第2話・女?
さて、木佐貫等を潰して約5分。
お目当ての本屋『蒲焼書店』に到着。
ちなみに隣はコンビニ(ロー●ン)である。
別にロー●ンでも良いのだが蒲焼書店の方が落ち着くのだ。
蒲焼書店の店長がいい人と言う事もある。
暑い時や暇な時、現実逃避したい時(主にテスト期間中)にはいつもここに来る。結構お世話になっているのだ。隣のコンビニは本屋からの帰りにポテ●チップスやかっ●えびせんなどを買ってったりする。あれは癖になる。美味いのだ。特にポテ●チップスうす塩は美味すぎる。あれを発明した人はベートーベンより凄い人だろう。今日は残念ながら予算の都合で買えんが。
カ●ビー製駄菓子談義に盛り上がっているといつの間にか蒲焼書店の中に。あ〜涼しい。極楽だ。まさに天国。クーラーをいつもガンガンにかけてくれる店長はベートーベンより偉い人だろう。糞親め、カ●ビーとポテト●ップス作った人と蒲焼書店の店長を見習え。
と、そこへ店長が登場。
「お、田中君。また涼みに来たのかい?」
「あ、佐登さん。お陰さまで、熱中症にならなくて済んでますよ」
この人が蒲焼書店店長の佐登権二郎さんだ。垂れ目に皺だらけの顔、丸まった背中、常時笑顔を絶やさず、どっからどう見てもいい人だが、中身もやっぱりいい人なのだ。俺の親とは大違いだ。
「ハハハッ、どうだい。今日は暇だし、中で茶でも飲んでくか?」
「え、良いんですか?」
「ああ。今日暇だし」
やっぱり佐登さんはいい人だ。
「じゃあ、お言葉に甘えて上がらしてもらいます」
こう言うのは遠慮しないのが俺のスタイル。ちなみにここは佐登さんの家でもある。
「ああ、美味い」
てな訳で佐登さんの家で麦茶をご馳走になってる。佐登さんちの麦茶は俺のいつも行くスーパーで買ってるはずなのに何故か俺んちより美味いのだ。
「良い家ですね」
「ハハハッ、前も言ってたね」
「ハハハッ、良いお茶ですね」
「ハハハッ、そうかい。それはそこのスーパーで買って来たんだよ」
「俺も同じスーパーで買ってるけど、とても佐登さんみたいには作れませんよ」
「ハハハッ、たかがスーパーで買って来た麦茶でえらい言われようだ」
「いや、ほんとに良いですね、佐登さんちの麦茶」
「ハハハッ、さ、もう1杯飲みなさい」
「はい、お言葉に甘えて」
てな訳で佐登さんちで鱈腹麦茶をご馳走になった訳だが、まあ美味かった。凄く美味かった。さて、そろそろあの掛け声と行こう。
やう!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
さながら織田信長の末裔並の滑りっぷり。
さて、家に帰ろう。地獄に帰ろう。ああ、クーラーが欲しい。
まあ家に帰った時の事はさておき、まずはここから家までの帰り道が問題である。ああ、暑い。暑いながらも頑張って国道沿いを歩いていると、そこへ友人が。
「おっ、田中じゃねえか!元気か!?」
来たよ。こいつは足利隆晴。昔の武将みたいな名前をしておきながら携帯依存症の現代っ子。鬱陶しい奴だ。木佐貫は冗談なのだが、こいつはマジで鬱陶しい。
「どうした!?どこ行く!?暑いか!?」
「黙れ。貴様の相手をする程暇ではない」
「おいおい冷てえなあ、我が学友よ」
「貴様の様な奴が学友だった覚えは無い」
「おいおい」
「おいおいとは何事だ。大事なら今すぐここから消え去れ」
「はいはい。何でそう田中は俺に冷てえんだろ」
「鬱陶しいからだ。とりあえず失せろ」
「分かった分かった」
足利は東の方に去っていった。
それから歩く事10分。やっと家に到着。途中で木佐貫と近江が落ちてた気がするが気にしない気にしない。
「あ〜暑い。クーラー欲しい〜」
叶わぬ夢を呟きつつ台所へ。俺の家はオンボロアパートの1階の八畳の部屋で、とりあえず狭いし軋むし暑いし良い所があんまり無い。良い所と言えばトイレが部屋に付いてる所(だから狭い)と家賃が安い事だ。ちなみに風呂はアパートの1階の奥に男女別の共同風呂があり、男だらけのむさ苦しく尚かつ狭い風呂で1日の疲れを癒す事になる。俺が今向かっている台所は部屋の西側に位置している。
とりあえず台所到着。俺の部屋の家具にしては比較的綺麗な冷蔵庫を開け、ペットボトルに入った麦茶を取り出し冷蔵庫を閉め、机(食卓兼勉強机用の卓袱台)に向かおうと机の方を向いた時、有り得ないものを見た。
「女?」
同年齢ぐらいの黒い服を着た女の子が倒れている。あれ?さっきこんなの居たっけ?
不審に思いつつも別に起こす気も介抱する気もさらさら無いので、とりあえず放っておく。さあ、念願の麦茶だ。冷えた麦茶だ。コップに注ぎ、飲もうとする。が、肝心な事を思い出した。
「そういや、ポテチが一袋あったっけ」
俺は台所のガスコンロの下の棚の戸を開け、ポテチを取り出す。そして机に向かい、座り、まずは麦茶を1杯。
「あ〜美味い!」
そしてこの神の駄菓子・ポテチを・・・・・・ってありゃ?ポテチが無い。袋ごと無い。跡形もない。
パリッ
・・・・・・・・・
「おっ美味い」
「オイコラそこの黒尽くめ野郎。ポテチ返せ」
「え?何で?」
「何でじゃねえ!それは俺の神聖なるポテトチップスうすしお味じゃ!!」
「別に良いじゃん。ここにお腹が空いて倒れてる可哀想な乙女が居るって言うのに・・・・・・」
「黙れ黒豚型ポテチ泥棒女。つか寝ながら食うな」
「・・・・・・おいそこのおっさん。レディに黒豚とは何事?」
「黙れカス。ポテチ返しやがれ黒豚。そしてここから早急に立ち去れ」
「私に黒豚と言った事、後悔させてあげる」
んー何言ってんのこいつ?まあ良い。こいつがポテチを手放した隙に・・・・・・ってこいつ剣出したよ!?なんか羽生えたよ!?なんか来たよ!?こっち来たよ!?この狭い部屋の中で剣振り回さないで欲しいなあ!?
「わ、わ、剣振り回すなって!」
「覚悟ぉ!」
ご愁傷様です、俺。