ガラスの靴を、もういちど・・・
魔法使いは 出会った
光を紡いだような金髪。
穏やかな海を思わせる瞳。
あの頃と変わらぬ 思い出の場所で。
魔法使いは わかった
心が、 身体が
己が、 記憶が
あの人こそが求めていた人だと。
魔法使いは なやんだ
すべてが 変わってしまった己と
すべてが 変わらないままのあの人
どうすれば あの頃に戻れるのだろうか?
魔法使いは さずけた
少女に 美しいドレスを
かぼちゃの馬車を ティアラを
それから、 ----小さなガラスの靴を。
魔法使いは ひそんだ
少女が行く 舞踏会に
王子がいる その場所に
だって、少女を選ぶかどうか不安だったから。
魔法使いは わらった
少女と王子が踊っている姿を見て
海色の 熱い眼差しを見て
……ああ、これが“ハッピーエンド”なのか。
魔法使いは みつめた
寄り添う 幸せな二人を
少女が履いている 小さなガラスの靴を
----前世の己が履いていた、その靴を。