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後編 「異世界転生」と「現実」のバランス

◇「賃上げの音頭」では経済の好循環は望めない



筆者:

 さて前半では、全体の生産性が上がると一部の人だけが給料が上がりその他の人は徐々に切られることで「総給料」が自然と減っていき、そのことが「異世界転生したい」要因なのではないか? ということを紹介しました。


 さらに政府のシステムも「賃上げを促進」しているフリをしながら実は制度としては阻害しています。

 唯一の家計負担軽減策である定額減税も年末の補填など事務負担ばかり増えて不満ばかりです。


 また、「賃上げの音頭」のみの状態ですと現状では


朝日新聞の24年5月23日の

『物価上昇しても賃金にほとんど回らず、大半が企業収益に GDP分析』

と言う記事では、


『「GDPデフレーター」は、消費者物価指数とは違い、原油など輸入コストの上昇分は含まれず、国内に起因する物価の値上がり分のみを算出できる。23年度のデフレーターは前年度比4.1%上昇し、伸び率は比較可能な1981年度以降、最大となった。


 値上がりした分が賃金にどう回ったのかをGDPデフレーターから計算したところ、23年度の上昇分(4.1%)のうち、賃上げ要因は0.3%分にとどまった。割合では1割に満たない。残りには企業収益や固定資産の減少分、間接税が含まれるが、「大半は企業収益と考えられる」(エコノミスト)。実際、24年3月期決算で、上場企業の純利益の総額は3年連続で過去最高となり、値上げが利益を押し上げた企業も多かった。』


 と、値上げ分の1割にも満たない賃上げしか行われていないことが分かっています。

 こうなってくると値上げに賃上げが追い付かない実質賃金低下は現状「必然」とも言える事態なのです。

 

 このことからより良い製品を仮に作った(生産性の向上を行った)としても必ずしも給料に反映されないと言えるのです。

 せいぜい大きく貢献した人にボーナスが出る程度でしょうね。



質問者:

 なるほど、「賃上げの音頭」だけでは好循環が生まれるどころか家計の財布の紐はキツクなりそうですね……。



筆者:

 その上で待ち受けているのは増税と社会保険の負担増加と年金の減額、

 そうした未来が暗い政策ばかりが待ち受けていることは誰もが分かることです。


 未来に不安があれば貯金をするのもまた「必然」であり「投資(NISA)」も海外のS&P500ばかりで国内に全く回っていないと本当にチグハグなことばかりしているのです。



◇「賃上げ減税」は即刻廃止して「賃上げしない増税」を実施せよ



質問者:

 どうしたら賃上げが加速するような状況になるのでしょうか……。



筆者:

 まず現在のところ賃上げをしたら法人減税と言う補助金(賃上げ促進減税)と言う制度が存在するのですが、これが最も狂っていると思います。


 というのも内部留保が増え、それが国内投資に回って好循環と言うのが狙いなのですが

設備投資は80兆円、大企業投資はそのうち14兆円前後とこの2つは10年横ばい(コロナ前の2019年次とほとんど同じか微増)と言う有様です。


 つまり単純に言えば国内で得た利益(値上げ分)――いわゆる内部留保は海外投資に行われているのです。


 このように経団連に所属して企業を優遇して法人減税や補助金を与えまくっても、日本国内へトリクルダウンは全く起きていなかったことを証明していると言えます。


 会社の利益で得たものは経団連の役員とその株をもって配当を貰っていた人だけが「勝った」というのが実情と言えるのです。



質問者:

 しかし、どうしたら生産性を上げたことが賃金に反映されるのでしょうか。



筆者:

 やはり儲かっている会社が給料を上げたら法人減税と言うのはどう見てもおかしいです。


 補助金(賃上げ促進減税)があるから「春闘満額回答」が続いているのだと思います。


 しかし、儲かっている会社で賃上げをするかどうかの成否は本来労働組合の仕事であり、賃上げに関して補助金・税制優遇を与えるというのは問題外だと思います。


 賃上げをしなければ法人増税(実質的な罰)の方が妥当でしょう。

 そもそもベーシックの法人税も下げ過ぎで最低でも3割中盤ぐらいのレベルまで戻すべきです。


 「増税メガネ」をここで発揮しなくてどうするのか? と言いたくなりますね。

 


◇法人増税をしても大丈夫な理由



質問者:

 法人増税をしたらその分消費税を下げる又は廃止、低所得の社会保障の減免という事をいつも筆者さんは主張されていますけど、財源的には大丈夫なんでしょうか?



筆者:

 僕はベーシックの考えとして税金が「財源」とは微塵も考えていませんが、

 敢えて税金を財源という事にして話を進めさせてもらいますね。


 一般的に「消費税が安定財源」「法人税は景気に左右」と言う固定観念で語られていますが、

 

2020年はロックダウンも行われて経済成長は4.6%のマイナスだったのですが、

 コロナ禍で落ち込むとみられていた法人税は、19年比と比べて4375億円増の11兆2346億円と、19年末時点の予想より3兆円以上多かったという現実があるんですね。


 つまり日本国内のGDPや景気の動向と法人税収は関係ないんですね。

というのも、メインの法人納税を行っているグローバル企業は海外で取引をしているために業績と相関関係はそこまでは無いわけです。

 


質問者:

 へぇ……「法人税も景気に左右される」というのもある種の消費減税と法人税を上げさせないための“洗脳”に近いという事ですか……。

 しかし、法人増税したら企業が倒れちゃうってことは無いんでしょうか?



筆者:

 そもそも粉飾をしていない限り、利益が出ているのであれば倒産することは無いです。


 キャッシュフロー上(現預金残高)で利益が出ていてもマイナスになる懸念はあるのですが、逆に「税金で支払うぐらいなら給料を従業員に支払おう」と言うマインドも働きます。

 前半で必要だと僕が申し上げました生産性を上げた際の「社員の頑張りを評価してくれるシステム」に自動的になってくれるという事です。


 つまり、「法人税を上げること」こそが景気の好循環を生む要因にもなるのです。


 ただし、設備投資は長期間にわたって減価償却(費用計上)をするために「支払う事=経費」とがマッチしないので国内の設備投資に関する補助金や無利子・無担保での借り入れと言う制度は必要かもしれませんけどね。

 


質問者:

 確かに現状は人件費をカットすることで役員報酬も増えるという歪な状況ですからね……。



筆者:

 法人増税と言う流れと言うのは徐々に世界でも始まっています。

 法人減税の流れが世界で続いていたのは自国の会社が海外に流出してしまうために競争していたのですが、スーパーでの値下げ競争のように不毛な話であるとようやく気付いたのか、


 アメリカは24年3月の議会で現在15%となっている大企業の法人税の最低税率について21%に引き上げ、

 イギリスも2023年4月1日から19%から25%に引き上げと言う流れが出来ています。

 これはタックスヘイブン(租税回避地)などが存在するために「法人税を下げ合戦」が無意味で不毛だと先進国でも共通認識になりつつあるからです。


 そして、アメリカもイギリスも日本より経済成長していますし、給料も上がっています。

 法人税を上げるイコール良い好循環とは限りませんが、少なくとも大きなマイナスにはなっていないことが明らかに言えると思います。



◇結局のところ“献金者”に忖度する



質問者:

 しかし、筆者さんの情報ぐらいは素晴らしい学歴の政治家や官僚の方は既に熟知されていると思うのですが……。



筆者:

 非常に残念なことに大企業のトップ層が役員報酬を上げるために利益をどうしても出したいわけです。


 結局のところ「外圧」に基づいて法改正されていっている「株主資本主義」の体制が会社役員をおかしくし、おかしくなった会社役員が政治家に献金して日本の政治を歪めている。それをプロパガンダのようにマスコミが良いように流すために国民も気づきにくい――こういう構図が出来上がっているわけです。


 ここに出てきている人たちはみんな「自分の可愛さ」のために日本社会全体を損なっていると言えます。


 本来であれば大企業も法人増税をさせたくないのであれば消費増税を推進するという悪行をするのではなく「真水国債を増やせ」と主張することが国益にかないます。



質問者:

 大企業は「PB黒字化の実現(税制で全ての支出を賄う)」も促進しているから本当に厄介ですよね……。



筆者:

「PB黒字化」を言うのであれば「大企業が身を切る」ことが必須で一般国民が「財政規律」に殺される状況になってしまっているのを本当に理解してもらいたいです。


 まぁ、日本に本籍があるだけで大企業は「グローバルな視点」に立っているので日本国民のことなど最早どうでもいいのかもしれませんけどね。


 現状では日本にいても将来の見通しが立たないことから低賃金と高い公的負担に耐えかねて、若年層を中心に海外移住が増えていくことが容易に予想が付くわけです。


 企業の生産性の向上と言うのももちろん大事ですが、この政府・企業・マスコミが結託して「敢えてやっている」とも言える社会システムの税制や社会基盤を抜本的に変えなければ根本的な日本人の生活改善には至らないでしょう。



質問者:

 その「社会システムの歪み」に少しでも気づく人が増えることが大事という事なんですね……。



筆者:

 「異世界転生作品」を愉しんでメンタルを良好に保つことも大事だと思います。

 しかし、現実世界をどうすればよくなるのか? という事も考えていき、しっかりと問題点について声を上げていくことが重要であると僕は考えますね。


 僕は「現実世界の諸悪」に対しても一矢報いたいなと思ってこうして発信活動をしているという事です。


 という事でここまでご覧いただきありがとうございました。

 今回は「生産性の価値評価」が相対的だから「異世界転生」したいのではないか? という事と、財政規律と言うのなら「賃上げしない企業に法人増税」と言う制度を作ることで景気の好循環を作るべきだという事をお伝えしました。


 いつも皆さんがご覧いただいていることで励みになっています。

 今後もこのような政治・経済、マスコミの問題について個人的な解説をしていきますのでどうぞご覧ください。

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