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ひとつめ。
ずっと暗闇の中にいた。右も左もなく、自分がどこを向いているのかも分からない程の暗闇に。
いつからなのかは思い出せないし、いつまでなのかは分からない。何かを望みこうなったような気もするが、そのころの記憶などすでにない。
自分が何をしたとて何かが変わるものでもないし、何をすることも叶わない。ただ変わりたいと望み、心の中で涙をこぼす。
そんな時間をずっと過ごしていた、ある時のことだった。
ふと、自分の体が動いた気がした。いや、間違いではない。自分は今、確かに身じろぎをした。「自分の体が動かせる。」そう気付いてからは速かった。
手探りで自分の五感の全てを確認し、今の自分に思いを馳せてみた。
結果、暗がりにいるために視覚だけは定かでないが、その他の感覚は正常に働いていることが判明した。体を動かすたびに「自分」というものを取り戻したような心地がし、つい無駄に体を揺らしてしまった。