表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/3

【第3話】俺の知らない敵がいる

「小隊長代理、ロンド! 出撃命令だ!」


号令が飛ぶたびに、腹の底が熱くなる。

たった一戦で俺の立場は変わった。

今や、十人編成の小隊――第五歩兵小隊を率いる、名ばかりとはいえ“指揮官”だ。


「槍兵、前進! 盾兵は右へ展開、馬の突撃を誘え!」


「了解、隊長ッ!」


……やばい。楽しい。

VRゲームと違ってマップもHUDもないけど、地形・陽の傾き・敵の動きを読むのは、ゲームでも何百回とやってきた。


俺は指示を飛ばし、部隊を丘のふもとに誘導した。

この地形、戦術は“グラヴァリ”でさんざんやったパターン――敵が丘の裏から回り込んでくるのも見えてる。


「くるぞ……突撃だ。全員、構えろ!」


ドォォンッ!


砲声とともに敵の騎兵が突っ込んでくる――が、こっちは迎撃の準備万端。

槍が並び、盾が構えられ、騎兵が次々と倒れていく。


「うぉぉぉぉ!! ロンド隊長、マジで全部当たってるッ!」


「落ち着け! ここからだ!」


勝利の流れを感じた瞬間、視界の端に――違和感。


「……なに、あれ」


森の陰から現れたのは、毛皮に身を包み、巨大な戦斧を担いだ異様な集団だった。

背は高く、武装は粗雑だが、動きに迷いがない。

それは――ゲームには存在しなかったユニットだ。


「原住民……か?」


違う。言葉も兵科も異質。

こっちの兵士たちも動揺している。


「隊長、あいつら……人じゃねぇ!」


間違いない。奴らは、この世界独自の“戦力”だ。

つまり、ここから先は――俺の知識が通用しない世界だ。


「全員、後退! 斜面を使って誘導! 隊列を崩すな! これは……ゲームじゃねぇ!」


初めて、心の底から叫んだ。



この世界には、俺の知らない戦場がある。

だが、それでも俺は――


「対応できる。絶対に、勝つ」


この世界で生き残るために。

そして、冴えない人生を“やり直す”ために。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ