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本物の公爵令嬢  作者: Na20


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4

 

「……起きないと」



 身体はまだ休息を求めているが、これ以上は遅くなってしまう。

 そうすれば今日の睡眠時間が削られてしまうことになる。

 それだけは避けたいと、重い身体をなんとか起こす。

 空気が冷たい。


 カーテンのない窓を見ると、やはり外はまだ暗い。

 私の一日は、日が昇る前から始まる。


 日が昇る前に起きると、手短に身支度を整える。

 お仕着せ着て髪を一つに結わく。これで準備完了だ。


 準備が終われば急ぎ部屋を出て、まず厨房へと向かう。

 厨房では朝食の下ごしらえと皿洗いが私に与えられた仕事だ。

 そして厨房での仕事を終えると、次は屋敷の掃除。

 床拭きに窓拭き……掃除が一段落する頃には外は完全に明るくなっている。


 しかし掃除が終わっても私にはまだ仕事が残っている。


 自室に戻ると、机の上に起きた時にはなかった書類の山が置かれている。

 これは公爵家の領地経営に関する書類。

 これを処理するのも私に与えられた仕事だ。


 膨大な量の書類を脇目も振らず片付けていると、屋敷の中が賑やかになっていることに気づく。

 きっと公爵一家の朝食の時間なのだろう。

 だろうというのは、この公爵一家という言葉に私は存在していないから。


 なんとか時間内に書類仕事を終わらせると、急ぎ厨房へ向かい、朝食のパンとスープを貰ってくる。

 それを持って部屋へと戻り、一人朝食を食べる。


 パンは固くスープも冷たい。

 だけどこの時間だけが、長い一日の中で唯一心休まる時間。

 しかしその唯一の時間はとても短い。


 朝食を食べ終わり、改めて自分の身支度を整える。

 今さらだが、私の身支度を手伝ってくれる使用人はいない。

 準備自体は孤児院で生活していたのでそれほど問題はない。

 問題なのは、わざわざ身支度を整え直してまで行かなければならない場所の方。


 使用人のような扱いを受けていようとも、書類上は公爵家の養子。

 貴族の子どもは学園に通わなければならないと決められており、それは養子の私も例外ではない。


 学園に行ったところでいいことなど何もない。


 そんな憂鬱な気持ちになりながら、学園の制服に着替える。

 鏡など無いので、髪は手で梳かすだけ。

 そういえばこの数年まともに手入れできていないからか、髪色が昔よりくすんだように思う。

 昔はもう少しきれいな色だったような気がする。


『レイの髪はキラキラしたお星様みたいだ』


 そんな素敵な言葉をくれた友人は、もうどこにもいない。


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