何かあれば、またあっさり死ぬかもしれないし。

 

 そうそう!

 この話を読んでいるあんたが、今後どんな人生を歩むか分からないけど……

 もしも俺と同じように、こうやって転生した時、何かの役に立つかもしれないじゃないか。


 え?

 仕方ない、許す?

 ああ、機嫌を直して話を聞いてくれるんだな、ありがとう!

 

 話を戻すと、不細工と呼ばれるのはしまりのない顔立ちが原因らしい。

 けれど、俺の責任じゃない。

 でっぷりと肥えてぶよぶよした身体もそう。

 甘いものが大好物で太りやすい体質の肉体は勿論、運動神経ゼロの遺伝子を渡した親が悪い。


 まあ、いいや。

 もう一回言うけど、はっきり言って俺は中二病。

 こういう話の主人公で、ファンタジーが大好きなのはお約束さ。

 だけど、オタクなのはそれだけじゃない。

 

 あのさ、話はいきなり変わるけど……

 少し前に女子で歴史大好き、いわゆる『歴女』って流行はやったじゃない?

 そうなんだ、強引な話の持って行き方だけど、ファンタジーと共に俺も歴史が大好きなんだ。

 超歴史オタクの『ノブ太郎』って言われてる……

 それが、同級生や友人からつけられた俺の渾名あだなだった。


 さっきから言っているけど、俺の身体って、無駄にでかい。

 このでっぷり太った、キモイ体型が、渾名あだなに掛けられた意味もある。

 つまり、歴史オタクの『ブタロー』とも言われたのだ。

 

 まあ、仕方がない。

 自分でも、感じる。

 俺の身体はとっても重いし、思うように動かない。

 機敏なんて言葉は縁遠い。

 

 当然、運動も大の苦手。

 口が悪い奴らには『歩く成人病』とかも言われたっけ。

 でもまだ若いせいか、日々の生活にさして支障はないので、そんなに気にはしなかった。

 

 趣味の話に戻すと、俺は歴史の中でも日本史、特に戦国時代が大好き。

 まあ日本の歴史の中では戦国時代と幕末が特に人気があるって聞いた事がある。

 俺は戦国オタクの方。

 そう、この渾名あだなの通り、ノブ……

 織田信長が大好きなのだ。 

 

 はっきり言おう。

 俺は信長教の教祖だ。

 まあ信者は俺ひとりなんだけど。

 教祖兼信者である。

 だって周囲は皆、歴史なんて勉強以外は興味なしって奴等ばかりだったから。


 ちなみに知識の多い、少ないは関係ない。

 俺より信長を研究している学者とか、本を一杯出している作家なんて関係ない。

 少なくとも、俺以上に信長を愛している奴は見当たらないと自負している。


 何、男が好きって、もしかしてお前はBLかだって?

 いやいや違うよ。

 同性として信長を、超が付くほどリスペクトしているのさ。

 

 何故だって?

 いやいや、文句なしに、信長は素晴らしいじゃない!

 誰が何と言おうと、どうあっても素晴らしいの!

  

 だって!

 信長が生きていれば、今の日本は確実に変わっていたよ。

 『しわ猿』秀吉がやった無駄な戦争とか、『古だぬき』家康がやったひきこもりの鎖国なんかふざけるなって、俺は思い出す度にいきどおる。

 

 当然ながら、俺が一番大嫌いなのは裏切者、明智光秀。

 理由がどうであろうと、西洋の地獄なら、裏切りは一番の重罪だ。

 その証拠に、地獄の一番奥底で、キリストを裏切ったユダはぐちゃぐちゃかみ砕かれてる。

 同じくシーザーを裏切ったブルータスと一緒に、大魔王ルシファーから思い切りね。

 え?

 信長オタクなのに、ルシファーを語るのかって?

 誰もが知る中二病知識だよ、これ。

 

 まあ百歩譲って、光秀が信長の事を大嫌いなら……

 他の武将みたいに仕事を放棄して、出奔しゅっぽんでもなんでもすれば良い。

 それを、よりによって偉大な主君を殺しやがって!

 あいつの事は、『東洋のユダ』って呼んでやる。


 まあ因果応報。

 結局、奴の政権奪取は失敗しました。

 最後は、自分の家族と家臣も巻き添えにして死んだ……

 

 何やかんや言って、焦ってあちこちへ声をかけまくったが、人徳と未来へのビジョンがなかった。

 室町の伝統という、古すぎる体質にしがみついていた。

 時代の先を見誤った。

 信長という革新的な人間の価値を見抜けなかった。

 だから、親友の細川を含め、あっさり見捨てられたんだ……と思う。

 

 光秀云々に関しては、信長の考えが許せなかったとか、領地を追われたとか、長宗我部家との兼ね合いで反逆するしか手がなかったとか、いろいろ諸説あって反論されるかもしれない。

 

 最終的には家康の参謀、天海になったとか……

 それはそれで夢がありそうな話だけど、ここではとりあえず聞きません。

 まあ、光秀なんて、この際どうでも良いじゃない。

 

 それより信長だよ。

 彼が夢見た国は壮大だ。

 西洋の鎧をバッチリ着こなした上、日本人で最初に地球が丸いって認識したとか、当時の世界情勢を理解したとか、もしも信長が生きていたら、誇れる日本って奴が見える。

 絶対にそう思う。


 まあ、実のところどこまでが真実かは分からない。

 俺達が生きる後世に伝えられているのは、所詮伝承であるから。

 秀吉や家康との絡みで、言動が大きく誇張されたり、逆に貶められたりした事も否めない。

 だが、いろいろ考えるのは面倒なので、とりあえず誰もが知る信長像を俺は信じる。


 いわゆる巷の信長像ってこうだろう……

 戦国時代でも、抜きんでたイケメン。

 イケメンなのは、妹のお市様と並んで、『美形兄妹』ってたたえられた事が証拠だ。 

 

 生き方は太く短く美しく、そして散り方は「ぱあっ」と潔く……

 新しいものが大好きで好奇心旺盛、考え方も革新的でリーダーシップに優れて、判断も大胆。

 超短気な上に、普段の態度は凄く尊大らしいけど、相手の身分などで差別せず、ざっくばらんなのは好ましい。

 

 ねぇねぇ、知ってる?

 秀吉の奥さん『ねね』が夫の浮気等で悩んだ際の信長宛の手紙をさ。

 凄いよ!

 ねねさんを褒める凄く優しい文面だよ。

 

 機会があったら、その手紙をチェックしてよ。

 絶対、貴方の信長への見方が変わるからさ。

 

 体型はといえば、中肉中背。

 やせ型って言われるけど、多分細身のマッチョで、運動神経も抜群。

 だって特技は武道、乗馬、水泳、射撃じゃない。

 もしも現代で、様々なスポーツをやってもそつなくこなす、否、おそらく万能だろう。


 すっげぇよ。

 信長は最高だよ。

 変な意味じゃなく、男が男に惚れるって奴だ。

 最後に不用心過ぎて、呆気なく殺されたというお人よしさも素敵だな。

 

 だけど……

 俺自身は信長とは違い、真逆な奴だ。

 駄目で、さえない人間なんだ。

 

 自分でも、分かっている。

 革新的な信長が超大好きな癖に、新しい事に対して臆病だもの。

 その上、とんでもなく頑固と来た。

 

 つまり冒険をせず、出来るだけ平穏無事に長生きしたいだけの人間。

 小心で付和雷同の苗字どおりの八方美人、好奇心は人並みにあるが、基本的に引っ込み思案なんだ。 

 

 体格? 

 容姿?

 

 ええっと……

 さっきも言ったけれど、さえない身体と顔なんだ。

 背丈は170㎝ちょいと、そこそこあるが、運動神経は下の下、つまり音痴に近い。

 加えてこの体型だし、信長が得意な乗馬なんてとんでもなかった。

 と、いうか体重が100㎏を楽に超えていたから……

 サラブレッドとか、並みの馬ではぶっ潰れる。

 馬なんか乗ったら、動物愛護法違反で即検挙?さ。

 

 顔もイケメンとは言い難い。

 女子からしょっちゅう気持ち悪いって言われるから……

 きっと酷いブサなんだろう。

 

 そんな俺の、唯一の楽しみは想像……否、妄想なんだ。

 自分が妄想した世界では、イケメンでスリムなカッコいい戦国武将になれるから。

 最高の妄想は、信長になって国造りする事。

 だから、あの某有名シュミレーションゲームは大好きだ。

 ゲームやって信長になりきるのが、一番楽しい。

 

 まあ最初に言った通り、信長だけじゃあない。

 西洋風ファンタジーやラノベも大好きなんだけどね。

 だから戦国最強武将の妄想に飽きると、俺ツエー勇者になって冒険するのもウキウキする。


 自分の妄想の中でなら、可愛い女の子にはエッチし放題。

 皆が俺を頼り、馬鹿にせず称え、尊敬する。


 だが、そんな事、所詮はつまらない妄想。

 目を開ければ、ぱっと消え、実際には厳しい現実が待っている。


 そうだよ、全てが虚しい。 

 現実はつまらない。

  

 そして俺の親はといえば良い意味で放任、というか完璧に無関心。

 もう絶望。

 やっぱ俺の人生は完璧に詰んでる……

 ず~っと、そう思っていたのであった。

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