着せ替え人形
着せ替え人形達は、いつも二人で飾られている。
赤いスカートの人形がひとりでに話す
『ソフィーはもう寝てしまったのかしら』
緑の人形はそれに顔を一切動かさずに返答した。
『当り前じゃない。もう十時よ。起きていたら奥様の雷が落ちるわ』
『そうね……』
一瞬の沈黙が流れる。それを破ったのは緑の人形だった
『これが最後の夜だなんて、あの子は知らないほうがいい……』
『どうしようもなかったかしら』
『私たちにできるのは遊んでもらうことだけよ』
赤色の人形は視線をゆっくりと自分のスカートに落とした。
『ずっと一緒だったのに……。捨てられてしまうかもしれないわ』
『結局は自分の心配なのね』
また沈黙が流れる。
『怖くはないの?』
『人形は皆いずれそうなるのよ。起こることを恐れないで』
『あなたとこうしてお話できないのも寂しいわ』
それに緑の人形はもう答えなかった。だが、赤い人形はその沈黙が同意を示すことを知っていた。
緑の人形が呟く。
『あなたが来た時、嬉しかった。ずっと一人だったから』
赤い人形の声が上ずる。
『私もきれいなお人形だと思ったわ。羨ましいくらい』
『最初は全然しゃべらなかったじゃない』
『緊張していたのよ。しゃべることが出来るのも知らなかったし』
緑の人形は少し驚いた声を出す。
『お人形がしゃべれない。なんてことがあるの?』
『そうよ。持ち主に愛されていない人形はしゃべれないの。だから最初は緊張したわ』
『じゃあ、私もソフィーに感謝しなくてはね。それに奥様にも』
緑の人形は遠くを見つめていた。赤の人形は寂しさを紛らわせるように質問を続ける。
『奥様の時はどうだったの? 寂しくはなかった?』
『寂しかったわ。でも嬉しかった。あの時奥様はお友達ができたの。それまでは私と遊んでいてもどこか寂しそうだったから』
赤の人形は目を閉じる。
『ソフィーは大丈夫かしら』
緑の人形は少し微笑む。
『ソフィーには貴女がいるわ』
『それって……』
しかし緑の人形がもう返事をすることは無かった。




