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「……起きないと」
身体はまだ休息を求めているが、これ以上は遅くなってしまう。
そうすれば今日の睡眠時間が削られてしまうことになる。
それだけは避けたいと、重い身体をなんとか起こす。
空気が冷たい。
カーテンのない窓を見ると、やはり外はまだ暗い。
私の一日は、日が昇る前から始まる。
日が昇る前に起きると、手短に身支度を整える。
お仕着せ着て髪を一つに結わく。これで準備完了だ。
準備が終われば急ぎ部屋を出て、まず厨房へと向かう。
厨房では朝食の下ごしらえと皿洗いが私に与えられた仕事だ。
そして厨房での仕事を終えると、次は屋敷の掃除。
床拭きに窓拭き……掃除が一段落する頃には外は完全に明るくなっている。
しかし掃除が終わっても私にはまだ仕事が残っている。
自室に戻ると、机の上に起きた時にはなかった書類の山が置かれている。
これは公爵家の領地経営に関する書類。
これを処理するのも私に与えられた仕事だ。
膨大な量の書類を脇目も振らず片付けていると、屋敷の中が賑やかになっていることに気づく。
きっと公爵一家の朝食の時間なのだろう。
だろうというのは、この公爵一家という言葉に私は存在していないから。
なんとか時間内に書類仕事を終わらせると、急ぎ厨房へ向かい、朝食のパンとスープを貰ってくる。
それを持って部屋へと戻り、一人朝食を食べる。
パンは固くスープも冷たい。
だけどこの時間だけが、長い一日の中で唯一心休まる時間。
しかしその唯一の時間はとても短い。
朝食を食べ終わり、改めて自分の身支度を整える。
今さらだが、私の身支度を手伝ってくれる使用人はいない。
準備自体は孤児院で生活していたのでそれほど問題はない。
問題なのは、わざわざ身支度を整え直してまで行かなければならない場所の方。
使用人のような扱いを受けていようとも、書類上は公爵家の養子。
貴族の子どもは学園に通わなければならないと決められており、それは養子の私も例外ではない。
学園に行ったところでいいことなど何もない。
そんな憂鬱な気持ちになりながら、学園の制服に着替える。
鏡など無いので、髪は手で梳かすだけ。
そういえばこの数年まともに手入れできていないからか、髪色が昔よりくすんだように思う。
昔はもう少しきれいな色だったような気がする。
『レイの髪はキラキラしたお星様みたいだ』
そんな素敵な言葉をくれた友人は、もうどこにもいない。




