【第一話】冴えないおっさん、ログアウトしたら戦場にいた
※この作品は、VR戦争ゲームにハマっていた冴えないおっさんが、異世界の中世戦場に転生し、ゲーム知識で無双していく物語です。
・おっさん転生
・一兵卒スタート
・戦記/戦争描写あり
・主人公最強(知略・戦術寄り)
シリアスと軽さのバランスを取りつつ、スカッと読めるよう心がけています。
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趣味はゲーム。
といっても、スマホゲーや流行りのバトロワじゃない。
俺が愛してやまないのは、中世ヨーロッパ風のVR戦争シミュレーション――《グランド・オブ・ヴァリアント》、通称「グラヴァリ」。
リアルでは冴えない三十代後半のおっさん。
独身、彼女ナシ。社内でも「影が薄い」と評判で、名前を覚えられないこともしばしば。
でも、夜の戦場にログインすれば話は別だった。
俺の名は《ロンド》。トップランカーとして、数万人規模の大規模戦闘を指揮した経験もある。
……ゲームの中だけは、俺は英雄だったんだ。
だが――その夜、すべてが変わった。
雷鳴が轟き、部屋が一瞬白く染まった。
その直後、真っ暗闇。VRゴーグルを外す暇もなく、意識がフェードアウトした。
*
「……こっちに来たぞ! 敵だ、備えろ!」
目を覚ました瞬間、鼓膜が破れそうなほどの怒号が飛び交っていた。
視界に映るのは、土煙と血まみれの戦場。
俺は、くすんだ鎧を着て、槍を握っていた。
そして気づく――これは“グラヴァリ”に似ている。だが、VRじゃない。これはリアルの戦争だ。
しかも……体が軽い。
腹も出てない、腰も痛くない、肌はすべすべ。
若返ってる? ていうか、俺、死んだのか?
……まあいい。考えるのは後だ。今は――
「右だ、丘を取られるぞ!」
俺は叫んだ。ゲームで何百回もやった戦場イベント。地形、部隊配置、敵の動き――すべてが“読める”。
敵騎兵隊の突撃ルートを読み切って、味方の槍兵を配置。
迂回してくる軽装歩兵には、投石部隊を誘導して先制を仕掛ける。
結果――
「ひ、ひとりで敵の騎兵止めやがった……!」
「おいあいつ、動きがプロだぞ……なんなんだ、あの新兵!」
味方が呆れたように言う。
俺は槍をくるりと回して、血の滴る穂先を見下ろした。
「……こんなの、100回以上練習したルートだ。負ける気がしねぇよ」
そう。これは、俺が無数の夜を費やした戦場だ。
冴えないおっさんでも、命を懸ける覚悟があるなら、最強になれる。
そしてこの世界で――
俺の第二の人生が、血と鉄の匂いと共に、始まった。
ここまでお読みいただきありがとうございます!
いわゆる「冴えないおっさん異世界転生」ですが、ゲームの延長線上にある“本物の戦場”というテーマで、少しだけ渋め・でも爽快感のある展開を目指しています。
次回は、初陣を終えた主人公が、軍の中で一目置かれるきっかけとなるエピソードへと進みます。
どうぞよろしくお願いします!