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本物の公爵令嬢  作者: Na20


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2

 

 私の名前はミレイア・ノスタルク。

 ノスタルク公爵家の養子だ。


 元々私は孤児であった。

 シスターの話によると私に両親はおらず、私を孤児院に預けてきたのは、通りすがりの商人だったそう。

 親がどんな人間かすら分からない、卑しい存在……それが私だ。


 それでも孤児院では誰もが平等だった。

 誰かに虐げられることも、暴力を振られることもない。

 贅沢はできないが、それでも日々を懸命に生きていた。


 しかしその生活は、突然終わりを迎えることになる。

 九歳の時、ノスタルク公爵に養子にと望まれたのだ。


 孤児が貴族の養子になる。

 それはまたとない幸運と言えるだろう。

 十六歳の誕生日になったら、孤児院を出ていかなくてはならない。

 一人立ちと言えば聞こえはいいだろう。

 しかし現実は学のない子どもに、まともな仕事などあるわけがなく。

 残飯を食らい、泥水をすする生活が待っているだけ。


 だから悩む必要なんてない。けれど私は悩んだ。

 なぜなら友達との約束があったから。

 少し前に別れた、大切な友達との約束。

 約束が果たされるかどうかは分からない。

 でも指切りをし、約束したのだ。

 だからその日まで、この地を離れたくはなかった。


 しかし現実は、そう甘くはない。

 養子にと望んだのは、貴族の頂点である公爵家。

 たとえ公爵家ほどの家でなくとも、貴族の申し出を孤児なんかが拒否できるわけもない。

 結局私は養子に出されてしまった。


 そしてこの出来事が、長く続く不幸の始まりである。



 ◇



 馬車に乗り、公爵家へと向かう。

 この時の私は馬車に乗るのは人生初めてで、こんな立派な馬車に私なんかが乗っていいのかと、それはそれは戸惑った記憶がある。


 馬車はお金持ちが乗る物。

 そう思っていたのに、そんな馬車に自分が乗っている事実がなんだか落ち着かなかった。


 でも今は知っている。

 立派だと思っていた馬車が、実は公爵家ではゴミ同然に扱われていたということを。


 あの時にこの事実に気づいていれば、自らの立ち位置を正確に理解できただろう。

 しかし当時の私は何も知らなかった。

 それも当然。ただの孤児だったのだから。


 孤児である私が貴族社会で生きていけるのか……。

 そんな不安を抱えつつも、どこかに期待もあった。

 どうして私が選ばれたのかは分からない。

 けれど公爵が、私を養子にと強く望んでくれた。

 もしかしたら、こんな私にも家族ができるのかもしれない。


 しかしそんな愚かな期待は、公爵家にたどり着いてすぐに砕け散ることになる。


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