第3話・悪魔?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・黄色い花畑、見たこともない蝶、ポカポカと暖かい陽気、そして彼岸花・・・・・・
「ッ!」
「ん?起きた?」
「あ、ああ・・・・・・って何でお前が居るんだカス」
「だってあんたが私に黒豚って言うから私があんたをぶっ倒したらこうなったんじゃん」
「ああ、そうだっけ・・・・ってオイコラ!お陰で天国行きそうになっただろが!」
「あ、そう」
「あっそうじゃねえ!てめえ出てけ!」
「嫌だ」
「何でだ」
「何でって・・・・・・私と契約したのあんたじゃん」
「は?」
「だから、あんた私と契約したでしょ?」
「いいや、多分それは勘違いだ」
「いや、した。しかも今日」
「尚更してない。つか契約って何?」
「え?知らないの?」
「しってるわけ無いだろ」
「ほんとに?」
「ほんとだ!!」
「あのねえ、契約って言うのは、呼び出す側が呪文を唱えて、そして呼び出された側に呼び出した側が餌を与えると言う物なの。つまり、あんたは呪文を唱えて私に餌、つまり飯をやったと言うこと」
「ほう、何か古臭いな。てか、してない。餌はあのポテチにしても、呪文など唱えた覚えが全く無い。ほんの欠片もだ」
「したじゃん今日」
「してねえ。したと言い張るなら、いつ何処でどの様な呪文を唱えたか今この場で言え」
「え〜場所とかは分かんないけど、呪文だけなら」
「どんな呪文だ」
「コレステロールアラランショウカク」
何か聞き覚えのあるような文句。よーく考えてみると、どっかで言った覚えがある。うーん、何処だろう。
「おい黒いの。それはもしや、本に書いてたりするか?」
「うんするよ。ほら、本の事知ってるって事は、言ったって事じゃん」
思い出した。蒲焼書店でぶらぶらしてた時、たまたま見付けた本に、その文句が書いてあったのだ。
『コレステロールアラランショウカク?』
俺は首を傾げながら暫くその本を眺めていたが、『コレステロールアラランショウカク』の謎は分からず、『コレステロールアラランショウカク』『コレステロールアラランショウカク』と呟きながら考えていたのだ。佐登さんに声を掛けられたのはその時の事であった。
「あの文句、そう言う意味だったのか・・・・・・何故蒲焼書店などに置いてあったのだ」
「ね?言ってたでしょ?」
「ああ。言ってた」
だが、何故そんなおぞましい売れるはずもない本が置いてあったのか。
「何でそんなもんが蒲焼書店などに置いてあった」
「知らないよ。店長に聞いてよ」
でも佐登さんにそんなしょうもない事を一々聞くのは失礼だし、アホらしい。
「てな訳で出てけ」
「無理」
「無理だろうが何だろうが出ていってもらう」
「だから無理だって。一回呼び出された悪魔は最低1年は帰れないの」
「はぁ?何でそんなもんが決められてんだよ。知るかよ。つか悪魔だぁ?」
「そう、悪魔」
「黙れ。ふざけるな。馬鹿も程々にしとけよ」
「いや、ふざけてないって」
「アホらしい」
俺は可哀想な目でこの黒い生物を見る。
「な、何!?ほんとだよ!」
「ふーん。そうかそうか。とりあえず失せろ」
「だから無理だって!!」
「出てけ、出てけ、さっさと出てけ」
随分前にテレビで騒がれた迷惑おばさんの名台詞のリズムで出てけコール。
「レディ相手に酷い」
「誰がレディだカス。さっさと出てけクロ」
「何クロって。私にもちゃんとした名前が有るの!」
「知るか。何だ?黒田黒子か?」
「違う。『アレックス・タイラン』って言うの」
「アレックス・タイランだぁ!?完全に男の名前じゃねえか!」
「又の名を『岸里美里』」
「うわ、普通〜」
「もう2つの名、つまり偽名として使う名は『アルベルト・ゴンザレス』及び『北村三郎』」
「完璧男じゃねえか!!」
「私も好きで名乗ってる訳じゃない!」
「その偽名も?」
「偽名も本名も親が勝手に決めるの!」
「そうなのか。分かったから出てけ」
「だから無理だって」
「知ったことか。出てけ、出てけ、さっさと出てけ、出てけ、出てけ、出てけ出てけ出てけ」
「とりあえず、私はここに住まわせてもらう!」
「断固拒否」
「何で!?こんな可愛い女の子が一緒に住むって言ってんのよ」
「お前いっぺん死ね」
「何で!?何でその結論に至るの!?」
「出てかないと言い張る時点で殺意が湧き、自分を可愛いと思ってる時点で殺意が増した。お前いっぺん死ね」
「嫌だ。兎に角ここに住む!」
「黙れ。俺の自由気ままな生活をお前ごときに邪魔されて堪るか」
「でも無理」
「黙れ、黙れ、そして死ねー」
「無理」
「てめえ・・・なめやがって」
「何よー。別に私も好きで来たんじゃないんだからね。あんたが呼び出したから来ただけ」
段々とヒートアップする口論。
と、そこで運悪く(マジで運悪い)厄介な事が。
『ピーンポーン』
はい誰か来たよ。僕出たくないアルネ。多分木佐貫アルネ。それか近江アルネ。
『ピーンポーン』
・・・・・・無視。
『ピーンポーン』
・・・・・・無視。
『ピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーン』
「やかましい!すぐ出るわい!!」
この押し方、多分木佐貫でも近江でも無い。多分あいつだ。アイツモット厄介ナ奴アルネ。
『ピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーン』
「やかましい!すぐ出るわい!!」
『ピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーン』
「やかましい!すぐ出るわい!!お前なんべん押しゃ気が済む!」
俺は渋々ドアを開ける。そして後悔した。何故なら、今俺んちにアホが居て、アホが馬鹿言ってるからだ。
「何アルネキッタラーンスライドーン」
「何だよそれ」
「汚イ滑リマクリノアホアルネ」
「お前何人だよ」
「お前こそ何人?」
「俺は日本人だ」
「ふーん。てか誰?」
「オイコラ。忘れるな」
「すまんなあ広池。お前の名前思い出せなくて」
「今思いっ切り言ってたじゃん」
「は?何の事だ広池」
「やっぱり覚えてんじゃん」
「何?お前の名前は広池泰文ではなくオボエテン・ジャンだったのか?」
「広池泰文じゃボケ」
「で、どうした?」
「あのさぁ、今日さぁ、親と喧嘩してさぁ、まあ俺の私生活の事なんだけどさぁ」
「さぁさぁ煩い」
「だから、今日ここに」
「無理」
「何!?俺まだ何も言っとらんだろが!」
「泊めん。誰が何と言おうと泊めん」
「そこを何とかさぁ」
そう言いながら広池は勝手に上がって来た。
「オイコラ、上がるな。潰すぞ」
「良いじゃん。ん?この娘誰?」
「こっちが聞きたい」
こいつはこう言う厚かましい奴だ。しかも恋愛話大好き、人の不幸大好き、噂大好き、どことなく面白そうな事大好きの奴だ。
「結構可愛い娘じゃん。何?彼女か?」
「「違う」」
「なら誰?」
「知らん。勝手に上がって来た奴だ。どっかの友人とよく似た厚かましい奴だ」
「その友人って?」
「言ワナクテモ分カルアルネ」
「何故に片言?」
「細かいことに突っ込むな。そんなノミほどのボケに逐一突っ込んでたら生きていけんぞ」
「ならノミほどのボケを言うな」
「それは無理。で、何の用だ」
「だからさっき言っただろ。泊め」
「無理。吐かすな。帰れ」
「親と喧嘩したんだ。仕方ないだろ」
「糞、このガキめが」
「兎に角ここに泊めてくれ」
「仕方ない。一晩だけだ。夜が明けて朝飯食ったら帰れ」
「やったー!!この人仏より優しい!流石親友は違うねぇ!」
「なら私も・・・・・・」
「黙れ。吐かすな。ほざくな。さっさと出てけ」
「やっぱり酷ーい」
「良いじゃん田中。こんな可愛い娘」
「可愛いと言うより可哀想だ。知能に障害がある」
「煩い!」
「こんなカスを一晩でも置いておいたらこっちが腐ってしまう」
「煩い!だいたいあんたが呼び出したからこうなったんでしょうが!」
「知らん。俺はわざとやった訳では無い。だいたい蒲焼書店にあんなゴミ以下の本を置いとくから悪いんだ」
「文句言うならそこの店長に言ってよ」
無理だ。佐登さんにそんな失礼な事聞けるか。
「良いじゃん意地悪〜」
黒い奴、もといアレックス・タイラン(又は岸里美里)は泣きそうな目で(しかも上目遣い)で見てきた。しかし、俺はこんな事されようとも、動揺はするが意見は変わらない。
しかし、幾ら根気の良い俺もここまで粘られると流石に疲れる。ついに俺は折れた。
「仕方ない。お前もここに居ろ。そこまで粘られたらこっちの体力が持たん」
「やったー!!」
「何故喜ぶ。お前は渋々使命でやって来たのでは無いのか?」
「これでキクラ部長に怒られなくて済む」
あ、そう言う事か。悪魔の世界も上下関係あるんだな。
「てか、マジで悪魔?」
「そうだよ」
「証拠は?」
「あの剣」
「あれだけでは確信が持てん。もう1つ証拠を見せろ」
「仕方ないなあ。じゃ、1つだけ」
自称悪魔のアレックス(美里)はいきなり無言になり、目を閉じ、『エッセーエッセー』と呟き、目を開けた。
鎌。はい鎌ですね。剣の次は鎌。さあそしてその鎌を持った自称悪魔、いや本物の悪魔はこちらに向かって来た。
「ハアアッ!」
「ヒャッ!」
攻撃して来たよ。馬鹿だろこいつ。俺は間一髪避けたけど、広池は足に直撃。
「ギャアアアァァァァアアアァー!!!!!!」
ご愁傷様、広池泰文。