第1話・暑い。
やう!
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今のは忘れてくれ。
俺は田中と言う者だ。実は宇宙人だったりしない。実は高校生だ。まだ1年だ。しかもまだ夏だ。つまり高校生になってまだ4ヶ月程度しか経っていない訳だ。うん、そう言う訳だ。
「暑い」
只今、7月21日。夏期休業、つまり夏休みが始まる日だ。暑いのは当たり前だが、やっぱり暑い。
「暑い。暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い」
暑い。憎い。夏が憎い。消えてなくなって欲しい。いや、夏は夏休みが有るので必要だが、気温は秋並が良い。丁度、初秋ぐらい。
「明日は、30度を超える見込みです」
ああ、殺したい。今見てるN●Kの天気予報士を殺したい。今、体の奥底から殺意が沸いてきている。
『氏ね、氏ね、氏ね、氏ね』←心の声
ああ、夏に殺意が。
30分経過。暑い。クーラーは無い。俺は一人暮らし(今年の春勝手に自立)なので収入源は主に(てか1つ)バイト。よってクーラーを買う余裕は微塵も無い。
部屋に居ると暑い上に暇なので外に出る。
ちなみに俺はアパート暮らしだ。まあ高1でマイホームで一人暮らしなど居るわけ無い。居たとしたら馬鹿か狂人か金持ちである。ああ、金が欲しい。金でクーラーを買いたい。糞親め、愛する息子の為にクーラー1台ぐらい買ってやろうとは思わんのか。まあ俺が勝手に家出してそのまま4ヶ月連絡してないので期待はしとらんが。
てな訳で外へ。暑い。やっぱり暑い。そして、友人を見掛ける。鬱陶しいのが1人、そうでないのが1人。
「おっ、田中じゃねえか」
「久し振り〜?」
「おう、近江とウットキ」
「『鬱陶しい木佐貫』を略さないでくれ」
「よく分かったな。鬱陶しい木佐貫君」
「はっ、伊達に影が薄いじゃねえからな」
「やるじゃねえか、ジミットマン木佐貫」
「・・・・・・分かってても地味に傷付くよ近江」
「ヒャヒャヒャッ、すまねえキッサ」
キッサとはこいつ、木佐貫知也のあだ名である。キッサと呼んでいる方が近江直である。ちなみに俺の下の名前は合理的である。田中合理的は酷いだろう親父。つくづく自分の名前が嫌になる。
「で、どこ行くんだ合ぶふっ」
木佐貫の顔面に俺の鉄拳突撃。
「次その名で呼んだら殺す」
「な、別に良いだろう自分の名前なんだし」
「俺は自分の名前と真夏日と口が臭い奴と両親ほど嫌な者は無い」
「そうかよ。まあ良い。それより何処行くんだ」
「本屋かデパートか。とにかく涼める所だ。部屋が暑いのだ」
「そっか、田中んとこはクーラー無かったな」
「ああ、なんと不憫な・・・・・・」
「近江」
「何だ?」
「さっきの台詞、もう一度言ったら病院で一週間入院生活を送らざるを得なくなるようにするぞ」
「ヒャヒャヒャヒャッ、冗談だって。殺意溢れる目で見るの止めろって」
ああ、話が一向に進まん。このままだとずっとここに立ち続けざるを得なくなるため、その場で木佐貫と近江を気絶させて本屋へ向かった。