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本物の公爵令嬢  作者: Na20


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3/11

3

 

「降りろ」



 馬車が停まり御者から降りるよう指示される。

 恐る恐る馬車から降りると、目の前には見たこともないほど大きな建物が。

 こんな大きな建物見たことがない。

 ここが公爵家……

 あまりの大きさに言葉を失ってしまう。



「さっさとついて来い」


「あっ、すみません」



 そう言って連れてこられたのは、屋敷の裏口。

 そこから中へ入ると、メイドが待ち構えていた。



「ここからは私が案内します」


「ああ、あとは頼んだ」



 それからはメイドのあとをついていく。

 その間に何人ものメイドにすれ違ったが、目の前を歩くメイドも含め、皆がきれいなお仕着せを着ている。

 その事実を目の当たりにして、私はなんだか恥ずかしくなった。

 公爵家の養子になるのだからと、一番きれいな服を選んで着てきたはずなのに、私が一番汚い。

 そしてやはりそれは、私の思い違いなどではなかった。



「嘘でしょう?この薄汚れた娘が?」



 案内された部屋に入るや否や告げられた現実。

 恥ずかしくて思わず俯いてしまう。



「はい。孤児院から連れてきた者です」


「……これが本物なの?」



(本物?)



 派手に着飾った女性――ノスタルク公爵夫人の口から聞こえた小さな呟き。

 本物とは一体どういう意味なのだろうか。



「はぁ、仕方ないわ。旦那様がこの娘を養子にすると決めたのだから、最低限の教養は身に付けさせないと」


「えっ!僕はこんなやついらないよ!」


「ねぇ私の召し使いじゃないの?」



 公爵夫人に続き、息子のロバートと娘のリリアンが口を開く。

 その言葉には不快さが滲み出ている。


 ここまできてようやく理解することができた。

 本当の家族?

 そんなものは、私の期待が作り出した幻想にすぎないと。


(どうして愚かにも期待してしまったのだろう)


 養子になれば、孤児の私でも貴族になれるとでも?

 いや、そんな日が一生訪れることはない。

 たとえ書類上は貴族であっても、本当の貴族だと認められることはない。

 孤児はどこまで行っても孤児のまま。


 別に貴族になりたかったわけじゃない。

 ただあの大切な約束を胸に、穏やかに暮らしていければそれでよかったのに。

 けれどもはやその願いが叶うことはないと理解してしまう。


 私はこれから、まったく歓迎されていないこの家で生きていくしかないのだ。


 こうして始まった新たな生活。

 それはひっそりと、そして確実に私の心に影を落としていった。


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