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昔の夢を見た。
それは少年と少女が約束を交わす夢。
『必ず迎えに行く。約束だ』
『……うん。約束』
二人は互いの小指を絡ませ、未来を約束した。
少年を乗せた馬車は次第に遠く、小さくなっていく。
そして少女は、馬車の姿が見えなくなるまで手を振り続け――
「夢……」
のそりと固いベッドから身体を起こし、窓に目を向ける。外はまだ暗い。
よかった、寝過ごしたわけではないようだ。
ホッとしたのも束の間、そういえばと先ほどの夢を思い出す。
ずいぶんと懐かしい夢を見た。
甘い期待と、苦い現実。
そんな両極端の感情が交差する。
『必ず迎えに行く』
この言葉を信じ、必死に生きてきた八年。
それなのに夢に出てきた少年の顔は、もうはっきりと思い出せない。
私はまもなく十六歳になる。
八年。それは決して短くない時間。
けれど気づけばそれだけの時間が経ってしまったのだ。
分かっている。
彼は私との約束なんてとっくに忘れてしまっていることを。
しかし心のどこかで、期待を捨てきれない自分がいて。
きっとあの夢は神のお告げなのだ。
いい加減現実を受け入れろと。
「……寝よう」
まだ日が昇るまでには時間がある。
それなら少しでも寝ておかないと。
再びベッドに横になる。
しかしどうしてだかなかなか寝付けない。
「……あと少しだけ」
そう呟き、服の胸元を握る。
服の上から握ったそれは、別れ際に彼から貰ったペンダント。
八年間、ずっと肌身離さず付けていた。
だから期待は捨てたとしても、これだけは簡単に捨てられそうにない。
ペンダントを握り、目を閉じる。
そうして再び意識は奥に沈んでいった。




