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第1話「軟弱王子・アーサー・バンドラゴン」

連載再開致しました。

ぜひぜひお楽しみ下さい。

※申し訳ありませんが、大幅修正改稿を行っております。


『お~い! 俺の声が聞こえる人、こんちはぁ!』

 

 すみません、この小説を読んでいる貴方とは初対面なのに!

 凄く軽~い、「こんちはぁ」なんてずうずうしく超能天気な挨拶でごめんな。

 だけど口調とは裏腹にさ、只今俺が置かれている事態はすっごくシビア。

 「ズシ~ン!」と重くて超深刻なんだ。

 

 いきなり話で申し訳ないけど……

 実は俺って……殺された。

 おいおい、引かないで聞いてくれ。

 それもカッコワルイ無様な死に方だったんだ。


 そう、俺はとある事件に巻き込まれた。

 殺人事件の被害者となってしまったのだ。

 

 人質にされた女子高生を救おうとして、凶暴なチンピラへ体当たり。

 だけど結局は助けられず、逆上したチンピラの返り討ちにあい、刺されて死んだ。


 あ~あ……思い出せば何度もため息が出る。

 正義感をかざし、何て馬鹿な無謀な事をしたのかと。


 俺の死は「今時勇気ある珍しい少年だ」って言われたらしいけど。

 世間からはたっぷり同情されたみたいだけど……

 

 誰もかれも所詮は他人事だと思っていたみたい。

 やっぱ人間は、死んだらおしまいだよねぇ。


 でもお終いではなかった。

 転生……つまり『生まれ変わり』ってあったのだ。

 今、流行はやりのラノベみたいにさ。


 まあ死んだ時の事は良く覚えてはいない。

 刺された瞬間、意識をぱっと手放し……

 周囲の全てが消えたから。

 

 よく巷で言われる『無』になったのかと思いきや……

 わけの分からない場所であっさり復活し、再び意識をパパッと手放したのだ。

  

 いわゆる二度の死亡体験をした俺が……

 3度目に目覚め、「ふっ」と気が付いた時……

 ……肉体が無い精神体(アストラル)状態になって、広い大空に居た。

 

 え?

 精神体(アストラル)が分からない?

 うん、じゃあ教えようか。

 

 俺の状態って、魂だけとか……

 そう、『幽霊状態』と言えば、誰にでも分かり易いと思う。


 改めて辺りを見回して……

 

 何だ?

 この夢みたいな世界は!?

 って思ったよ。


 だって!

 大空を飛んでいるんだぜ。

 見渡せば、俺の周囲は素敵なパステルカラー、綺麗なスカイブルー一色なんだもの。

 

 何故にこんな所へ来たの?

 まあ良いか……

 ちぎれ雲ひとつない快晴ってさ、気持ちが思い切り「すかっ」とするじゃない?

 

 結構、感動した!

 現実逃避かもしれないけどさ、死んだ原因となった事件や、その後に経験した辛い事なんか、思わず忘れてた。

 

 頬を「びしびし」叩く風を感じると……実感する。

 これは夢なんか見ているんじゃない。

 間違いなく俺は、大空を飛んでいるんだって!

 

 五感を備える身体がないのに、吹き付ける風を感じるのは凄く不思議だけど……

 この状況に焦ったが、よくよく考えれば、なかなか出来ない貴重な体験だよ。 

 

 なので……折角のチャンスだと思い……

 空を自由に飛び回りたいと思って、手を「バタバタ」動かしてはみる。

 だが、思った方向には行けなかったんだ。

 何か不思議な、得体の知れない強い力が、「ぐいぐい」俺をある方向へと引き寄せているみたい。


 そんなこんなで……

 当初、精神体である俺は成層圏ともいえる雲ひとつない高所を飛んでいたのだが、自分の意思ではなく、徐々に高度が下がって行く。

 

 ふと眼下を見やれば……

 とある森の中へ、真っすぐに向かっている。

  

 だんだん森が迫って来る。

 あれ?

 一頭の小柄な馬が高い木につながれている。

 

 そして木の根元には?

 ああ、男がひとり倒れているのが見て取れる。

 これって……

 もしかして木に登っていて、ズッコケて落ちたりでもしたのだろうか?

 

 まだ凄く距離があるのに、俺にははっきり見える。

 倒れている男の様子が分かった。

 

 男は……かなり若い。

 多分、俺と同じくらいの年齢、少年であろう。

 簡素な仕様ながらも、見た事がない品のある服を着込んでいる。 

 

 これもすぐに分かった事だが……

 少年は既に息をしていなかった。

 可愛そうに、お亡くなりになっていた……

 

 そして、少年の遺体の足元には何と!

 俺と同じ精神体らしき者が、「ちんまり」と座っていた。

 どうやら……『彼』が死んだ少年らしい。

 

 精神体の少年は、空を見上げると大きく手を振った。

 自分の方へ飛んで来る『俺』に、気が付いたようだ。

 やがて俺が地面に降り立つと、うんざりしたような表情で話し掛けて来る。


『おいおい、待ちくたびれたぞ、ようやく来たのか』


 少年は俺の事を、ず~っと待っていたらしい。

 

 彼は俺とは全く人種が違う。

 いわゆる外人である。

 中肉中背、茶髪、細面、鼻は低く、唇は大きくて薄い。

 ダークブラウンの目が細くて少し垂れている。

 どこかの有名な俳優に似ていると俺は思う。

 

 見る限り、いかにも人の好さそうな、優しそうな面影をした少年なのだが……

 どんな奴かも分からない。

 散々待たせた理由で、怒らせたらまずい相手かもしれない。

 勝手が全く分からないので、ここは念の為……低姿勢&敬語で。


 俺は、深く頭を下げる。


『ごめんなさい、お待たせてしてしまいまして! 俺は雷同太郎と申します。それで貴方は?』


『うむ、貴殿が雷同太郎殿か? 話は聞いているだろうが、私がアーサー・バンドラゴンだ』

 

 ん?

 アーサー……バンドラゴン?

 どこかで聞いた事がある名前だけど……

 ええっと、ああそうだ。


 アーサーって……

 あの円卓の騎士とか聖杯で超有名なアーサー王じゃないか。

 でもほんの少し名前が違う。

 確か、あっちはフルネームが……ええっと、アーサー・ペンドラゴンだったよな?

 

 でも!

 ペンドラゴンじゃなくて、この少年はバンドラゴン?

 

 何か……バッタっぽいというか、名前がベタ過ぎる……

 小説や映画に登場するアーサー王は強く逞しく凛々しいと3拍子揃っているから、この少年の雰囲気では、はっきり言って名前負けしている……

 

 だって、目の前に居るのは偉大な英雄というより……

 中肉中背、平凡な外人の少年なんだもの。

 まあ、デブで超ブサな俺よりは、ぜんぜ~ん、ましなレベルだけどね。

 

 俺はこのアーサー少年に対して、自分がここに来た経緯いきさつを簡単に説明する事にした。


『ええっと、貴方と同じ幽霊状態だから分かるかもしれませんが、実は俺って、一旦死んだんです。そうしたら……この世界の自称管理者だっていう、すっげぇ怪しい人から、こちらへ転生するように言われたんですよ』


『自称管理者? 凄く怪しい人? ああ、それはもしや神の事か?』


『神? 一応、そう言ってました』


『ははは、一応か? まあ確かに、神にしては言葉遣いがハイカラで、とても調子の良い方だったな』


 神にしては言葉遣いがハイカラ?

 とても調子の良い?

 

 いや違う。

 あいつはハイカラなんて言葉遣いじゃない。

 ガラが超悪く、口汚い言葉をマシンガンのようにガンガン放っていた。

 

 そう、俺と少年が会ったあいつは、絶対に神じゃない。

 悪魔としか思えない。

 それに凄く横暴、且つ、超いい加減な悪魔なんだって。


 複雑な表情をする俺。

 アーサーは続けて言う。


『うむ……簡単に神からは事情を聞いた。……ようするに太郎殿も死んだらしいな』


『はぁ、何かそうみたいです。ある事件のとばっちりで呆気なく死にましたよ』


『いやいや謙遜するな。その話も聞いている。太郎殿は人質となった女性を救う為、戦った末の立派な死に方だ。いわば騎士らしい名誉の戦死だ』


『う~ん……騎士らしい名誉の戦死ねぇ……あまりピンと来ないけど』


『いや、私なんか本当に情けない。たまには気晴らしにと登っていた木から、誤って落ちた。そのまま死んだ』


『木から落ちて死んだ? それは何と不運な……超が付くアンラッキーですね』


 ビンゴ!!

 やっぱり、俺の勘は当たった。

 この人、いかにも運動神経なさそうだもん。

 でも、同じ運動音痴の俺が言ったら目糞が鼻糞を笑うって事だよ。


 そんな俺に少年は屈託のない笑顔を見せる。


『ははは、慣れない事はするもんじゃないな。だが死んでしまったものは仕方がない。それより話を戻そう』


『は、はい……』


『……太郎殿はこのまま私の身体に魂を移し、転生することになる。引き換えに私はもっと良い条件で、次の異世界へ転生出来るそうだ。神が約束してくれた』


 神が約束?


 あっ、そう。

 もう話がついているのね。

 あいつ、ホント手回しが良い事で……


 だが……

 死んだらもっと良い異世界へ行けるなんて……

 どうせ、書面にした契約書なんかなくて、あいつの口約束でしょ?

 話がうますぎて怪しい事極まりない。

 

 まあ、このアーサーも、俺と同じ状況だったかもしれない。

 「たったひとつしか選択肢がないぞ」とか、あいつに散々脅されたんだろう。

 俺と違って、この人、凄く真面目で素直そうだし……

 つい、「はい!」ってOKしたんだろうな。

 

 そんな事を俺が考えているとは露知らず、アーサーは俺に拝むように手を合わせて来た。


『見た所、太郎殿は私よりずっと恰幅が良くて強そうだし、頭も切れそうだ。我がバンドラゴン家を盛り立ててくれ、どうか頼む』


 は?

 恰幅が良い?

 物は言いようだ。


 このデブな俺のどこが?

 「ぶよっ」とした脂肪の塊の、どこがどう強そうなの?

 「ぼうっ」とした無気力顔の、一体どこが賢そうなの?

 

 って聞きたかったが……

 もしかして彼が見る今の俺の見た目が著しく変わっているとか、または与えられたチートで少しくらい底上げされたんだろうか?


 それにしても、我がバンドラゴン家ねぇ……

 あいつから聞いた話では転生対象が異世界地方領主の息子。

 つまり地味な、下級貴族になる。

 ちょっと話が違うみたいだけれど……まあ良い。

 もう少しアーサーに事情を聞いてみるか。


 という事でさりげなく、笑顔で質問。


『アーサー・バンドラゴンって、すっごくカッコいいお名前ですよね。でもどこかで聞いたような気がしますけど』


『お、おい! 太郎殿、な、何を言っている! 神から教えられていないのか? 聞いてはいないのか?』


『え、ええ……全然、教えて貰ってません』 


 そうだよ!

 あいつ面倒くさいとか言って、説明殆ど無かったじゃん。

 お前は、絶対本番に強いから説明無しでも大丈夫とかさ。

 

 片や、俺が何も知らないと認識し、少年はほんの少し不機嫌になったようだ。

 つまり『引き継ぎ』がしっかり出来ていないって怒りだ。

 でもそれは、俺のせいじゃないって。


『むううう……仕方がない。じゃあ私から改めて太郎殿へ説明しよう』


『す、すんません。宜しく、お、お願いしまっす』


『うむ……我がバンドラゴン家はな、このアルカディア王国を統治する王族……いわゆる王家、私は第一王子だ』


 へ?

 アルカディア王国?

 第一王子?

 このアーサーさんが?


 うっわ~。

 あいつから、聞いていた話と全然違う。

 違い過ぎる!


 おいおい!

 アーサーは、単なる地方領主の息子じゃないだろう!

 第一王子って、次期王様?


 と、言う事は……

 俺の運命が劇的に変わる?

 平凡でブサな単なるいち高校生から、王位第一継承者の高貴なる王子様へ、華麗なる転生!?


 う~ん……嬉しいけど超ヤバイ。

 異世界転生と言ってもいろいろある。

 ラノベでも散々読んだし、王子様への転生っていうのも結構あった気がする。

 

 一見カッコ良いけれど、よくよく考えると……先行きが不安だ。

 ただ本で読むのと、実際に体験するのとでは大違いだろうから。 

 

 ラノベで良く聞く現代知識の応用も役に立たないだろうし……

 これって……もしかして凄く高難度の転生じゃないのか?


 俺は……

 あまりにも劇的な展開に吃驚びっくりして、何も言えなくなってしまったのである。

東導 号作品、愛読者の皆様!

特報です!


『魔法女子学園の助っ人教師』


『第5巻』の発売が決定致しました!

皆様の多大なる応援のお陰です!

本当に、本当にありがとうございます!

発売日等、詳細は未定です。


◎そして!

この度『コミカライズ』が決定致しました。

宜しければ、11月12日付けの活動報告をご覧下さいませ。


既刊第1巻~4巻が発売中です。

店頭でぜひ、お手に取ってくだされば嬉しいです。

既刊が店頭にない場合は恐縮ですが、書店様にお問合せ下さい。

この機会に4巻まとめ買い、一気読みなどいかがでしょうか。

皆様の応援が、次の第6巻以降の『続刊』につながります。

何卒宜しくお願い致します。

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