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ペットがヤンデレシリーズ

逆ハー作ってる妹のせいで死亡フラグがビンビンなので、引きこもることにした。

作者: 白つくし

「そうだ、引きこもろう」


 この状況で、そう思うのは仕方がないことだった。二か月耐えた私は偉いと思う。


「という訳で、引きこもることにしましたっ!クレームは受け付けておりません!家事、その他もろもろは妹に任せます。以上!」


 ビシッと敬礼を決め、唖然としている妹、妹信者共を無視し私は部屋のドアを閉めた。 



事の発端は母の再婚。実の父は女を作って逃げたらしいが、そんなことはどうでもいい話だ。

 小さなアパートで、お母さんは働き詰め。私と妹は、貧しいながらも仲睦ましく……暮らしていなかった。


 妹は、平凡な私と血が繋がってるのかどうか分からないほど美少女だった。妹は、自分の顔を最大限に有効活用する方法を知っている。

 まさに鬼に金棒。


 私は妹にこき使われまくった。


―――――――あれ取って


―――――――あれ買ってきて。もちろん自腹で。


―――――――これちょーだい。え、愛菜の言うこと聞けないの?じゃあ愛菜、周りの「優しい」人たちに言っちゃおうかな。


 といった具合に、逆らったら最後、妹の信者が報復にやってくる。

 妹は「愛菜」という。ちなみに私の名前は「鈴」だが、別に覚えなくてもいい。


 妹はよく周りを、親さえも味方につけ私のものを奪っていく。 お姉ちゃんのものは愛菜のもの。愛菜のものは愛菜のもの。というのがモットーらしい。


 お気に入りのぬいぐるみ、大好物、冷蔵庫に入れておいたプリン、好きになった人、親の愛情。

 かろうじて残ったのは、飼っていたオカメインコのペコたんだ。妹がエサで釣ろうと、媚びようと、ペコたんは籠絡しなかった。

 私の肩にべったりくっついて離れない。

 求愛行動は少し困るけど。「りんちゃん、だいちゅきだいちゅき!」と言ってくるペコたんに対し、本気で結婚できないか悩んでいる。

 ペコたんマジ天使。基本的にぼっちな私は、ペコたんと戯れたりもふもふしている。

 癒されるのだ、これが。


 最近では私は「愛菜ちゃんの引き立て役」としか周囲から見られていない。

 クラスメートからにも「愛菜ちゃんのお姉さん」としか呼ばれていないのだ。ここまで来ると末期だ。くっそう。

 ついに妹は私の名前すらも奪ったのだ。

 お母さんでさえ、ここしばらく私の名前を呼んでくれない。

 妹には、あんなに「愛菜ちゃん、愛菜ちゃん」と言っているくせに。差別、ダメ、絶対。



 それは突然のことだった。

 ある日私に好機が訪れた。神は私を見捨ててはいなかったのだ!そう、母の再婚。


 仕事先の社長に目を付けられ、周囲を固められて、いつの間にか婚姻届にハンコを押していたらしい。


 やったねお母さん、玉の輿だよ。

 抵抗、逃亡しなければ監禁されないよ、きっと!軟禁はされるだろうけど。

 死亡フラグに気を付けてね!


 聞くところによると、兄が二人、弟が一人できるらしい。

 よっしゃ、これで妹の矛先がそっちに向く。

 私はもういびられない!


 私は、再婚相手の社長さんに心から感謝した。私たちは、社長さんの家に住むことになった。うお、豪邸キタコレ!










 今思えば、あんなことを考えていた私はとてつもなくバカだった。

 こんなとこになるくらいなら、お母さんの再婚を消されるのを覚悟で(社長さんに)反対するべきだった。

 それか家出でもすればよかったのだ。


 いや、だってさ!妹に攻略され、妹の信者になり果てた兄弟たちが妹の演技(姉の私が妹を苛めに苛め、妹はそれに長い間耐えていたというもの)にまんまと騙され、私をあからさまに敵視してくるなんて誰が思うだろうか。


 いやいや、長い間耐えていたのは私の方だし。

 ちょ、妹よ、コッチを見てあくどい笑みなんか浮かべるなよこのやろう。


 今まで負っていたストレスがさらに増え、胃痛がだんだん激しくなってくる。胃薬とペコたんは私のマイダーリンだ。



「鈴、いつまでこの家にいるつもりですか?君がいるだけで僕はストレスが溜まって仕方が無い。さっさと出て行ってくれませんかねぇ」



 そのままそっくり返してやるよこのやろう。

 今のは長男のインテリ美形。有名な会社の部長らしく、近々昇進するらしい。

 確か名前は和樹…だったと思う。私はねちねち眼鏡と呼んでいるけどね。

 容姿は肩まで伸びた灰色のさらっさらな髪に、深いブルーの瞳。本当に日本人かよコイツ。

 ちなみに、ねちねち眼鏡はよく妹を監禁したいなどとぶつぶつ言っているのだが、私は何も聞いていない。 

 


「は?僕の愛菜…とかふざけてんのかてめぇ!愛菜は俺のだし。俺たち前世からは赤い糸で結ばれてんだよ。……鈴、お前後で愛菜の仕返しするから覚悟しとけよ。愛菜苛める奴に手加減なんてしねぇから」


 だから苛めてないって。

 女の子に暴力宣言するなんて最低だよねー。


 コレは二男の単細胞。私の一つ上で、有名な族の総長をしているらしい。

 ちなみにこいつもイケメン。染めたのかどうか知らない金髪の髪をタレ伸ばし、カラコンと予想される紅の瞳。初対面の時、コイツの痛さに爆笑しそうになった。

 痛い、痛い。電波だし、バカだし、前世は何とか国の第一王子で、隣国の姫の妹と結ばれていたらしい。 私はコイツに精神病院をお勧めしたい。

 ちなみに名前は単細胞だったと思う。

 ちがくても知らない。

 というかおたくの族何とかしてよー。単細胞が私のこと敵視しているせいか、族からめっちゃ睨まれるんですけど。

 かろうじて「おいてめぇ面貸せや」とはまだ言われてませんけれども!




「愛菜、おねえちゃんは、僕と、遊ぶ」


 この子は三男で弟の、はるかくん。

 この子も妹に攻略されたらしいが、私には害がないので気に入っている。天使の艶リングのある漆黒の髪と瞳で、和風美少年。

 三兄弟で、唯一日本人っぽい。

 喋るのが苦手でたどたどしいことから、私は陰で「無口わんこ」と呼んでいる。妹への懐きようがすごいからだ。べったりと、四六時中くっついている気がする。





「みんな仲良くしようよ!ねっ?私はお姉ちゃんに苛められていたことなんて気にしてないし、お兄ちゃん達は気にしなくていいんだよ?もしお姉ちゃんに手出したら、愛菜許さないんだからっ!」



 言わずともお分かりだろう。妹だ。

 毎度のこと妹は私を庇い、攻略キャラたちの好感度を上げる。


 妹信者たちは、うっとりと妹を見つめ、「なんて寛大なんだ…」と妹を崇める。頬を紅潮させて、だ。

 気持ち悪い。はるかくん以外。

 っていうかてめぇら、血は繋がっていないが今は戸籍上兄妹だぞ、兄妹。

 結婚なんてできませんよー。まぁ、ヤンデレ気質あるし、どうにかしそうだけどね。


 この兄弟には、ツッコミが追い付かない。

 まず瞳や髪の色がおかしいし、兄妹のモラルなど丸無視だ。

 唯一助けとなりそうなお母さんは、ここしばらく姿を見せていない。

 きっと生きてるよ、うん。

 お義父さんも、「仕事で」忙しいらしくなかなか帰ってこない。


 ……実質、私の味方はペコたんしかいない、ということになる。

 ぼっちよりマシだが、ペコたんが人間だったらな~と思うことがしばしば。私は言葉のキャッチボールを誰かとしたいのだ。


 ちなみに私の数少なかった女友達は、私といることによって妹に彼氏を奪われたらしく、私の元を去って行った。


 何故あんな魔王級の妹が、私の妹なのだろう。

 唯一似ているとすれば、私と妹も「面食い」ってところだろうか。



 勝手に盛り上がっている奴らをほっといて、部屋に戻る。ペコたんがいつも通りぴぃーよっと迎えてくれた。ああああ、癒される。


 毎日恒例のグチタイムだ。


「大体さ、掃除も洗濯も食器洗いも食事も全部私がやってんのにいつの間にか全部妹がやったことになってんだよ、酷くないか。ねちねち眼鏡には嫌味を毎日のように言われるし、単細胞の族からは睨まれるし!怖いのよ、外が!」



「ぴぃーよっ、ぴぃー、ぴぃーよっ」



「はるかきゅんには話しかけても無視されるし!君が好きなオムライスは私が作ってるんですよ!しかも昨日妹に私の取っておいたクッキー食べられたし……なんかもう疲れたよ…」



「ぴぃーよっ、ぴ、ぴ、ぴぃー!」



 このままでは、私は妹に殺されるのではないだろうか。ストレスで。

 ヤンデレ兄弟たちからは、抹消させられるのではないのだろうか。

 最近私の死亡フラグはビンビンに立っている。


 こちらを見上げ首をかしげているペコたんは、もう私に「頑張らなくてもいいよ」と言っているようにしか見えない。


――――――――私は強い決心をし、天井を見上げた。







 こうして、ここに至るのであった。

 

 引きこもり生活は、なかなか快適だ。


 ストレスの根源である妹とは会わなくてもいいし。

 ねちねち眼鏡からは嫌味をいわれなくなったし。

 外へ買い物へで、単細胞の率いる族から睨まれることもないし。

 癒しのはるかきゅんからも無視されないし!


 食料は夜こっそり冷蔵庫から拝借し、風呂やトイレ、洗面所、テレビ、エアコン、キッチンまでも部屋についている。


 この部屋で、私は何不自由なく暮らせるのだ。

 豪邸、万歳!

 お金持ち、万歳!

 引きこもり、万歳!


 妹は家事がからきしダメだが、兄妹力を合わせて、どうにかやっているだろう。

 あの三兄弟はヤンデレの気質があるから、本気で敵認定される前に引きこもっといてよかった。

 いやー、美形のヤンデレ兄弟たちに囲まれて、よかったね妹!逆ハーだよ。うわー、嬉しいね!


 私の予想では、長男が「監禁系ヤンデレ」


 次男が「暴力系電波系ドS系ヤンデレ」


 三男が「ストーカー系ヤンデレ」とみている。


 もしかしたら、自分に矛先が向いていたかもしれないのだ。


 妹よ、ありがとう!



 私はペコたんを肩にとめ読書をしながら、この快適な生活に浸った。


 相変わらずペコたんは、「りんちゃん、だいちゅき」と連呼してくれる。


 私はペコたんがいれば何もいらないのだ!



 











 最初ちょくちょく嫌味を言いに来ていた妹が、最近はめっきり来ない。


 どうしたのだろうか。あの三兄弟の誰かとゴールインしたのか、はたまた乙女ゲームでよくある逆ハーエンドでも迎えたのか。

 誰オチしたのか気になるが、関わりたくない。

 生きてることを祈ろう。


 ヤンデレは、三次は惨事なんだよ。二次は普通にイケるけど。


 一生、恋愛はいいと思った。


 相変わらずにペコたんは、ぴよぴよ鳴いている。



「あーあ、ペコたんが人間だったらなぁ」


 ペコたんの擬人化フラグでも立たないだろうか。

 ここまで読んでいただき、ありがとうございました!

 …ペコたんを擬人化させようかどうか悩みました。もし、擬人化させたらジャンルはファンタジーになるのでしょうか?うーん。

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― 新着の感想 ―
[一言] 主人公、よく頑張った。 もう泣きました、ガチで。 ……引きこもり生活、良いですよね!
[良い点] 主人公よく耐えた! [一言] 読ませていただきました。 とても面白かったです!
[一言] 妹さんが死んでくれるとありがたいです。 はい。
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