大学中退後のある一日(前編)
今回の語り手はギン青年です。
主役は榊結衣君なのでご心配なく。
その子との出会いは、たまたま乗った電車の中だった。
暑い夏の日、運良く座れたことに、今日はツイているなと感じていた。
「な? 見えてるだろ? 中学生、いや高校生くらいかな?」
隣の学生二人組から聞こえてきた会話に釣られて、正面の少女に目を向けた。
ショートパンツにノースリーブのシャツ、素足に厚底サンダルという夏の軽装。
「白だよな」
「うん。眠ってて気付いてないみたいだな」
座席に浅く腰掛け、軽く開いた太ももの奥、ショートパンツの隙間から白い布地が見えていた。
普通なら暗くて見えなさそうなものだが、床に反射した光が見事に影を消してくれていた。
電車の振動に合わせて、左右に揺れている少女の身体。
両隣りの客が中年の女性なので安心して眠っているのだろうか。
次駅が近付き、その中年女性達が同時に席を立ち上がると状況が変わった。
どこからか現れた二人の男がポカリと開いた少女の両隣りに座ったからだ。
「うわっ。先を越された」
「あの二人、ヤバくないか」
見るからに感じの悪い格好と、それに似合いの顔をしていた男達。
少女の隣に座ると直ぐに、掌を太ももの下に潜り込ませていた。
「いきなりナマ脚を直に触ってるよ」
「羨ましいけど、俺には無理だなぁ」
電車が駅に到着して停まると、少女の身体が片方の男に寄り掛かった。
少女が目を覚まし、そのとき男から声が上がった。
「痛っ、何するんだ。コイツ」
何が起こったか分からないという表情の少女に詰め寄るもう一人の男。
「おい、謝れよ。ダチが痛いって言ってるだろ」
「ごめんなさい。どこが痛いんでしょうか?」
「俺の手を踏み潰してんだよ。もしかしたら折れてるかもしれないな」
大袈裟に痛がるフリをする男。
「え、そんなことが・・」
「そんなこと? 俺が嘘ついてるとでも言うのか?」
「いえ、そういうことは言ってませんけど・・」
「けど、何だよ。おい、次の駅で降りろ。キッチリと落とし前つけてもらうからな」
両側から少女に密着し、肘や腕を不自然なほど少女の身体に押し付けていた。
明らかに一人は胸を、もう一人はお尻を堪能していた。
抵抗を止めた少女を、挟み込んで二人の男が嬲り続けていた。
周囲の乗客も気付いているようだが、誰も助ける気はなさそうだった。
電車のスピードが落ち、次駅が近付いてきたのが分かった。
「おい、立てよ。一緒に降りるよな。降りるんだろ?」
「・・はい」
少女を挟んでいた二人が立ち上がると、力なく少女も立ち上がった。
「もう、その辺にしておけよ」
さすがに声を出さずにはいられなかった。
気が付くと男達の前に進み出ていた。
電車の中でこんな狼藉を働く奴らが、電車を降りたら次に何をするかは想像がつく。
それでは、あまりに少女が可哀想だ。
「何だよ、お前。俺達に言ってるのか?」
「その子は悪くないだろ。実際、お前達から仕掛けたことだろうが」
「どこにそんな証拠があるんだよ。あるなら見せてみろ」
「証拠な」
俺は振り返ると、隣で少女のパンチラを観ていた学生に声をかけた。
「おい、スマホを出せ。撮ってただろ?」
「え? え?」
急に話を振られ、驚いた表情まま固まっていた。
「盗撮してただろ。今回は見逃してやるから、さっさと動画を出せ」
「は、はい。わかりました」
差し出されたスマホを受け取り、映像を確認した。
男達は席に着くなり、少女の太ももの下に手を入れていた。
確認するのはココだけで良かったが、ついつい先まで見入ってしまった。
しかし俺はどこを観ていたのだろうか。
途中からは観ないようにしていたんだったかな。
男達は肘や腕を使っていただけでなく、しっかりと少女を触りまくっていた。
謝罪させながら抵抗しない少女に付け込み、胸やお尻、太ももを揉みまくっていた。
両脚を目いっぱいに開かせ、恥ずかしい格好を強いたりもしていた。
もう十分だな。
再度、声をかけようとしたタイミングで次駅に到着。
すると男達は素早く電車を降りて行ってしまった。
「あ、待て」
そんな言葉で待つはずはなく、そうしてる間に電車は動き出していた。
まぁこれ以上俺に出来ることはないか。
元の席に戻ろうとする俺に、少女が駆け寄ってきた。
「ありがとうございました」
「いや、御礼を言われるほどのことではないよ」
「いえ、本当にありがとうございました」
少女に御礼を言われながら、背後の学生にスマホを返却。
「ちゃんと動画は消しとけよ」
「え? 見逃してくれるって・・」
「アホか。盗撮したことを見逃してやるだけだ。当たり前だろ」
「はぁ~。あぁ~あ、残念」
「お前なぁ、いい加減にしろ・・」
俺の言葉を遮るように少女が割って入った。
「別に消さなくてもいいですよ」
は? 何を言ってるんだ?
「本当にいいの? やったぁ」
「待て待て、何を言ってるんだ。駄目に決まってるだろ」
「でも彼女が・・」
「彼女が、じゃねぇよ。それからお前も何を言ってるか分かってるのか?」
振り返りながら、学生と少女を交互に説教した。
そのとき、少女から衝撃のセリフが。
「僕、彼女じゃありません。彼、ですから。だから大丈夫ですよ」
は?
「男なの? キミ」
「はい」
どこからどう見ても可愛い少女だった。
「その動画のお陰で助かったので、ほんの御礼です。御礼になるか分かりませんけど」
俺達は男のパンチラを喜んで観てたのか?
「いやもう、お宝にします」
おいおい、相手は男だぞ。
いや、まぁそれはそれで構わないか。
こいつの趣味趣向の問題だしな。
「出来ればお兄さんにも御礼がしたいんですけど」
「気持ちだけ受け取っておくよ」
少女が俺に言い寄ってきたが、丁重にお断りすることにした。