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本物の公爵令嬢  作者: Na20


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7

 

「ふぅ……」



 私は今学園の図書室に来ている。

 何をしているかというと……特に何もしていない。

 ではなぜ図書室に来たのかというと、今日は珍しく王太子殿下が学園に来ていないから。

 いつもなら仕事を押し付けられるのだが、いないのであれば押し付けられることもない。

 けれどそれを知ったのは、昼休みを少し過ぎてから。

 リリアンが丁寧に教えに来てくれなければ、何もせず時間を無駄にするところだった。



『ネスト様は公務があるから、学園に来ていないのよ? ふふっ、婚約者なのにそんなことも知らないの?私だったら恥ずかしくて――』



 このあともリリアンは何か言っていたが、私はそれどころではなかった。

 学園に入学して初めてできた自由時間。

 何をしようかと考えるので頭が一杯だった。

 初めは昼食を食べようかと思ったが、やはりそれよりも休みたい。

 どこか静かな場所をと探し求めてたどり着いたのが、ここというわけだ。


 生徒たちは昼食を食べているからか、ここには誰もいない。



「……」



 それにしても静かだ。

 椅子に座り目を閉じるが、静かすぎてなんだか落ち着かない。

 どうしたものかと悩んだが、せっかくだからと図書室内を歩くことにした。


 屋敷と城の図書室しか知らないが、学園の図書室も負けていない。

 壁一面に本が仕舞われており、その光景は圧巻だ。


 できれば本でも読もうかとも考えたが、いかんせんあまり時間はない。

 そう残念に思っていると、ふと一冊の本が目につく。

 目の前のその本だけが、本棚から飛び出していた。


 どうしてこれだけがと不思議に思ったが、これも何かの縁だと、その本を手に取る。


【ランカの軌跡】


 どうやらランカ帝国の歴史書のようだ。



「……そういえば留学生が来るって話していたわね」



 本を見て思い出したが、近々この学園にランカ帝国からの留学生が来るらしいと、生徒たちが騒いでいた。

 きっと留学生の噂を聞いた生徒が、帝国について調べようとこの本を手に取ったのだろう。

 そして読んだはいいが、最後にきちんと仕舞わなかったせいで、この本だけが飛び出していた。

 それなら辻褄が合う。

 そう一人納得しながら本をパラパラとめくる。



「留学生か……」



 そもそも噂の留学生は、なぜこんな小さな国に留学することに決めたのだろうか。

 ランカ帝国といえば、大陸一強大で豊かな国。

 ここメノス王国から遠く離れているが、その影響力は非常に大きい。

 なぜならメノス王国は、主食となる小麦のほとんどを、ランカ帝国からの輸入に頼っているからだ。


 今のところ両国は友好な関係を築いているが、もしその友好に亀裂が入れば、この国は飢え死にする人で溢れ返る。

 そうなれば国の存亡にも関わってくるだろう。


 だから不思議なのだ。

 圧倒的優位な立場であるランカ帝国の人間が、わざわざメノス王国に留学してくる意味があるのかと。

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