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第11話「イノシシ柴田を仕留めろ!」

 俺に殴られた宰相オライリーが、「ごろごろ」と床に転がり……

 その場に居た者達は、「到底信じられない!」という表情で無言であった。


 まあ俺だって、聞いた事がない。

 王様が王宮において、他の部下達の前で王国ナンバーツーの宰相を殴るなんて。

 前代未聞、無茶苦茶である。


 アーサーの母王妃アドリアナも、目を丸くして、更に口をポカンと開けていた。


 だが、暫し経つと……全員がショックから立ち直ったのだろう。

 オライリー麾下の騎士達は勿論、アルカディア王国騎士団団長で騎士達の中心人物と目されるガレス・シードルフ伯爵が、詰め寄って来た。

 当然、王宮でいきなり暴力を振るった俺に対しての責めである。


 傍らに居た、マッケンジー公爵とエリックが俺の盾になろうとする。

 だが、俺は手で制して前に出た。


 シードルフ伯爵の目尻は興奮と怒りの為か吊り上がり、瞳はギラギラしていた。

 言葉にも怒気が籠っている。


「アーサー王子」


 低い、ドスの効いた声で呼びかけたシードルフ。

 しかし、俺は動じない。


「何だ?」


「何だ? ではありません。罪もない、無抵抗の宰相に、いきなり暴力を振るうとは何たる事! いくら主君でもこのシードルフが許しませぬぞ」


 ちなみにシードルフは、アーサーの弟コンラッドの『守り役』でもある。

 つまりコンラッドが織田信行、シードルフが柴田勝家という役回りなのだろう。

 西洋人という外見で顔付きなどは全く違うが、ロキの奴、『信長設定』には凝ってくれたらしい。


 そして、憤るシードルフの心を即座に読めば、やはりオライリーの『悪計』にも一枚噛んでいた。

 当然、この俺、アーサーを亡き者にするという計画だ。

 もう、何をか言わんやである。

 でもやっぱりこいつは柴田勝家、猪突猛進で、脇が甘い。


 さすがに俺は苦笑して、オライリーを顎で指し、逆にシードルフへ問い質す。


「ほう! もう一度申してみよ。こいつには何の罪もないだと?」


「その通り!」


「しれっ」と嘘をつくシードルフを見て、俺は思わず笑ってしまう。


「で、あるか? ははははははははは!!!」


「お、王子! 何が可笑しいのでしょう?」


 部屋中に響き渡る俺の大笑い。

 気色ばむシードルフ。

 

 対して、俺は鼻を鳴らす。


「ふん、……笑止! としか言いようがないな」


「むう……笑止とは!」


「このたわけが! 貴様とオライリーが俺の居ぬ所で何をたくらみ話していたのか、俺が全て知っておると申したらどうだ?」


「え!?……お、王子が、な、な、何を仰っていられるか、皆目……」


 アーサーすなわち俺を謀殺する計画を立てていた癖に……

 とぼけまくるシードルフへ、俺は『最後通告』を行う。


「ほう! 心当たりがないと言うのか?」


「は、あ、ありませぬ!」


「ならばこう言っておこう……俺はな、つまらない嘘が嫌いだ。貴様が吐いた今の言葉が、創世神様に誓って真実というのであれば、土下座して詫びるが……」


「…………」


 ここまで言われたら、いくらシードルフでも「しれっ」とは返せない。

 遂にダンマリとなってしまった。


 黙秘権の行使も困るので、ここで、俺はもうひと押し。


「だが、もし俺の言う通りなら、偽証罪で貴様のバカ息子共々王都の広場にて極刑に処す。反逆者としてな」


「な? 反逆者? 息子も?」


「そうだ! お前の息子の悪行、俺が知らぬとでも思っているのか?」


 俺が敢えて息子の話を持ち出したのも『手』である。

 シードルフの息子は、理由わけあって、彼の死んだ兄の子なのだ。

 そして奥さんも、兄の奥さんだった人。

 だからなのか、ふたりに対しては気を遣い過ぎる傾向があるという。


 それを良い事に息子は市中でやりたい放題。

 伯爵子息である事を盾に、無抵抗の民へ暴力をふるい、若い女性をからかい、商店からは無断で商品を持って行く。

 大が付く迷惑をかけまくりなのだ。


 アーサーによると……

 シードルフは、息子に甘く『悪行』を見逃していたらしい。

 それで揺さぶりを掛けたのだ。


「…………」 


 反論出来ない無言のシードルフを、俺は更に追い詰める。


「おい! 話を戻すぞ、シードルフ! 俺が何故オライリーを殴ったのか、お前ほどの騎士がまるで分からんとはな、この愚か者めが!」


「…………」 


「シードルフ! 良く思い出せ。オライリーの午後の予定を。俺が話がしたいというのを断るほどたくさん予定が入っておるのか?」


「…………」


「そんなもの、調べればすぐ分かる」


「…………」


「俺はな、大事な用があるから時間をくれと、わざわざ頼んだのだ。それを居留守を使うような不忠な真似をしおって……」


「…………」


「それとシードルフ! お前もオライリーもいい加減にしろ! 父親失格だ!」


「は? 父親失格? な、何の事で?」


 やっと声が出たシードルフであるが……もう完全に防戦一方だ。

 俺はそろそろクロージングへ入る。

 オライリー麾下の騎士達も、怯えた顔をしていた。

 俺とシードルフのやりとりを見て、負け犬の如く完全に尾を丸めてしまったのだ。


「たわけが! もう忘れたのか? 先ほど言ったであろう、父親失格とはお前達のバカ息子の事だ!」


「な、何を!」


「オライリーの息子とお前の息子がつるみ、貴族の子弟である事をかさに着て、この王都の市民に乱暴狼藉を働いている事をな」


「あ!」


 やはりシードルフは、俺を舐めていた。

 俺の暗殺計画なんか、知らぬ存ぜぬで、とぼけまくれば良いと考えていたに違いない。

 まさか、息子の行状を盾に切り返すとは、全く予想をしていなかったのだろう。

 完全に虚を衝かれていた。


「何が、あ! じゃ! このたわけが! くそバカ息子をいつまでも放置しおって! 父親として監督不行き届きだ!」


「…………」


「これももう一度言おう。お前とオライリーが俺の居ぬ所で何を話していたのか、相談していたか、全部知っておると……」


「…………」


「お前には心当たりがあろう! だから首謀者のオライリーは許さぬ、それ故殴った。もうこれ以上俺に言わせるな」


 息子の件で散々攻めた後で、本題の悪行を問い質す。

 これはもう、様々な角度から攻めた俺の完勝である。

 突っかかって来たシードルフは、騎士らしくいさぎよく遂に白旗をあげたのだ。


「………ま、参りました! これ以上言い訳出来ませぬ! も、申し訳ありませぬ」


「よし! シードルフ! 俺には完全に降参するな?」


「は! 平にご容赦を!」


「ならば、今回だけは許す! 但し今後は、その脇の甘さ、直せ! あ、息子は勘当とか、勝手に仕置きするなよ。お前共々、再びチャンスを与えてやる」


「は、ははっ!」


「暫し、蟄居せよ。だがすぐに呼ぶ、それまでしっかり息子を諭し教育せよ! 呼んだ時は必ず親子で王宮へ出仕するのだぞ!」


 マッケンジー公爵以上といえる、俺の信長流マシンガントークに、シードルフはひたすら恐れ入っている。

 またこの場に居た陰謀賛同者達も恐れ入っただろう。


「は、はは! あ、ありがたき幸せっ!」


 こうして……

 俺がオライリーを殴打した『事件』は、なんという事もなく、収束してしまったのであった。

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