表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/63

第19話「デレ嫁、デレ夫①」

 オーギュスタとのアームレスリング勝負が終わって3時間後……

 ここは、俺の寝室である。


 あの後、イシュタルの居間で食事をしてから、申し入れがあった。

 

 それが何と!

 イシュタルから俺へ……

 「ふたりきりで、一緒に寝たい……」って、誰にも聞こえないよう、「そっ」とささやいて来たのだ。

 

 多分俺が、「侍女のオーギュスタを嫁にする」と言った事が、焼き餅みたいに心へ残っていたに違いない。


 そして、俺とイシュタルはしっかり抱き合った後……結ばれた。

 心と身体、あらゆる意味で、夫婦になったのだ。

 

 ああ、イシュタルを、チョロインって言わないでくれ。

 ここは西洋風戦国の世界。

 最初に政略結婚っていう下地があった。


 さてさて、それにしてもエッチなんて俺は未経験。

 イシュタルも同じらしい。

 お互い全く初めて……だったので、中々上手く行かなかったが……

 

 試行錯誤の末、 何とか、ぎこちない愛の行為が終わり……

 ふたりとも、一糸もまとわずに仰向けに寝転がり、手だけつないでいる。


「不思議なものですね……」


 「ぽつり」とイシュタルが呟いた。

 当然ながら、俺も同意。

 というか、キモイ男、ブタローである俺の場合、結婚出来た事自体が奇跡なのである。


「ああ、そうだな」


「少し前までは何の縁もゆかりもなかった女と男が、こんなにも近しく感じられるなんて……」


 ああ、そういう事か。

 確かに、それも同意だ。

 

 俺だって、こんな不思議な感覚を味わった事はない。

 エッチどころか、女子と付き合った事もなかったブタローには、大自然の驚異?以外の何物でもない。


「アーサー様」


 でも……

 俺の名を呼ぶイシュタルを、「そっ」と抱けば、実感する。

 柔らかく温かい、すべすべした肌の感触があるから。

 やはり、俺は結婚したんだと。

 

 え?

 爆発しろ?

 

 ああ、何とでも言え。

 リア充で、爆発でも何でもしてやるぜ。

 俺の胸の中で甘える可憐な嫁が、とても愛しくなって来ているから。


「うん! 俺もだ。イシュタル、お前が自分の一部のような気がするな」


「うふふ、そう仰って頂けると嬉しいです。夫婦になるという事はこういうものなのでしょう」


「だな。でも王族同士の結婚は普通とは違う」


 ふと思った事を口にした俺。

 イシュタルが言葉尻を捉えて聞いて来る。


「普通とは違う?」


「先ほどイシュタル、お前が言った通りさ。見ず知らずの者同士が国の都合、親の都合、兄弟の都合でいきなり結ばれる」


「成る程。私達の場合は完全に政略結婚ですよね? では普通とは、一体どのような結婚なのでしょう?」


 王族貴族と、一般庶民の結婚の違い……か。

 俺は思うままに教えてやる。


「うん、最初の見ず知らずは変わらない。だが会ってこのように、いきなり結婚する事はほぼない。徐々に気持ちを確かめ合うのだ」


「徐々に気持ちを?」


「ああ、それで果実が少しずつ熟すように気持ちを高め、やがて最高の時期が来たら……結婚してくれと、どちらかが申し込む。まあ男の方からが多いかもしれんがな」


「結婚してくれ……それが、本来のプロポーズというものなのですね」


「ああ、だから俺とお前がもしも平民同士だったら、まだ挨拶程度なのは間違いない」


「挨拶程度……うふふ」


「はは、面白いか?」


「はい! しかし、今や私とアーサー様は他人ではありませぬ。心も身体も結びついた真の夫婦でありますもの」


「おいおい、身体はともかく心はどうだ?」


「心も……完全に参りましたから。面白い最高のプロポーズもして頂きましたし」


 おいおいおい……

 改めて思うけど、3時間前には、俺に会おうともしなかったこの子が、ここまで言う?

 完全にデレって言うんだな。

 

 前世のブタローは女子に、全く縁がなかった。

 彼女達の習性に関しては、全て初体験。

 だから、凄く新鮮だ。


 ならば俺も、どう答えるか、分かっていながら聞いてやる。


「俺に参ったのか?」


「はい! アーサー様にしてやられました」


 やはり、予想通りの答えだ。

 ならば、こう切り返してやる。


「してやられたのは、お前だけじゃない、オーギュスタも。いや、お前のオヤジ殿もそうだ」


「私の父が……ですか?」


「そうだ! どうせ、アーサーのようなひ弱な男は喰い殺してやれとオヤジ殿に言われ、嫁いで来たのだろう?」


 ああ、目に浮かぶ。

 イシュタルの嫁入りが決まった時……

 彼女の父アヴァロン魔法王国国王アルベール・サン・ジェルマンは、愛しい娘へ厳命しただろう。

 

 もし隙があれば、いつでもアーサーを刺して命を奪って来いと。

 まあ、イシュタルは魔法使いだから、魔法で殺せと言ったかも。

 故事で伝えられる、短刀を帰蝶へ託した、あの斎藤道三のように。


 但し俺を殺したら、イシュタルの命もない。

 いくら高名な魔法使いでも多勢に無勢。

 王子を殺した刺客は、容赦なく無残に殺されるだろうから。

 父王から見て、イシュタルは……所詮捨て駒なのだ。


「……はい」


 案の定、イシュタルは静かな口調で肯定した。

 故国の為に、死んで来いと言われた事を。

 俺は微笑んで言葉を続ける。


「まあ……オヤジ殿にどう命じられて嫁いで来たのか、大方想像は付く。イシュタルよ、お前ひとりでアルカディアが盗れるのなら安い物だとな」


「…………」


「ははははは、やはり図星か? しかし本当は違うぞ」



「え?」


 俺に違うと言われ、意外だったに違いない。

 イシュタルは驚いて、大きな漆黒の瞳を真ん丸にした。

 真っすぐに俺を見つめる。


「ち、違うのですか?」


「おう! お前のオヤジ殿はな……実は別離の悲しみに耐え、涙を無理やり隠し、愛するお前を送り出した筈だ。……俺はそう思う」


「ア、ア、アーサー様ぁ! あああああっ!!」


 イシュタルは俺の言葉に心を揺さぶられたのだろう。

 大きな声で叫んだ。


 ……王族の男は自国の繁栄存続を第一に考える。

 その為にはなりふり構わない。

 先程エリザベスにも突っ込まれたが、姉妹や娘を『駒』に使うのはその為だ。


 だが、イシュタルは……

 俺の言葉が本当に嬉しかったようである。

 

 無理もない。

 いくら『黒き魔女』と呼ばれても、まだ16歳の多感な女子なのだから。


 チートな身体のお陰で夜目が利く俺には、暗闇の中、イシュタルの涙がはっきり見えたのであった。

東導 号作品、愛読者の皆様!

特報です!


『魔法女子学園の助っ人教師』


『第5巻』の発売が決定致しました!

皆様の多大なる応援のお陰です!

本当に、本当にありがとうございます!

発売日等、詳細は未定です。


◎そして!

この度『コミカライズ』が決定致しました。

宜しければ、11月12日付けの活動報告をご覧下さいませ。


既刊第1巻~4巻が発売中です。

店頭でぜひ、お手に取ってくだされば嬉しいです。

既刊が店頭にない場合は恐縮ですが、書店様にお問合せ下さい。

この機会に4巻まとめ買い、一気読みなどいかがでしょうか。

皆様の応援が、次の第6巻以降の『続刊』につながります。

何卒宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ