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一.賭けの海に情けはない

「皇后様、どうか早くご決断を!」


 その声には苛立ちが隠されておらず、まるで彼女が後宮の最高権威で、私はただの小さな宮女であるかのようでした。ですが、私が退くわけにはいきません。この場で引いてしまえば、私が皇后である意味がなくなります!


「本宮の決断に、淑妃が口を挟む必要はございません。」


 鋭い視線を送りましたが、彼女はそれを軽く受け流しました。


「それなら、皇后様、大らかに構えてくださいませ。ご自身のものではないものに執着なさらないことです。」

「最後まで結果が出るまでは、それが誰のものになるか分かりません。」

「ふふ、口だけでどこまで頑張れるのか、見物ですわ。」

「ええ、ぜひ見届けてください。」


 私は手を振り上げ、手元の銀貨を左側に置きました。


「私は『大』に賭けます!」

「賭けは締め切りです!」

「いや……やっぱり『小』に!」

「「「「皇后様……」」」」


「決まりましたか? 手を挙げたら変更はできませんよ!」

「はい!」私は歯を食いしばりました。

「これが最後です!」

「はい!」


 さいころを覆う盅を押さえていた徳妃が蓋を持ち上げました。


「『大』です!」


「やった!」「ああ、負けた!」


 私が悔しさに壁を叩いている様子を見て、妃や宮女たちは笑い声を上げました。その笑い声に影響されて、私も思わず一緒に笑ってしまいました。


「どうして本宮はいつも負けるのかしら!」

「それは皇后様の運が尽きたからですよ。」


 驚いて聞き返しました。「尽きたですって? そんなはずありません!」


「だって、皇后になれたではありませんか。それで運を使い果たしたんですよ。」

「それなら、あなたが皇后になります?」私は嬉しそうに顔を輝かせました。

「「「絶対に嫌です!」」」


 最後はみんな笑いながら散っていきました。


 ああ、みんな冷たいのね。


     *


 ここは後宮。その名前の通り、皇帝の妻妾たちが住む場所です。この場所には女性しかおらず、宦官以外の男性は存在しません。そして唯一の男性である皇帝は……ちょっと変わった人です。どうも女性に興味がないようで。


 皇帝が後宮で夜を過ごすことはほとんどなく、新たな女性を迎えることもありません。ある時、外国から美女が献上されたのですが、彼はそれを一目も見ず、手ずから斬り捨ててしまいました。もし彼の側に男性がいなければ、彼が龍陽の癖を持つと疑う者もいたことでしょう。


 その結果、後宮の女性たちはやることがありません。皇帝がいなければ、誰と争うというのでしょう? 最初は誰もが寵愛を得ようとしますが、一ヶ月以内にはみな諦め、各々の趣味を探し始めます。そして、戸部尚書の娘である徳妃は、なんと賭け事に夢中になりました。ただし、賭ける側ではなく、庄家としてですが。


 はい、今も勢いよく盅を振っているのは徳妃です。最初は絵画のような美人で、白磁のように美しい彼女は、賢良淑徳さゆえに徳妃の称号を授けられました。


 一方、賢良淑徳と呼ばれた淑妃は、今や明妃と一緒に競って賭けに熱中しています。少しも賢淑さを感じさせません。彼女たちも名門の娘であるはずなのに、どうしてこんなことになってしまったのでしょう……。


 もしかして、私のせい?


 でも、美人は美人。たとえ争っていても、その姿は絵のように美しいのです。


 そういえば、私も美女を見るのが好きです。普段は妃たちが着替える姿をこっそり覗くのが趣味です。だって、皇帝が見ないなら、私が代わりに見るしかありませんわよね。


     *


 数日後、なんと皇帝が後宮に戻るという知らせが!


 一番喜んだのは徳妃でした。彼女の賭け事は十日に一度しか開けませんが、今回は追加で開くことができるのです。


「さあさあ、賭けは締め切りですよ! 皇帝が新しく入宮した女性の宮殿に何日滞在するか、予想してください!」

「一日!」

「三日!」

「その夜にすぐ退室!」


 毒舌ですが、実際に起きたこともあります。その被害者である文妃は、今月の俸禄をすべて賭けていて、相当な恨みがあるようです。


 そして私は……


「四日!」

「皇后様、自信がおありのようですね?」

「もちろんです。今回入宮したのは西域からの美女です。以前なら皇帝はすぐ斬り捨てていましたが、今回は残したのですから、きっとお気に入りなのでしょう。」

「なるほど、一理ありますね。」

「でも、どんなに気に入られても皇后様には及びませんよ。」


 当然ですわ。私が七日という記録を打ち立てたからこそ、私は皇后なのです。


 さて、結果は?


「皇后様が初勝利、黄金二十両を独り占め!」


 徳妃の張りのある声が大広間に響き渡りました。


 独り勝ちですよ、二十倍ですよ、ふふふ。恨まないでね、徳妃。


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